韓国の日本音楽ファンたちは、今年も昨年同様に次々と開催される韓国公演に嬉しい悲鳴を上げている。単なる流行や一時的な関心ではなく、ジャンルや形式を超えたJ-POPの需要がこの国にしっかりと根づいた証拠と言えるだろう。長年にわたり切望してきたアーティストの感動的な訪韓や、すでに韓国内の観客と信頼を充分に築いているアーティストたちとの喜ばしい再会はもちろん、新たに基盤を築こうとしている熱意あふれるミュージシャンから、会えるとは思ってもいなかったオールタイム・レジェンドまで。単独ライブやフェスティバル、コンサート会場や野外ステージまでを網羅し、それぞれ異なる特性を持った音楽が、それぞれの方法で韓国と出合う準備を整えた。その選択肢がこれほどまで多様に広がっているということだけでも、今年一年は充分に胸が高鳴る日々の連続になるのではないだろうか。

King Gnu「King Gnu CEN+RAL Tour 2026 in Seoul」
6月20日(土)〜21日(日) KSPO DOME
2024年のKing Gnuの韓国公演が思い出される。当時の雰囲気は「熱狂」では足らず「爆発的」という表現がふさわしいほど、ファンたちが最大限の熱量を放ちながら歓迎した、そんな公演として記憶に残っている。絶え間ない歓声と圧倒的な音量の合唱まで。それに応えて即興で「Tokyo Rendez-Vous」も披露したこのライブは、その後メンバーたちが自ら言及するほど深い印象を残し、ついにはその時の公演の数曲が正式に音源化され、その日の熱気が公式記録にもなった。そうしてアジア、特にソウルでの経験は、その後のZepp*規模のファンクラブ限定ライブの開催及び公演中の撮影の全面許可という運営方針へとつながった。ある意味、ソウルでの経験がこのバンドのツアー哲学を変えたと言える。
2年ぶりの帰還となる今回の訪問は、タイトルからも推測できるように「360度ステージ」で構成されるという点で最も注目に値する。以前とは異なる方法で空間を活用するため、今回のツアーならではの演出とムードで公演が構成される予定だ。何よりも1万人以上が参加する大規模公演なだけに、一層パワーアップした観客の熱気がバンドとどのような化学反応を生み出すのかということも、この再会を期待させる要素だ。ジャンルを縦横無尽に行き来する幅広い音楽性を基盤に、これまでに発表された新曲との初の対面はもちろん、一昨年聴くことができなかったナンバーに対する心残りも吹き飛ばせる場。絶えず成長し続けるバンドの真骨頂を目撃するには、何の不足もない時間になるはずだ。
* Zepp:1,000〜2,000人規模の中型ライブ会場

Aooo「Echoes Weekend Seoul」
6月12日(金) YES24 WANDERLOCH HALL
ソニーミュージックに2024年9月に新たに発足したレーベルEchoes。YOASOBIやキタニタツヤ、MAISONdesなど、ボカロシーンと深い関わりのあるアーティストを中心に勢力を構築し、ウェブを拠点に活動する「原石」を本格的にサポートするために誕生したレーベルと言えよう。その中でAoooは唯一のバンドで、それぞれの分野ですでに頭角を現しているメンバーたちが意気投合して結成した、今の世代の「スーパーバンド」と呼ぶにふさわしい。バンド「赤い公園」での活動を通してスター性を証明して見せたボーカル石野理子、すでにボカロPとしてその名が知れ渡っていたギターのすりぃ、YOASOBIのサポートメンバーでありバンドマスターとして活動していたベースのやまもとひかる、やはりボカロPでありながら音楽ユニットNOMELON NOLEMONも兼任しているドラマーのツミキ。知る人ぞ知る、まさに豪華なキャスティングと言える。
昨年<WONDERLIVET 2025>で好評を博しただけに、今回の韓国公演は昨年の勢いを引き継ぎながらも、さらに厚みを増したセットリストで武装した「深化版」の公演になるものと期待されている。特に最近クロスオーバーを基盤としたバンドが大勢を占めているため、その一方で純度の高いギターロックサウンドで武装した彼らの訪韓は、一層嬉しく感じられる。2000〜10年代を彩った、いわゆる「ロッキング・オン系」という器に、彼らだけのキャリアを惜しむことなくつぎ込んだ新世代の音。彼らの代表曲「サラダボウル」のように、独自のレシピで和えた新鮮で風味豊かな音楽を味わいたいなら、この日を逃さないでほしい。

back number「Grateful Yesterdays Tour 2026 Asia」
9月12日(土)〜13日(日) KINTEX Hall 9
「付き合っていた彼女をバンドマンに奪われた。振られてしまった自分は、彼女にとってただの「back number」に過ぎない」。
自身の経験をもとに、雑誌の過去の号を意味する英単語をバンド名につけ活動を開始してから、いつの間にか20年余り。もちろんこの要素一つだけでバンドを定義することはできないだろうが、彼らの歌の中心を貫く情緒はまさに「劣等感」だ。誰かに片想いする自分の資格からまず検証し始める人。ただそばにいてくれるだけでいいのに、それでも「夏の魔物に連れ去られ」、奇跡のように自分のそばに来てくれたらという無意味な願い、あるいは恋愛中でも自分の至らなさから、「ごめんごめんありがとうごめんくらいの バランスになる危険性は少し高めだけど 許してよ」とあらかじめ許しを請う情けなさ。一見するとやりすぎに思えても、聴く人はいつの間にか歌に自分の経験を重ね合わせているのではないだろうか。日常の言葉で誰もが共感できる感情を捉える独自のレトリックこそが、彼らをスタジアムツアーを回る大物バンドのポジションへと導いた最大の功労者だろう。
さらにギターロックを基盤としながらも、ポップなメロディ感覚を失わず、ジャンルに馴染みのない人々にも自然にアピールできるという点が、この3人組バンドのもう一つの強みだと思う。これまでも訪韓を望むファンは少なくなかったが、最近ソン・シギョンがある日本のバラエティ番組に出演し話題になった曲「ヒロイン」が一般の人々にも浸透し、チケット争奪戦が一層熾烈になると思われる。華やかなパフォーマンスの代わりにステージを飾る、正直で真摯なありのままの告白。その鮮やかな感性が会場でどのように響き渡るのか、あとは直接確認するのみだ。
eill「ACTION ASIA TOUR 2026」
5月31日(日) YES24 WANDERLOCH HALL
海外公演の前提条件は、やはり「その場所に単独公演を開催するだけの需要があるのか」ということだろう。収益的な面を見過ごすことができない理由だ。最近はその公式から脱却しようとする人々にも難なく出会うことができる。まだ韓国での認知度も低いかもしれないが、市場の可能性と空気を信じ、支持層を最初から構築していこうとする開拓者と呼ぶにふさわしい。eillがまさにそのようなアーティストだ。15歳の頃からジャズバーで歌ってきた彼女のルーツはR&Bとソウルだが、ジャンルにとらわれずさまざまな方向へとキャリアを展開していく姿は、K-POPアーティストのシルエットと重なる。以前からTAEYEONやEXIDの日本盤アルバムに参加し、韓国との縁を築いており、2023年にフェスティバルで訪韓して以来、二度の単独公演を経て、少しずつ韓国内での勢力を拡大している。
現地で2月まで行われた「ACTION TOUR」の延長として行われる本ツアーで、彼女は再びポップス、ロック、ダンスを自由自在に行き来する幅の広いパフォーマンスを披露する予定だ。2024年の訪韓以降、フルアルバム『my dream box』、EP『ACTION』など、ディスコグラフィを着実に積み上げてきたため、新しい曲が多くセットリストに含まれるであろうことは容易に予測できる。韓国のファンとの関係がちょうど熟し始めたタイミングで迎える今回の公演は、「初めて会う」人たちにも「すでに知っている」人たちにも充分アピールできる準備が整っている。支持層を自ら築いていくという意志を持った道のりにおいて、今回の公演は、彼女の名前が韓国にさらに強く根を下ろす、意義深い一歩となるだろう。

Vaundy「Vaundy ASIA ARENA TOUR 2026 “HORO” IN SEOUL」
9月19日(土)〜20日(日) インスパイア・アリーナ
多くの人々が長い間待ち望んでいたVaundyも、今年ついに韓国を訪れる。名実ともに2000年以降を代表する「21世紀生まれ」のシンガーソングライター、男性ソロとして史上最年少でドームツアーを行ったアーティスト、2025年だけで10曲を超えるタイアップ曲を発表した時代の声。まさにVaundyの話だ。アニメ主題歌の活動が活発だっただけに、韓国内の日本音楽の主要な消費層と明確な共通項を成しており、これまで韓国を訪れたどのアーティストよりも歓迎の声が大きかったのではないかと思う。2019年に発表したデビュー曲「東京フラッシュ」を皮切りに、作品毎に予測不可能なサウンドを生み出しており、自らアートワークや映像ディレクションまで手がけ、「マルチクリエーター」の概念を定義した人物でもある。訪韓を望む声の大きさに比べれば多少遅れた感もあるが、それだけその期待感が凝縮されているからこそ、観客とのすばらしいシナジーを見せてくれるだろうと信じて疑わない。
彼にとってライブとは、レコーディングとはまた異なる「試みの瞬間」だ。毎回異なる演出やサウンドを試みながら、その瞬間だからこそ発揮できるまた別の創造性を模索してきた。韓国、それもインスパイア・アリーナという場所だからこそ生まれる経験は、彼の現在を更新する年表の新たな一章として位置づけられるだろう。膨大なディスコグラフィの中からどのような曲が選ばれ、どのようなやり方でステージ上に繰り広げられるのか、また、広大なスペクトルを誇る彼の音楽がステージ上ではどのような有機性を持って展開されるのかを確認できる時間。今回の彼の韓国公演は、21世紀が彼の手中にあるということを自信を持って読み上げる、そんな「宣言」の場となるだろうと確信する。

<ASIAN POP FESTIVAL 2026> 1日目
5月30日(土) パラダイスシティ
「最近の人気グループはすべて見た気がする」とか、「もう少し目新しい感じの日本音楽がないかな」などと思っている人たちであれば、そろそろ少しずつ「中級クラス」へと歩みを進めてみることをお勧めしたい。最近の韓国におけるJ-POPブームはまさに前代未聞のものだが、10〜20代の需要を背景にしたボカロP、あるいはアニメのタイアップ担当アーティストたちがかなりの割合を占めているのも事実だ。そのような流れが少し食傷気味に感じられるのであれば、トレンドとは関係なしに「信頼して聴ける」アーティストたちを中心に組んでいるこのイベントのラインナップに注目するといい。真の音楽マニアたちが頻繁に訪れるようになっている、それが<ASIAN POP FESTIVAL>だ。
2日間のうち一日を選ぶとしたら、やはり1日目に惹かれる。ギターロックやシューゲイザー、パンクの間でユニークな音楽世界を繰り広げる君島大空、1990年代後半に結成され、ジャンルの柔軟性を保ちながら、ロックシーンに独自の座標を築いてきたくるり、ジャンルの境界を越え、密度の高いライムと卓越したテンポのコントロールで他者と一線を画すラッパーのKID FRESINO、大衆音楽の領域を超え、音に対する純粋な探究を続けている長谷川白紙まで。そのような個性豊かなアーティストたちのステージを一日で観ることができるのは、明らかに稀なことだ。その上、山下達郎が所属していたことで有名なシュガー・ベイブのメンバーであり、日本のシティポップの伝説的存在である大貫妙子の加勢まで言及するなら、もはや躊躇う余地はない。この日出合うことになる「知らなかった日本音楽」の真骨頂が、このジャンルについてのあなたの地形図を完全に描き換えてくれるだろう。
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