大事にしていたフードつきのジップアップパーカーを手放し、慣れなかったキューベース(Cubase)もいつの間にか自在に扱えるようになった。少しずつ多くのことが変わる中で、常に変わらないものもある。音楽、チーム、そしてMOA。永遠を誓う自信があるからこそ、確信に満ちた口調で語るHUENINGKAIの本心。
HUENINGKAIさんの「ホークラックス(Horcrux)」(ハリー・ポッターシリーズに出てくる、自分の魂を封印した箱のこと。転じて、よく身につける服やアイテムのことをホークラックスとも称する。)と呼ばれていたフードのジップアップパーカーやぬいぐるみを手放したそうですね。
HUENINGKAI:まず、ジップアップパーカーはもう小さくなってしまって(笑)。違う感じの服も着てみたくて手放しました。「とりあえずフードを卒業しよう!」という思いでキレイめの服も買うようにして、ニットも買ってみたりして。ぬいぐるみも、昔のものをずっと置いておかなくてもいいなと思って、もう少しフカフカしたものを新しく手に入れました。整理するのも最初は大変でしたが、2回目からは楽になりました。
色々な点で大きな変化があったのですね。〈ACT : PROMISE〉ワールドツアー中も「TXT運動チーム」を結成して、皆で「オウンワン(韓国語で「今日の運動完了」の略語)」ショットを欠かさず撮って(笑)、運動も頑張ってらっしゃいました。
HUENINGKAI:「オウンワン」の写真はいつも撮っていて、自分たちのグループトークで共有しています。自己肯定感を高めようと運動を始めました。運動がいいらしいと聞いたので。確かに、(運動していると)雑念がなくなるんですよ。苦しいという思いしか湧かないので!(笑) ボクシングをすれば、まず、100パーセント体重が落ちます。あんなに汗をたくさんかいたのは、コンサート以外で初めてでした。マネージャーチームにクロスフィットを長く続けている方がいて、僕も最近クロスフィットを始めました。そもそも僕の目標も、ムキムキというより筋肉のついたスリムな身体だったので、クロスフィットがぴったりだと思います。無理な運動はしないので、MOAの皆さんは心配しなくても大丈夫ですよ(笑)。
ワールドツアー〈ACT : PROMISE〉中、「Growing Pain」のステージでギターを投げるパフォーマンスを見て驚いたMOAの方々も多かったですよね。
HUENINGKAI:普段のイメージとのギャップはありましたね(笑)。普段、おとなしくて静かな僕にも、ロックスターの本能があるということをお見せしたかったんです。「ステージを粉々にする勢いでやろう」と思って様々な表現を研究しました。最初はギターを壊すつもりでしたが、いっそ放り投げたほうがいいんじゃないかと思って。ツアーの序盤はギターを放り投げるだけでしたが、アメリカツアーではピックも投げて、そこからは前髪をかき上げてみたり、色々と試しました。そういったチャレンジを重ねて、新たな姿をお見せすることができてよかったです。
楽器の演奏も以前からの趣味であり特技ですが、YouTubeコンテンツ『ヒュニンはバンドサークルがやりたい』を終えた感想は?
HUENINGKAI:楽器の演奏やバンドが本当に好きだったので、必ずやりたいと思っていたコンテンツでした。楽器が弾けるだけでも幸せなのに、実際にバンドサークルの方々と交流しながら一緒に演奏して、文字通り青春を送っているような気がして、撮影中ずっと楽しかったです。撮影のときも、仕事だという思いはあまりありませんでした。大学のバンドサークルに遊びに行く気持ちで臨んでいた気がします。
HUENINGKAIさんが考えるバンドならではの魅力がありますか?
HUENINGKAI:曲を合わせるときに交わすアイコンタクトが魅力だと思います。バンドは呼吸が一番大事だと思うんですが、お互いに目を合わせながら一緒に楽しむとき、一つになったように感じられるんです。ロックには、曲を演奏するバンドとそれを楽しむ観客の両方に、永遠に忘れられない思い出を作る力があると思います。バンドサークルに興味が出てきたとか、もう一度楽器を習ってみようと思うと言ってくれたMOAの方もいたんです。『ヒュニンはバンドサークルがやりたい』は、僕にとっても大きなモチベーションになりましたが、MOAの方々にも素敵な夢が生まれたようで幸せです。MOAの皆さんが、バンドに限らずやりたいことには何でも挑戦してみて、自分が目標にしたことを叶えてほしいです。挑戦すること自体が大きな勇気ですし、いざやってみると、青春を思う存分楽しむことができると思いますから。
そのとき感じた青春はどんな形だったのでしょうか。
HUENINGKAI:キャンパスライフだけで経験できる感動、悲しみ、幸せが集まった、そんな青春です。実は「きっとずっと (Kitto Zutto)」は、『ヒュニンはバンドサークルがやりたい』延世大学編の撮影で感じた思いを込めようと制作した曲です。2話と3話の撮影の間に曲づくりをした記憶があります。爽やかで青春が感じられるようにコード進行も明るいムードにしました。最初に作ったのがピアノトラックだったんですが、少し物足りなくてBPMを上げてみたら、それがとてもよかったんです! 面白かったのが、BPMを上げたスピードで弾いてみようと思ったんですが、僕の手では演奏できなかったという(笑)。ピアノだけだとつまらないので、耳を捉えるメロディーがあればいいなと思い、イントロからリフレインを続けるギターリフを入れました。それが「きっとずっと (Kitto Zutto)」のポイントです。ドラムは、サウンドを徐々に大きくすることで起承転結を演出しました。
初めてのプロデュースだった「Dear Sputnik」と比べるとどうでしょうか?
HUENINGKAI:ものすごく成長しました。「Dear Sputnik」を作っていたときは、キューベースを使えなかったんですが、今回はキューベースで作曲しました。使ってみたら確かにやりやすくて、使えば使うほど上達しました。実は「Dear Sputnik」は、大枠こそ僕が作りましたが、デビューして2年目の頃なので他の方々のサポートもたくさん受けました。それから、僕のパーセンテージをもっと増やさないと、という思いが強かったんですが、今回の「きっとずっと (Kitto Zutto)」のトラックではパーセンテージがずっと増えました。この曲を起点として、完全に「僕の曲だ」と言える曲を作るために努力しています。
デビュー初期の『セクションTV 芸能通信』で、「練習生の頃からたった一つ目標があって、それは人の心を動かす曲を作って聴かせることです」とおっしゃっていました。その目標はどれくらい達成できたでしょうか?
HUENINGKAI:「Dear Sputnik」は30%、「きっとずっと (Kitto Zutto)」は60%です。「きっとずっと (Kitto Zutto)」を初めて作ったときから、コンサートでこの曲をMOAと一緒に楽しく歌えるといいなと思っていました。MOAの皆さんが自分のプロデュースした曲を楽しんでいる姿を見たとき、最も大きな達成感を感じます。コンサートでこの曲を歌うときにトロッコで観客席を回ると、MOAの皆さんの顔が一人ひとりよく見えるんですが、皆さん幸せそうな表情をしていました。コンサートでMOAが楽しく一緒に歌ってくれる曲、僕たちが感動を与えられる曲を作ることができてよかったです。MOAの皆さんと一緒に歌うときに、初めてこの曲が完成すると思います。これからも皆が楽しめて、聴けば幸せになる曲を届けたいと思っています。
色々な面でHUENINGKAIさんの音楽的成長があった一年ですね。『リムジンサービス(Leemujin Service)』や日本テレビの『THE MUSIC DAY』で披露した曲「ベテルギウス」も話題になりました。
HUENINGKAI:知人からたくさん連絡が来ました(笑)。あんなに連絡が来たのは初めてでした。ありがたい一方で不思議な感じがしました。自分では、まだ自分だけの声を探している過程だと思っているので。ロックボーカル風に歌ってみることもあり、高音を出すのはそこまで難しくないんですが、もっときれいな声を出す方法を考えています。もっと僕だけの特色ある声を出してみたいです。上手く歌うことも大事ですが、個性のほうが大事なときもあると思うんです。
普段から親切な性格だと思いますが、自分には厳しそうですね。
HUENINGKAI:自分で完璧だと思えてこそ、自分の実力になると思います。僕は心配性なので、決まった練習時間の他にも別に時間をとって、さらに練習しています。今回のタイトル曲「Over The Moon」が難しくて(笑)。ダンスライブが上手くなるためには、座っている状態から完成度の高い歌を歌わなければいけないと思うんです。そして、ステージに挑むときはまず、「練習した通りにしよう」と思うようにしています。もっと上手くやろうとすると、その分ミスするかもしれないので。
「Over The Moon」は、はっきりした起承転結というよりロマンチックなムードを生かす部分が核となる曲なので、なかなか難しかったと思いますが。
HUENINGKAI:悲しい曲ではありませんが、そうは言ってもただ明るいムードというわけでもないので、その中間の切なさを上手く生かそうとしました。最初はMOAたちに囁くように愛らしく歌い、コーラスパートでは少し切なさを加えました。「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori」からざらついた声を抜いて、軽やかなニュアンスを加えたのが「Over The Moon」だと思います。
「Over The Moon」を見ながら、「9と4分の3番線で君を待つ (Run Away)」が思い浮かびました。
HUENINGKAI:そうなんです! 「囁いて 僕の名前を」の動作と「9と4分の3番線で君を待つ (Run Away)」の耳を触る動作が同じです。なので、久しぶりに以前のステージを検索して見ました。「9と4分の3番線で君を待つ (Run Away)」の僕が、中高時代のときめきを表現するイメージだったとすれば、今回の「Over The Moon」では、ぐっと成長した大学生のように大人びた感じを表現しようとしました。
「TO DO X TXT - EP.144 廃虚スター」で年上メンバーたちを率いて進む姿を見て、末っ子のHUENINGKAIさんの成熟を感じました。
HUENINGKAI:あの瞬間が、メンバーたちが僕に一番頼っていた瞬間ではないでしょうか(笑) 最初は怖かったですが、僕がいないときっと皆入れないような気がして助けてあげたんです。2回目は、1回目ほど怖くないと思ったので。僕があまり動じない性格だからなのかもしれません。メンバーたちがあんなに必死になって、服が脱げるほど(笑)、僕の肩をつかんだのはあの時が初めてでしたが、内心「すごく僕のことを頼っているんだな……」と思って嬉しかったです。
YEONJUNさんの「GGUM」ミュージックビデオの撮影現場にも行ってらっしゃいましたね。
HUENINGKAI:YEONJUNさんがソロとしてのスタートを切ってくれたじゃないですか。とてもありがたくて、応援も兼ねて一緒にタッカンジョンを食べようと思い、買って行きました(笑)。何より、YEONJUNさんから学びたい気持ちが大きかったんです。最初から最後まで一人で歌いながらステージをこなす過程もそうですし、後半にフリーにアドリブする姿を見たら、カッコよかったですね(笑)。YEONJUNさんの活動が、僕たちにとってもいい経験になりました。
これまでインタビューを通じて心強いメンバーになりたいと強調されていましたが、HUENINGKAIさんにとって、信頼とはどのような意味を持ちますか?
HUENINGKAI:チームワークです。お互いの信頼が大きければ大きいほど、チームの絆がより強いものになりますから。チームのメンバーとして、他のメンバーが僕のことをたくさん頼ってほしいと常に思っています。それでこそチームですから。
お互いの信頼のためには正直さが必須ですよね。『W KOREA』のインタビューで、息の長いチームになるためには「チームワークとお互いの感情に正直になること」が必要だと答えたように。
HUENINGKAI:実は元々、本音を口に出すタイプではなかったんです。以前は「時間が経てばよくなるだろう」と思うだけだったとしたら、今はメンバーたちや家族、マネージャーチームといった身近な人たちには何でもすぐに話して、すぐにフィードバックをもらいます。そのほうが気が楽です。もちろん心の中を正直に見せることは本当に難しいですよね。絶対に最初からそうはできません。だから僕も少しずつそうするように努力して、去年より今がもっと正直になりました。
デビュー5周年を迎えてWeverseに投稿した手紙では、本音を話すのがあまり好きではないので、頑張って隠してきたとおっしゃっていました。それなのに、MOAの方々に素直な気持ちを告白した理由が何かあるのでしょうか?
HUENINGKAI:以前は、僕のつらかったことをMOAの皆さんにあえて教えたいとは思わなかったんです。MOAにはいつもよい姿を見せたいと思っていたので。ところが、時が経つにつれてMOAとの距離が近くなり、いい関係に発展するためにはこういった話もするほうがいいと思うようになりました。それで、3月4日に素直な気持ちをWeverseに残しました。「これからもっと素直に話して、気楽に話そう」と、その日決心たんです。
素直になるためには大きな勇気が必要ですが、勇気を出すことができた決定的なきっかけは何だったのでしょうか。
HUENINGKAI:MOAの皆さんの愛です。ファンレターや、僕たちと会える場で、MOAたちが素直に話してくれるたびに愛を感じました。「TOMORROW X TOGETHERが自分の青春だ」という言葉もとても嬉しかったですし、「君がどんな姿であっても、心から君のことを好きになるから。本当に大好きだよ」という言葉を聞くと、大きな力になります。僕の周りに僕のことを愛してくれる人がこんなにたくさんいるのに、僕は自分のことを愛していなかったんじゃないかと思ったんです。MOAたちのおかげで、僕自身を愛すようになりました。
反対に、MOAへの愛も本当に大きいと感じます。「デビューまでにつらい過程がありましたが、その過程によってMOAに会うことができるのなら、数百回でもできます」という(Weverseの)コメントのように。
HUENINGKAI:それだけ愛していると言いたかったんです。デビュー前は諦めたくなる瞬間がたくさんありましたが、そのつらい時間を全て忘れさせてくれたのがMOAでした。MOAがいたから、アイドルとしての幸せを知りました。僕は、MOAのおかげでTOMORROW X TOGETHERが完成したと思っています。
永遠を約束すると歌う「Higher Than Heaven」のように、一度好きになるとその気持ちを長く維持するタイプですよね。HUENINGKAIさんが、永遠の愛を守り続けられる自信があるものは何ですか?
HUENINGKAI:もちろんMOAです。「Higher Than Heaven」というタイトルのように、天国よりも幸せな場所に連れて行ってあげたいんですが、きっとMOAの皆さんが幸せになる場所はコンサートですよね? 今後、作曲や作詞を頑張って、コンサートで素敵な曲をたくさん聴かせてあげたいです。「MOA」という答えが当たり前すぎるとしたら……、卵ですね。僕は、卵のことも本当に愛しているので(笑)。
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