K-POPの成長とともに韓国音楽市場が自国のアーティスト中心だという評判は事実だ。ストリーミング・サービスの再生回数ランキングだけを見てもわかる。だが韓国で愛されるポップスターというカテゴリーも絶えず実在する。そのカテゴリーでここ数年の間に急浮上したアーティストとして、ラウヴ(Lauv)はどうだろうか。彼は昨年8月ソウルKSPO DOMEで単独コンサートを成功させた。そしてまさに今年のソウルジャズフェスティバルでは、5月31日と6月2日の両日にわたり、それぞれ異なる構成でヘッドライナーを務める。コンサートに先立ち、すでに韓国でも多くの人々に親しまれている彼の歌とともに、ラウヴについて紹介する。

「The Other」(2015)
ラウヴことアリ・スタップランズ・レフ(Ari Staprans Leff)は、10代の頃から作曲と演奏を始めて、音楽活動を夢見ていた。高校を卒業する頃、歌手よりはプロデューサーとしてのキャリアを目指し、ニューヨーク大学(NYU)でミュージック・テクノロジーを専攻している。だが2014年夏につらい別れを経験し、新たな歌を作ることに集中した結果が、新しいプロジェクト、ラウヴのスタートだ。「The Other」は2015年5月に出たデビュー作だ。音楽ブログに初めてアップされ、女優クロエ・モレッツが当時Twitterの投稿で薦めるなど、TikTokのなかった頃のバイラルに乗ったこの歌は、結局SoundCloudとYouTubeのヒット作になった。
「Boys」(2017)
「The Other」の成功にもかかわらず、ラウヴは大学に最後まで通って卒業することにした。その間個人的な創作以外にも、並行して他のアーティストのための曲作りを行った。その時期に彼が参加した代表作と言えば、チート・コーズの「No Promises (feat. Demi Lovato)」や、チャーリー・XCXの「Boys」だ。特に「Boys」は、2017年に各音楽メディアが発表した今年の歌のリストから外れることのなかった名曲だ。タイトルの通り70人以上の有名人が参加したミュージックビデオも見どころだ。

「I Like Me Better」(2017)
「I Like Me Better」はラウヴの初のグローバルヒット曲だ。彼の軽快なエレクトロポップの強みが際立つ。発売後オーストラリアやヨーロッパでまず人気を得て、アメリカでもチャートの順位を着実に上げていった。結局2018年2月、ビルボードHOT100の96位にランクインし、最高で27位まで行った。その頃彼はSpotifyで累積ストリーミング回数10億回を達成し、ビルボードのエマージング・アーティスト・チャートで13週間1位を獲得している。エマージング・アーティスト・チャートはアーティスト100と同じ基準を用いているが、HOT100やビルボード200の25位以内に入ったことのない新人のアーティストだけを対象とする。

「Paris in the Rain」(2017)
2018年、ラウヴはデビュー以降に発表した歌と未発表曲を集めてコンピレーション『I met you when I was 18. (the playlist)』を公開する。彼自身はこれをアルバムではなく「プレイリスト」と呼ぶ。その中でも「Paris in the Rain」は、韓国で最もホットな反響を得たトラックだ。5月31日のソウルジャズフェスティバルのステージは、まさにその『I met you when I was 18. (the playlist)』の収録曲17曲をすべて演奏する特別公演だ。ラウヴの初期のファンにとってこれほどのプレゼントがあるだろうか。

「I’m so tired...」(2019)
しばらく公演に集中していたラウヴは、2019年初めから集中的に新曲を公開し始め、その時期の歌は公式デビューアルバム『∼how i’m feeling∼』にまとめられた。当時ラウヴはさまざまなアーティストとコラボを行っている。その中でアン・マリーが参加し、Netflixの『13の理由』シーズン3の挿入歌となった「****, i’m Lonely (feat. Anne-Marie)」、レイニーとコラボした「Mean It」は全世界的な反響を得ている。もちろんBTSが参加した「Who (feat. BTS)」も大きな話題となった。特にアルバムで一番最初に公開された「I’m so tired...」はトロイ・シヴァンとのコラボで、両アーティストにとってともに代表曲になった。

「Steal The Show」(2023)
2022年、ラウヴは2枚目のアルバム『ALL 4 Nothing』で帰ってくる。「ALL 4 Nothing (I’m So In Love)」などのトラックが人気を集め、北米全域で2か月間ツアーを行っている。翌年には日本、韓国、中国、フィリピンなどのアジア公演を行っている。ちょうど2023年春、ピクサーのアニメ映画『マイ・エレメント』が公開され、テーマ曲「Steal The Show」が大いに人気を博した。この歌は『アナと雪の女王』シリーズの「Let It Go」や「Into The Unknown」を除けば、ポップスのアニメ・テーマ曲が韓国チャートのトップ圏まで上がった珍しいケースだ。

「Love U Like That」(2023)
2023年夏、アジア公演の最中に発表したシングルだ。ラウヴは同じ年の11月、AIを利用してこの歌の韓国語バージョンを作った。ボーイズグループUKISS出身のKevin Wooの助けを借りて韓国語の歌詞を書き、AIがラウヴの声を真似た。ビルボードはラウヴとのインタビューでなぜ韓国語を選んだのか尋ねた。ラウヴは今まで最も大きなコンサートを開催した韓国を大切に思っており、韓国のファンに特別なプレゼントをしたかったと答えた。ソウルジャズフェスティバルの2回目の公演はスペシャルゲストを強調している。ソウルでラウヴが自ら歌う韓国語バージョンを聴ける可能性はどのくらいあるのだろう。