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文. イ・ヒウォン, イェ・シヨン
写真. ENHYPEN TikTok
「TikTokはZ世代のための新しい検索エンジン」という『ニューヨーク・タイムズ』の表現のように、TikTokは強力なアルゴリズムを基盤として動画共有プラットフォームを越えてソーシャルメディア兼コミュニティの役割を果たすようになった。そしてK-POPは、TikTokの生態系において相当の割合を占めている。『TikTok 2024トレンドレポート』によれば、2023年の#K−POPコンテンツは、前年度比で新規アップロード91%、再生数67%上昇するほどの勢いを見せている。K-POPはどのようにしてTikTokの重要な柱の一つになれたのだろうか。カムバックの広報から各種チャレンジ、Vlogに至るまで、K-POPアーティストたちのTikTok活用法を整理してみよう。

リップシンク型チャレンジ
映像の中のアーティストが曲の歌詞に合わせて「僕のことが好き?」と聞いて「可愛くてごめん」とささやく。リップシンク形式のチャレンジは、映像の中の人物が踊ったり歌ったりするのではなく、あらかじめ準備された音源の上に文字通り「リップシンク」するコンテンツだ。「誰でも簡単に真似できる」リップシンク形式チャレンジの核心は、歌詞に合った実感のある表情演技にある。マティー・B(MattyBRaps)の「Little Bit」音源にリップシンクを乗せる「Little Bitチャレンジ」が最近の代表的なリップシンクチャレンジだ。2024年1月29日現在、TOMORROW X TOGETHERの「Little Bitチャレンジ」が2,500万再生を記録したことをはじめ、ENHYPENは1,520万再生、NCTとRIIZEは980万再生、THE BOYZは450万再生を記録するなど話題を集めた。映像の中のアーティストは“you like me a little bit?(僕のこと、ちょっと好きでしょ?)”という歌詞に合わせて口を動かし、眉毛を持ち上げるなどの表情演技をしながらカメラを凝視する。まるでアーティストがこちらを見つめて話しかけるように、1人称視点の構図と実感のある演技は、ファンを没入させてときめきを経験させる。TikTokから流行が始まり、映像通話サイン会常連のリクエストになった「可愛くてごめんねチャレンジ(HoneyWorksの「可愛くてごめん」音源)」もリップシンク型のチャレンジだ。可愛い表情をして「Chu!可愛くてごめん」という歌詞に合わせて「ごめんね」という手の動き🙏をする形だ。TOMORROW X TOGETHERのSOOBINはチャレンジのハイライト部分にハート💖とウサギ🐰の絵文字が爆発するようなエフェクトをつけ、SOOBIN独自の「可愛くてごめんねチャレンジ」をアップロードした。アーティストの多様な表情演技と共に、同じ曲でもそれぞれのアーティストの表現に応じて違った面白さを与えることができるという点で魅力的なチャレンジだ。


ダンスチャレンジ 
ダンスチャレンジは曲のポイントとなるダンスを短く真似して踊る方式で、2020年ZICOがTikTokにアップした「Any Song」のチャレンジ動画が大きな話題となった後、K-POPアーティストの広報に必須の要素として位置づけられたと言っても過言ではない。ダンスチャレンジはアーティストのダンスをステージではない空間で見られることに加え、一緒に出演するアーティストたちが普段は見られないコンビネーションによってそのアーティストの振り付けに新たな感覚を吹き込むという点でK-POPファンの視線を集中させる。TAEMINが新曲「Guilty」のカムバックで披露した「Guiltyチャレンジ」は、NCT、aespa、RIIZEなど同じ事務所の所属アーティストはもちろん、SEVENTEENのHOSHI、&TEAMのFUMA、ZEROBASEONEのHAN YU JIN、TEMPESTのHyeongseop、BOYNEXTDOORのSUNGHOなど、多くのアーティストがチャレンジに参加して大きな話題を呼んだ。特にBTSのJIMINとアップロードした「Guiltyチャレンジ」は公開されるやいなやJIMINがX(旧Twitter)全世界リアルタイムトレンド1位になったことをはじめ、2024年1月29日現在TikTokで1,670万再生を記録するほどの驚くべき反響を呼び起こした。トップスの中に手を入れてあごを握った後、頭を後ろに反らしながらウェーブする動作で、各アーティストが個性を生かして異なった表現をするのがポイントだ。また、Mnet『STREET WOMAN FIGHTER』は2シーズンにわたって「Hey Mama」や「Smoke」などのチャレンジを展開して話題を集めたが、特に振付師Badaの「Smokeチャレンジ」は高難度の動作で構成され、チャレンジに参加するアーティストが出るたびに視線が集中し、ダンスに長けたK-POPアーティストたちがチャレンジに参加して大きな流行をリードした。K-POPアーティストの曲ではなく、ダンスがテーマになった番組から始まったチャレンジが、K-POPアーティストに自発的な流行を引き出したという点で、ダンスチャレンジのもう一つのあり方だと言える。特にBTS JUNG KOOKの「Smokeチャレンジ」は2024年1月29日現在で8,910万再生と、JUNG KOOKの個人TikTokアカウント(@AbjkMRstY)にアップされた動画の中で再生数1位を占めるほどの話題性を見せた。


ドラマのセリフ活用型チャレンジ
「本当に言いたかったことを言うね……ペク・イジン」tvNドラマ『二十五、二十一』の台詞であり、NCT U「Baggy Jeans」のチャレンジ動画の導入部だ。ドラマのセリフを活用したチャレンジは、曲の歌詞と類似した発音のドラマのセリフを活用して作られる。NCT Uの場合、劇中の登場人物「ペク・イジン」と歌詞にある「Baggy Jeans」の発音の類似性を言葉遊びにして使った。劇中の台詞を披露した後、突然パワフルなダンスに転換する意外な構成は、人々の笑いを誘う。NCTのJAEHYUNとaespaのWINTERが共演したチャレンジは、910万ビューを記録するほどの大きな反響を見せ、動画の序盤にWINTERが腕を組んで劇中の「ナ・ヒド」さながらの真剣な演技を繰り広げ、曲が始まると同時ににっこり笑って見せる自然な演技がポイントだ。ENA『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の台詞を活用したNMIXXの「権謀術数(クォンモスルス)」チャレンジもある。動画の序盤に「クォン・ミヌ弁護士、ロースクール時代のあだ名が何だったか知ってる? 権謀術数、クォン・ミヌ!」を叫んだ後、NMIXXの曲「Soñar(Breaker)」の歌詞“Come a so-soñar”部分のポイントダンスを踊りはじめる。SEVENTEENのSEUNGKWAN、LE SSERAFIMのHONG EUNCHAE、aespaのKARINA、Lee Young Jiなどが参加し、実際のドラマで「クォン・ミヌ弁護士」を演じた俳優のチュ・ジョンヒョクも参加して笑いを誘った。K-POPが人気ドラマの流行に乗り、一般大衆との接点を広げる試みだと言えるだろう。


POV
POVは「Point of View」の略で、一人称視点の撮影手法を意味する。TikTokでは、コンテンツの特定状況の視点または観点を説明するための意味として使われる。1人称視点コンテンツは、ユーザーが直接映像に入り込んだような演出によって没入度を高めている。例えばENHYPENは、アルバム『ORANGE BLOOD』のプロモーションで「POV: 自動車に乗った時の彼氏の3大タイプ」と「POV: デートする時の彼氏の4大タイプ」をアップした。1人称視点で展開する映像が、実際の彼氏との日常をシェアするような感覚だと話題になり、前者のケースでは2024年1月31日現在で1,600万再生を記録した。NewJeansのDANIELLEは携帯電話の1人称視点で進み、画面に飛び散った水滴によってやりたかったことを成し遂げることになるというストーリーのTikTokミーム「Splash water on my phone screen(携帯電話スクリーンに水滴が飛び散った時)」で、自分たちの曲のタイトルのように“Oh My God”が自然と出てくるシチュエーションを演技した。Phoningにコメントを残し、「OMG」の音源にイイねを押し、アルバムを購入する姿はまるでNewJeansのカムバックを200%楽しむ彼女たちのファンダムBunniesのように感じられもする。また、TikTokコリアは「What's Next 2024トレンドレポート」でこのタイプのように顔を出さず1人称視点で文具をデコレーションする1人称POVを代表的なトレンド・シグナルの一つに選定したが、K-POPファンもこのような流行に参加している。「#포카포장(フォトカードデコレーション)」は約5万件、「#포장(デコレーション)」は約3万件のポストが存在するほどの人気を見せている。


K-POPスターたちの日常
「ショートフォームを利用してリアルな日常や考えを記録するのが自然なフェーズになった」。TikTokコリアのチョン・ジェフン運営総括は、2023年のTikTok韓国国内記者会見で2023年の上半期TikTokトレンドを「日常の記録」だと語った。TikTokは人気のダンスチャレンジに挑戦または視聴する動画共有プラットフォームを越え、日常を共有するソーシャルメディア(SNS)環境へ変化した。K-POP公式チャンネルも同様にこの流れに乗って、アーティストの日常をTikTokの生態系に合わせて見せる運用を始めた。LE SSERAFIMは、メンバー自身が撮影したバックステージまたは日常の写真や映像を編集したリキャップ(Recap:Recapitulateの略で、一定の期間を要約したコンテンツの形式をいう)コンテンツでファンと日常を共有している。HUH YUNJINの視点で要約された2023年上半期のLE SSERAFIMリキャップは、デュア・リパ(Dua Lipa)の「Leviating」の歌詞に合わせてウィットに富んだ編集を加えた日本のコンビニ訪問記を、下半期は「Perfect Night」に合わせて彼女たちの完璧だった時間を収めた。aespaは、#ae_SF_log(aespa Short Form log)でTikTokの位置情報サービスを積極的に活用し、メンバーが訪れた地域をタグ付けして彼女たちの余暇を1分程度のコンパクトな形式で再構成した。アーティストの誕生日を祝う方法も変わった。これまでは誕生日を迎えたK-POPアーティストを祝うためのメッセージ画像をアップロードする方式が一般的だったが、最近はショートフォームのプラットフォームを活用し、短いながら強烈に誕生日を記念するコンテンツが登場している。&TEAMはアン・マリー(Anne-Marie)の「Birthday」ワン・ダイレクション(One Direction)の「18」ABBAの「Dancing Queen」の“Young and sweet / Only Seventeen”を引用するなど、メンバーの誕生日と年齢にピッタリのBGMを活用したり、コンテンツでチーム内のトレンドセッターであるニコラスの誕生日ランウェイメンバーたちがリーダーのEJに送る秘密のバースデー・メッセージなど、メンバーそれぞれのキャラクターに焦点を合わせる。従来はやや長い動画で作られていたアーティストの日常の記録が、TikTokの文法に合わせて新たな形で再構成され始めている。