自分を変え、鬱蒼とした高い森になろうと努力した海は、揺らめく深い海のままでいることにした。自分は海だから、海である自分そのものとして愛してくれる人たちに出会ったから。その海の名は、SOOBIN。
今年の序盤にBEOMGYUさんとベトナム旅行に行きましたよね。SOOBINさんが旅行のスケジュールを全部組んだと聞きました。
SOOBIN:普段は計画せずに適当に回るほうですが、僕たち、旅行に行く時間があまりないじゃないですか。なので、行くなら楽しめることはしっかり全部楽しまなきゃ、と思ってスケジュールを組んでみました(笑)。BEOMGYUさんは余裕を持って回りたがっていましたが、僕はやりたいことがとても多かったんです。
毎日一緒にいるメンバーたちと旅行に行ったり、オフの時間を一緒に過ごしたりするのは簡単なことではなさそうですが。
SOOBIN:メンバーとはプライベートでもよく遊んでいます。昨日もメンバー3人で遊びました。365日一緒なので特別な感じはしませんが、だからこそ誰より気の置けない仲だと思います。
気の置けない関係になると素っ気なくなったりもしますが、SOOBINさんはずっと変わらず優しいですよね。「完璧な休息の取り方」の動画で、BEOMGYUさんが疲れていることを覚えていて昼寝をプレゼントしたように。
SOOBIN:僕は視野が本当に広いほうだと思います。他の人に対してはどうかわかりませんが、特にメンバーの気持ちやコンディションはよく見えるんです。見ただけで、「今日はちょっとつらそうだ」、「今日はすごくハイテンションだな」と分かります(笑)。つらそうに見えたら、何が理由なのか、そばに行って話をすることもあります。
動物に接する姿からも優しさが感じられます。「僕たちのTOMORROW」の映像で、怖がりでエサを食べられずにいた子犬のことずっと気にかけていましたよね。元から、輪から少し外れている小さな存在が気になるタイプなんでしょうか。
SOOBIN:そうなんです。実は練習生のとき、人見知りでうまく馴染めなかったんです。はじめのうちは、少し寂しい練習生生活を送っていました。だから、時が経つにつれて自分が適応できたとき、馴染めず少し居心地悪そうにしている練習生を見ると、面倒を見てあげたくなったんだと思います。そのうちの一人がHUENINGKAIさんでした(笑)。それで、HUENINGKAIさんととても親しくなったんです。
この前、実のお姉さんが飼っているネコの話もしていましたよね。つらい過去があって人見知りをしていた子が、今年になって心を開いてくれたと。
SOOBIN:実の姉が猫を飼いはじめたというので見に行ったんですが、ソファーの下に隠れて姿を見せてもらえなかった日が僕たちの出会いでした。とても臆病な子なので一生触らせてもらえないだろうと思っていたんですが、前回会いに行ったときは、自分から出てきて触ってほしいとノドを鳴らしてきたんです。家族が愛を込めて世話しているので、つらい過去を乗り越えて心を開いてくれたみたいです。やっぱり、愛は全てを変えますね(笑)。
Weverse LIVEで、ドラマや映画、本について語り合う新しい友達ができたとも話してらっしゃいました。
SOOBIN:僕は、ドラマや映画を見て終わりではなく、見てからが始まりなんです。インターネットで必ず感想や考察を検索します。同じ作品でも見る人によって感じ方が違うので、色々な視点が知りたかったんですが、そういう話ができる友達ができました。僕よりも本や映画についての知識が豊富なので、感想を話すと新たに色々なことを知れます。趣味を共有できる友達ができたということが、とても楽しいです。
『インサイド・ヘッド2』の感想も語っていましたよね。作中に、ずっと覚えておきたい言葉を保管しておく記憶貯蔵所が出てきますが、そのとき「僕の中にはどんな言葉があるだろう?」と考えた、と。
SOOBIN:友達が、いつも遊んだ後にかけてくれる言葉が思い浮かびました。「SOOBIN、君と友達ですごく幸せだよ」、「君といるといい気分になる」という言葉です。それを聞くと胸がじんとするんです。実際、そんなフレーズを一生のうち何度耳にできるでしょうか? 前はそういった表現が慣れなくて気まずかったりしたんですが、その友人たちのおかげで、愛してる、ありがとうという言葉に少しは慣れてきました。
上手くやりたいという気持ちのあまり、他の人の何倍も不安になり、努力する「シンパイ」の気持ちにも共感されていました。SOOBINさんも、人よりもっと努力しなければと感じることはありますか?
SOOBIN:僕は、振り付けを覚えるのが他のメンバーに比べて遅いんです。デビューしてステージに立ち続けていればすぐに上達すると思ったんですが、思っていたより上達するのにも時間がかかりました。これまで少し慎重になって話してこなかったことで、メンバーにも秘密にしていたことなんですが、「Chasing That Feeling」と「Deja Vu」の活動のタイミングで、個人的に振り付けのレッスンを受けていました。 団体レッスンが終わってから、いつも一人で1時間踊って、ディテールも整えて。そうやって直近の2作品で個別練習するほど、一生懸命に取り組みました。人より遅い分、多めに歩くことでメンバーたちとスピードを合わせることができるので。今回のカムバック活動でも、時間があれば一人でもっと練習したいと思っています。
ずっとツアーが続いていた上、アンコール公演も控えているので『The Star Chapter: SANCTUARY』のカムバック準備も相当忙しかったと思いますが。
SOOBIN:海外を行き来していたので、ツアー中に日本でレコーディングした曲もあり、スケジュールがとてもハードでした。でも6年目にもなれば、メンバー皆、本当に早くこなすんです。予想していたよりもレコーディングも早く終えて、メンバー同士で振り付けのディテールを合わせる時間も減り、以前よりも成長したなと感じました。
ニューアルバムのサブタイトル「SANCTUARY」には「避難所」という意味があります。これまでTOMORROW X TOGETHERのアルバムに何度も登場してきた単語ですが、最近のSOOBINさんの「避難所」は何でしょうか?
SOOBIN:前はそういった存在がなくて、つらい時間をくぐり抜けるのが難しかったんですが、今ではそんな存在ができたと思います。運動や読書など、些細なことです。ゴチャゴチャした頭の中から抜け出して、何かに没頭できることが僕の避難所のようです。
前回の活動の際、高音パートやボーカルの実力がかなり伸びたと褒められていましたが、今回のアルバムではどうでしたか?
SOOBIN:実は、それぞれのアルバムに一つは自信のないジャンルがありましたが、今回はそういったものがありませんでした。タイトル曲「Over The Moon」がすごく「イージーリスニング」的な感じだったんですが、「僕たちが、こういう曲も一度やってみるタイミングなんだ」と思いました。残念だったのは、レコーディングのタイミングで本当にひどい風邪をひいてしまったことです。この前初めてライブの練習をしましたが、プロデューサーさんに「レコーディングのときより上手だ。すごく歌いやすそう」と言われ、喉の調子がよければもっと上手くできたのに、と残念な気持ちが残っています。
SOOBINさんはいつも歌詞に集中していますが、 今回のアルバムで気に入った歌詞はありますか?
SOOBIN:今回のアルバムは、仰々しい話をするというよりも、回り回って一緒に進むことになった僕たちについて歌っていますよね。混乱を経て誰もが経験する「愛」という普遍的な感情について歌っているところがいいなと思いました。「Higher Than Heaven」の「僕はもう / 永遠の意味が分かる気がする」というパートも記憶に残っています。前に、「『永遠』という言葉は信じていなかったけれど、ファンの皆さんのおかげで信じられるようになった気がする」と話したことがあるんです。僕が書いたパートではありませんが、僕の心をとても上手く書いてくれたと思った部分です。
SOOBINさんの「永遠」という言葉を信じたいという思いには、メンバーからの影響もありそうですね。
SOOBIN:メンバーたちは、これから年を取って死ぬまで付き合っていくと思っている存在です。同じ仕事をして、ほぼ同じ一日を生きているので、コンサートでもどんな思いで涙を流しているのか、メンバーが一番よく分かるじゃないですか。僕のように幸せからくる涙であれ、BEOMGYUさんが足を怪我した悔しさから流した涙であれ、お互い同じ感情を共有し、共感できる友がいることが嬉しいです。メンバーたちは皆、本当にいい子なんです。川のように穏やかで澄んだ感じです。誰一人、勢い余って足をバタつかせて川の穏やかさを崩すことも、流れる水を汚すこともないので、ずっと一緒にいられる気がします。
これまでのツアーで、「ステージが難しい」とおっしゃったこともありましたよね。今では3度目のワールドツアーを終えましたが、まだステージは難しいでしょうか?
SOOBIN:徐々によくなっている気がします。今でも完全に楽しんでいるとは言えませんが、以前のようにステージ前に心配になることは全くなくなりました。以前、ステージに立つ自分の姿がイマイチに思えて、モニタリングをするのも苦しい時期があったんです。でも今では、ステージの上に立った自分がカッコいいと思えます(笑)。
ツアーのサウンドチェックのたびに変わるSOOBINさんの衣装も素敵でした。
SOOBIN:(ファンの皆さんは)忙しい日常の中で来てくださるわけですし、開演の数時間前から入場して待たなければなりませんし、本当に「愛」ゆえにしてくださることですよね。そんなファンの皆さんにもっとカッコいい姿をお見せしたくて、サウンドチェック用に服もたくさん買いました。「メガネ+カーディガン」の組み合わせも、夏に前もって買っておいたものですが、会場の反応が本当によかったんです! モニターに映ったとき、MOAたちから大きな叫び声が上がったんです。いつものように「ワァ〜」じゃなくて「キャ〜〜」と驚くような感じで(笑)。ちょっとカッコつけすぎたかなと心配だったんですが、喜んでいただけて嬉しかったです。
チェ・ユリさんの曲「Forest」のカバーは、SOOBINさんを語るときに欠かせない一曲です。周りの人たちは背の高い木で、SOOBINさんも彼らと一緒に森をつくる木だと思っていたけれど、実際は海に近い人物のようだとおっしゃいました。
SOOBIN:周りを見ると、僕よりハンサムで、ダンスや歌が上手な人がとても多いじゃないですか。実は、そう思うようになったきっかけは、音楽フェスティバルのロラパルーザでした。他のメンバーはステージの上でとても楽しくて幸せそうに見えるのに、僕はそういうふうにできなかったんです。プレッシャーがあまりにも大きかったですし、そのせいで思い切り楽しめなかった自分に落ち込んでいました。そのとき、チェ・ユリさんが「Forest」という曲について「この曲は自責について歌った曲です」と話しているのを聞いて、「あ、僕が感じたのが自責なのか」と、自分の感情を少し理解できるようになりました。誰もが生きていく中で、どうしようもなく他人と自分を比較してしまい、本当に馬鹿みたいに自分の嫌なところだけを見てしまう時期があると思います。僕にとって「Forest」のカバーを準備していた時期は、落ち込んだ気持ちが渦巻いていた時期で、そういう心を紐解いて表現してみたいという思いもありました。
「そのうち陸に上がって森にふさわしい人間になるから待ってほしい」というメッセージをミュージックビデオに込めたそうですが、SOOBINさんにとって「森」の意味するところとは何でしょうか。
SOOBIN:ただ、歌手としてダンスや歌が上手で、ファンとのコミュニケーションが上手いこと。ステージを上手に楽しんで、それら全てを偽りなくできること。メンバーたちが幸せを感じるとき、一緒に幸せを感じられるようなことを「森」と表現したんだと思います。大げさなことではなく、素朴なことですが、僕が上手くできていないことです。
あれから少し時間が経ちましたが、SOOBINさんは森に近づきましたか?
SOOBIN:どうでしょう。「Forest」をカバーした後、ファンの皆さんのコメントを本当にたくさん読みました。カバーした当時は「僕は今海だけど、僕も君たちと一緒に森になるから。その時まで待っていてほしい」という思いで歌ったんですが、ファンの皆さんの文章を読んで、「どうしても森になる必要があるんだろうか」と、考え方が変わりました。森に近づいてはいくだろうけれど、僕自身を無理に変えて森にならなくてもいいんだ、と。ファンの皆さんがそう言ってくれました。「SOOBINが海だから好きだったわけで、森になることを願っていたわけじゃない」。「そうじゃなかったら、他の人のことを好きだったはず。君だから好きだったんだよ」。海は海ならではのいいところがありますよね。森の近くに一つくらい海があることで、その風景がより美しくなり、様々に楽しめるようになるというのに、僕が周りに合わせて森になろうとしすぎていたのかな、と思います。今では、僕は僕として輝けばいいんだと思います。
先日、日本のインタビューで語った「一番エネルギッシュで素敵な時期にMOAと出会い、きらびやかで素晴らしい20代を過ごしている」という言葉がオーバーラップするようです。20代の中心に立っているSOOBINさんの青春は、どのように記憶に残るでしょうか?
SOOBIN:「楽」です。僕たちが生きるあらゆる瞬間には「喜怒哀楽」がありますが、それでも結局、僕は「楽」になるような気がしていて。本当に死ぬほどつらくて、世界が自分にだけ意地悪だと感じられ、それで一生心に残るように思えた大きな出来事も、結局は過ぎていきました。
過ぎてみれば、少し笑えたりもしませんか(笑)?
SOOBIN:はい、何だかとてもちっぽけな気がしました。目の前だと巨大に見えるものも、少し遠くから見てみると、小さな点に見えます。練習生のときはとても大変でしたが、今思えば楽しい思い出がたくさん残っています。過去は少し美化されているような気もしますね(笑)。実は、今でも活動しながら大変なこともありますが、それでも絶対に立ち止まらず、もっと見せていきたいです。この仕事をする中で、大変なことの指数よりも、楽しさの指数のほうがはるかに大きいんです。僕は今も、自分の人生がとてもカッコいいと思っているんです。
とてもカッコいいです(笑)。
SOOBIN:僕もそう思います(笑)! 年を取って時間が経ってから、僕の青春、TOMORROW X TOGETHERの頃を見たら、どれほど輝いて見えるだろう。その時見たら、もっとカッコよく感じられるんじゃないかな、今の僕が。
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