『72時間のブラインドデート』(traveler TTT)
イ・ヒウォン:「一人旅の途中、誰かと恋に落ちる想像をしたことはありますか?」誰もが一度は思い描いたことのある、旅先での運命的な出会い。数えきれないほどの恋愛リアリティー番組があふれる現在、旅を媒介とした『72時間のブラインドデート』(原題:『72時間ソゲッティング』)は、明らかに異なる質感を持っている。各エピソードの主人公の男女は、初対面の相手と外国を2泊3日旅する過程でお互いについて知っていく。メッセージアプリを使った投票も、決められたキーワードデートも、パネラーたちのリアクションもない。そこにあるのは、1対1の関係の中で、明日はどこへ行くか、何を食べたいかといった極めて日常的な会話だけだ。「いつ、どこで相手に出会うかは分かりません」というナレーションの通り、最初の出会いは、公園、電車や飛行機の中といった旅の動線上で起こるため、最初のうちはお互いの存在に気づかない場面も生まれる。旅に出る前に交換された手帳は、見知らぬ人々の中でお互いを見つけ出すためのヒントになる。手帳に書かれているのは、相手の職業や年齢ではなく、趣味や嗜好、普段考えていること、そして自画像であるという点も、『72時間のブラインドデート』が描こうとする愛のかたちを示している。相手と無事に出会い、好みや趣味について語り合って距離を縮めていく二人は、3日目の最後に相手との関係を続けるかどうか決断する。関係を続けたければ約束の場所へ、そうでなければそのまま空港へ向かうというシンプルな設定もまた、旅先で生まれた出会いの自然な終わりを映し出している。
72時間のあいだ、主人公たちは単に「恋愛」というキーワードに没頭するのではなく、旅先で出会った同行者のように相手と向き合い、次第に自分らしい本来のリラックスした姿へと変わっていく。「余裕がなかった気がする。時間的な余裕じゃなくて、心の余裕が」というミソの言葉や、「これまで少し自分を抑えながら人と付き合ってきた気がする」というセジンの本心のように、相手との対話は、「自分はどんな記憶と共に生きてきたのか」、「自分はどんな人間なのか」を振り返らせる。『72時間のブラインドデート』は、そうして「愛」とは相手を知ろうとすることだけでなく、自分自身を見つめる時間の中で芽生えるものなのだと教えてくれる。

Peach Truck Hijackers - 「Compressed Annoyance」
キム・ドホン(ポピュラー音楽評論家):デザイン学校でバンドを楽しんでいた女子学生たちは、本格的にアルバムを出したいと思うようになった。知識はなかった。バンドのことも、関係者も、ライブハウスのこともよく分からなかった。だから彼女たちはビラを配った。「仲間を募集します」。そうして出会った仲間たちは、アマチュアの彼女たちを誠心誠意サポートしてくれた。スタジオができた。プロデューサーとレコーディング・エンジニアがついた。バンドはアルバム制作のためにタンブルバグ(Tumblbug)でクラウドファンディングを実施し、顔も名前も知らないファンたちから174%を超える支援を受けた。ピーチ・トラック・ハイジャッカーズ(Peach Truck Hijackers)は、こうして世に出た。
「DIY(Do It Yourself)」精神が登場してから、すでに50年の時が経った。今や、どれほどインディペンデントであっても何から何までひとりでこなす時代ではない。ピーチ・トラック・ハイジャッカーズのアプローチはひと味違う。まず、仲間になること。そして、互いに助け合うこと。1990年代の「ライオット・ガール(Riot Grrrl)」ムーブメントを思わせる韓国アンダーグラウンドの近年の流れにおいて、Chip Post Gang、Socialclub Hyangwu、Sailor Honeymoonといったバンドたちが自らを育み、シーンを築き、生存のための方法を作り出している。
そう、「生存」だ。富や名声を手に入れるために他者に委ねるのではなく、自ら考え、決意するための、「生き残る」精神。今年、インディシーンで生と死を歌うアーティストがやけに多く登場した理由もそこにある。1990年代のオルタナティブ・ロックやガレージ、ポストパンクの質感を忠実に再現するピーチ・トラック・ハイジャッカーズの音楽は、荒々しくてストレートだ。ためらいなく罵声を吐き出すことで、私たちは言葉を取り戻し、お互いの目を見て意思疎通をする。Say Sue Meのキム・ビョンギュと、Soumbalgwangのカン・ドンスは、彼女たちの原初的な感情を「整えられた怒り」の手触りにして、その系譜をつないでいる。
目的地は定まっていない。このバンドは、自らをどう定義すべきか分からないと吐露している。しかし、好きなもの、言いたいこと、やりたいことは明確だ。それを最もよく表現できるからこそ、音楽をしている。創作の美しさとは、まさにこうした場所から生まれてきたのではないだろうか。ピーチ・トラック・ハイジャッカーズのストレートで騒々しいパーティーに、真の「バンド・ブーム」への希望を見る。
『オブザーバー』‐ロバート・ランザ、ナンシー・クレス
キム・ボクスン(作家):主人公は優れた腕を持つ神経外科医で、確かなキャリアを築いてきた「カロ」。彼女は、病院の上司によるセクハラを告発したことをきっかけに風当たりが強くなり、職を辞すことになる。そんな彼女のもとに、ある日思いがけない提案が届く。遠い親戚が運営する秘密の研究所で働かないかという誘いだった。家計を支えなければならないという現実がなければ、カロがこの胡散臭い提案を受け入れる理由はなかっただろう。
その親戚は、「バイオセントリズム(生命中心主義)」という理論に基づいた危険な医療実験に人生を懸けていた。カロは研究所の物理学者「ジョージ」と出会い、意識が宇宙の中心であるとするバイオセントリズムの概念を聞かされる。ジョージは、宇宙をただ観察するだけでなく、そこに介入し、制御することができるのだと語る。被験者の脳に埋め込まれるチップや多元宇宙についての説明を聞いても、カロはそれらを幻覚のようなものだと一蹴する。しかし物語は、すぐに彼女の予想とはまったく異なる方向へと進んでいく。
『オブザーバー』(原題:『Observer』)は、科学者のロバート・ランザと、ベテランSF作家ナンシー・クレスが共同執筆した小説で、科学理論とスリリングな虚構が絶妙に融合した作品だ。科学的な好奇心を刺激すると同時に、緊張感ある展開と哲学的な問いが読者に投げかけられる。サイエンス関連の記述がヘビーすぎない一方で、興味に応じてランザのノンフィクションへと関心を広げられる点も、この作品ならではの魅力だ。
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