現在、英語圏のポップス市場においてコラボレーションは、大衆音楽産業を支える重要な柱のうち一つだ。チャートでも「feat. XXX」や「OOO X OOO」などの表記が含まれた曲名をよく見かける。これは、ヒップホップが今の時代のポップスにおいて主流となったことによる影響が大きい。アメリカンポップスに限って考えてみると、過去にもミュージシャンが他のアーティストの曲に参加する場合は多くあった。アメリカンポップスのルーツがジャズであり、ジャズはジャムセッション(複数人による即興演奏)が基本であるだけに、ある意味当たり前なことだった。しかし、そのような参加をクレジットに入れることは、ほとんどなかった。ましてやモータウンのように共同生産体制を整えたポップ・ミュージックもそうだった。作曲家がコーラスに参加することはよくあることだったが、単に作曲家として名前を載せるだけだった。ヒップホップは、一つの曲に複数人のラッパーが交互に短いヴァースを歌って埋めたり、有名なDJがビートやスクラッチで参加したことを強調するなど、協業の事実を知らせる理由が多く、またそれが自然と受け入れられた。クレジットへの明示は、つまりヒップホップの「リスペクト」文化が産業的に翻訳されたものに他ならない。
すべてのコラボレーションは、企画だ。思いがけない機会から出会い、実現されたとしても、大衆の前に出されたら、その瞬間からは単独パフォーマンスでは存在しなかったはずの新しい影響、あるいはアーティスト間のシナジーを示すことになる。20世紀末から21世紀の今に至るまでのポップス市場を振り返ってみると、そこにはいくつかのタイプがある。
一つ目は、新人歌手にとっての登龍門の役割が代表的だ。去年、最も注目を浴びた新人の一人のミーガン・ジー・スタリオンがいい例だ。彼女は、カーディ・Bの「WAP」にフィーチャリングし、強烈な印象を残した。中堅歌手が自分の支持するアーティストの声をより多くの人々に聴かせるために、喜んでプラットフォーム役を買って出る場合もある。ミーガン・ジー・スタリオンのソロアルバム『SUGA』の収録曲「Savage」のリミックスにビヨンセがフィーチャリングし、彼女の人気に勢いをつけてくれた。
BTSにとってこのような役になってくれたアーティストとして、スティーヴ・アオキとホールジーを挙げることができる。BTSは2017年のビルボード・ミュージック・アワード(以下、BBMA)に登場した当時、すでに4年目の歌手だったが、アメリカ市場は彼らを初耳の新人のように扱った。2010年代は、有名EDM DJがポップス歌手との協業によってポップス市場に大挙して存在感を示した時期でもある。スティーヴ・アオキは、世界一有名なDJの一人であり、アメリカ主流社会によく知られたアジア系の血統だ。そしてホールジーも同様、EDMプロデューサーのザ・チェインスモーカーズのフィーチャリング・アーティストとして名を広く知らせた歌手であり、インターネットを中心に始まったポップ・センセーションを巻き起こしたBTSのことを理解している同世代のマインドで彼らをしっかりとサポートした。
フィーチャリングは、音楽的な本気度を高めるためのいい手段でもある。最近は特に、ヒップホップのビートを基にしたポップス曲がその本気度を強調するためにラッパーを起用する場合が多い。例えば、ラテン・ポップの影響が感じられる、サザン・ヒップホップをベースにしたポップス曲であるカミラ・カベロの「Havana」は、アメリカ南部のアトランタ出身のヤング・サグからのサポートを得た。
BTSの場合、初期のコラボレーションを振り返ってみると、このような例があった。彼らがアメリカ・ロサンゼルスに渡り、ヒップホップスクールのプログラムを受ける過程でウォーレン・Gに遭遇したことがある。これを機にその後、RMのシングル『P.D.D.』にウォーレン・Gがフィーチャリング・アーティストとして参加することになった。その過程でRMは、直接ロサンゼルスまで飛んでいき、彼とヒップホップについて語り合う時間を持ったが、これは韓国人ラッパーのRMにとって韓国ヒップホップの向こう側を考えさせられ、理解する重要なきっかけとなる。
最後に、話題を呼ぶだめの有名歌手同士のコラボレーションだ。「Me Against The Music」のブリトニー・スピアーズとマドンナのようなデュオの形もあれば、「Bang Bang」のジェシー・J、アリアナ・グランデ、ニッキー・ミナージュのようなポップスターの「アベンジャーズ」という印象を与える複数人による集まりもある。
BTSの最新のコラボレーション作「My Universe」は、コールドプレイとBTSの間の何かの共通認識に基づいてつくられた曲だ。コラボレーション自体はかねてから議論されていたが、準備を進める最中だった2021年初めに、ドイツのとあるラジオパーソナリティがBTSに対し人種差別発言をする中でコールドプレイを言及するということがあった。人種差別は、BTSとコールドプレイの両グループともはっきりと反対している価値だった。それだけに、ついに公開されたコラボレーション作品には、このような社会的文脈が加えられ、一曲の歌よりさらに大きい音楽となった。
では、これからBTSの歴代海外コラボレーション曲を一曲ずつ聴いてみよう。
THANH - 「Danger (Mo-Blue-Mix)」
「Danger」の作曲家の一人で、ベトナムのシンガーソングライターのタン・ブイ(Thanh Bùi)が編曲家とボーカルとして参加したリミックス。ベトナムは全国民の半分以上が30代未満の「若い」国で、K-POPといったユースカルチャーを消費する人口も多い。勢いに乗り始めたばかりのBTSにとっては、いい海外協業のスタート点となった。
Warren G (RM) - 「P.D.D.」
BTSは、2014年に放送されたMnet『アメリカンハッスルライフ』のロサンゼルスのヒップホップスクールでウエスト・コースト・ヒップホップに欠かせないGファンク(G-Funk)の代表格であるウォーレン・Gに会った。「P.D.D.」はその翌年の2015年、RMがロサンゼルスを再訪問し、ウォーレン・Gと一緒に制作した曲だ。スタジオで一緒にレコーディングし、インタビューを行う間、ウォーレン・GはRMのことを何度も褒め、励ました。ヒップホップをするアイドルとしてグループのアイデンティティに関する話がたびたびあった時期に、このようなサポートは大きな力になったことと考えられる。「P.D.D.」は、ミックステープ『RM』のリリースに先立ち、期待感を募らせる役割をも果たした。
Mandy Ventrice (RM) - 「Fantastic」
2015年、RMは「P.D.D.」に続き、映画『ファンタスティック・フォー』とコラボレーションした曲「Fantastic」を出した。話題性が大事とされるハリウッドのヒーローものは、時々このようなラップ・コラボレーション曲を企画する。エミネムをはじめとするアーティストたちが同名の映画のために出した「Venom」などがその例だ。この際、ボーカルとして参加したマンディー・ヴェントリスは、BTSの海外コラボレーションでは初の女性アーティストだった。
Wale (RM) - 「Change」
ワーレイとの縁は、Twitterで触発された。とあるファンが2016年11月、RMが練習生時代にワーレイのトラックにラップを歌った音源を載せたら、ワーレイがそれに対し「Collab???!」という引用ツイートを投稿。2人はその後、準備と交流を経て翌年3月に韓国で会い、「Change」のミュージックビデオを撮影した。このトラックは、無料ミックステープとして発売された。2人の社会批判的な視線を聴ける曲でもある。
Steve Aoki, Desiigner - 「MIC Drop (Steve Aoki Remix)」
アルバム『LOVE YOURSELF 承 'Her'』の発売から2か月後、DJのスティーヴ・アオキとラッパーのデザイナー(Desiigner)がフィーチャリングした「MIC Drop (Steve Aoki Remix)」がデジタルシングルとして公開された。BTSが2017年、BBMAの受賞者としてアメリカの土を踏んで以来、約1年ぶりのことだった。新リミックスでは歌詞の多くを英語に替えており、BTS側がアメリカ内の熱烈なファンダムからの人気を認知していることを示した。アメリカ市場を意識して発売された初めてのシングルとも言える。アメリカのARMYは贈り物のようなリミックスの発売に大反響を示し、それによってBTS史上初のビルボードHOT100での40位圏入り(最高ランキング28位)という結果を生んだ。
最初の1分余りをデザイナーのヴァースでぎっしり埋めた独特な構成は、BTSという外国のグループに馴染みのなかった人たちにとって彼らの音楽を聴くきっかけになってくれた。スティーヴ・アオキのリミックスによってさらにトレンディーなエレクトロ・トラップの印象を与えるようになったこの曲で、BTSは韓国の年末の授賞式やアメリカのテレビ番組で幾度となく印象的なステージをつくり上げた。2017年の『MAMA in Hong Kong』が代表的だ。
彼らの最初の出会いは、スティーヴ・アオキがBTSを先に招待したことから始まった。彼は音楽だけでなく、観客が求めるショーマンシップを備えたDJとして、そして大衆的な人気の流れをうまく読み取るプロデューサーとして有名だ。アメリカ音楽産業界では珍しく活発に活動しているアジア系の有名人でもある。彼が全世界でブームを巻き起こしている韓国人グループ・BTSに関心を示し、協業をオファーしたのはある意味、自然なことだった。BTSの歴史的な初アメリカシングルは、このようにアメリカ産業界でもマイノリティの性質を持つ人との協業で制作された。その後もBTSとスティーヴ・アオキは親交を深め、2曲のコラボレーション曲をさらに出した。今年7月には、リミックス10億回ストリーミングを記念し、スティーヴ・アオキが「BTS MIC Drop Celebration Megamix」(https://www.youtube.com/watch?v=3FNU-qKkW5s)を出した。
Fall Out Boy (RM) - 「Champion (Remix)」
フォール・アウト・ボーイ側からリミックスへのラップ・フィーチャリングのオファーを受け、実現されたケース。当事者のRMがV LIVEで明かしたところによると、彼がその年に先行してワーレイと発表したコラボレーション曲「Change」を聴いて連絡をくれたのではないかと推測しているという。このように、2017年はコラボレーションを重ねていくにつれて認知度が上がり、その結果、後を絶たず参加のオファーが入り始めた年だった。
Nicki Minaj - 「IDOL」
「LOVE YOURSELF」シリーズの最後を飾った「IDOL」は、ニッキー・ミナージュによるフィーチャリング・バージョンがデジタルシングルとして追加発売された。ニッキー・ミナージュは、代表的なフィーチャリングの猛者でもある。カラフルなビジュアル作業としても有名な彼女は、まさにフェスティバルのごとく彩り豊かな「IDOL」のミュージックビデオにもピッタリな存在感を放った(Vが披露した金色とピンク色半々の髪型は、ニッキー・ミナージュが出世作「Super Bass」で披露したスタイルでもある)。彼女の後ろを流れる、英語のラップ歌詞を韓国語で音読みしたスクリプトは、ニッキー・ミナージュ自身のアイデアだったという。
Steve Aoki - 「The Truth Untold」
「MIC Drop」のリミックスでBTSと阿吽の呼吸を誇ったスティーヴ・アオキは、翌年発売された次のアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』にも「The Truth Untold」で名前を載せた。最初、トラックリストが公開された時、多くの人たちはスティーヴ・アオキの名前を見て、この曲がEDMダンストラックだろうと予想したが、「The Truth Untold」はそんな期待を気持ちよく裏切るような、BTSとしては極めて稀な壮大なスケールのバラード曲だった。このような意外性も大衆音楽家のスティーヴ・アオキらしいところだと言える。この曲は、BTSの「LOVE YOURSELF」と「SPEAK YOURSELF」ツアーのセットリストに含まれ、多くの国々で歌われた。
HONNE (RM) - 「seoul」
RMがTwitterで2016年、イギリスのデュオ・ホンネの「Warm On A Cold Night」に触れると、ホンネがそれに関心を示し、そこから縁が始まったケースだ。2016年だとBTSがインターネットで全世界級のライジングスターとして徐々に浮上し始めた頃だったが、まだ英語圏ではメディアからの注目を集める前だった。ホンネは韓国から特に絶大な支持を得ているグループで、自然と韓国歌手のBTSにも興味を持つようになったと見られる。彼らは2018年、RMの2枚目のミックステープかつプレイリストの『mono.』の「seoul」にプロデューサーとして参加し、ついに長い交流の末に生み出したアウトプットを公開した。英語圏で足場を固め始めていたBTSにとってはタイミング上、いいサポートになった。
Steve Aoki - 「Waste It On Me」
BTSと最も多い協業曲を出した海外アーティストは、スティーヴ・アオキだ。彼らの3曲目のコラボレーション曲「Waste It On Me」は、2018年10月にデジタルシングルとして先行発売され、その後スティーヴ・アオキの『NEON FUTURE III』に収録された。コメディアン兼俳優のケン・チョンが主人公に扮した同曲のミュージックビデオは、スティーヴ・アオキ自身と彼の妹であるモデル兼女優のデブォン青木、ジミー・O・ヤン、韓国系女優のジェイミー・チャンなどが出演し、韓国系ミュージシャン兼ビジュアルアーティストのジョー・ハーンが監督を務めた。まるでアメリカエンターテインメント業界内のアジア人セレブ会かのようだ(Asian Representation)が躍進を遂げた元年のようなものだった。BTSの浮上は、このような流れと相まったか、もしくは重要な原動力の一つとして働いた。
Honne (RM) + BEKA - 「Crying Over You」
RMのミックステープにホンネが参加した後、助け合うようにホンネの「Crying Over You」のリミックスにも参加した。インタビューによると、『mono.』の「seoul」とほぼ同じ時期に制作したという。RMのラップ・ヴァースは曲の後半に配置され、最後のコーラスに先立って曲のペースに拍車をかける役割をする。
Halsey - 「Boy With Luv」
BTSがホールジーに初めて出会ったのは、彼らが2017年ビルボード・ミュージック・アワード(以下、BBMA)のトップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞するためにアメリカを訪れた時だった。すでにソーシャルメディアでブームを巻き起こしているBTSに興味を持つセレブは少なくなかった。しかし、ホールジーはインターネット文化に詳しく、ウェブ上におけるBTSのステータスと影響力をよく知っていた。お互いがお互いのファンを名乗る両者の出会いは、通常のアーティスト同士の出会いより特別だった。
親交は、アルバム『MAP OF THE SOUL : PERSONA』のタイトル曲「Boy With Luv」のコラボレーションに繋がった。2019年4月に公開された同曲のミュージックビデオに、ホールジーは予め覚えてきた振付をBTSと一緒に披露し、一つのフレームの中に溶け込んで登場する。その後、2019年のBBMAで合同ステージも披露した。
「Boy With Luv」は当時の韓国語曲としては珍しく、アメリカのラジオ・エアプレイの面で善戦した。そこには2016年、ザ・チェインスモーカーズにフィーチャリングした「Closer」や2018年、自身のソロヒット曲「Without Me」がラジオでとても愛されていたホールジーの役割が大きかった。全世界でブームを巻き起こしているボーイズグループと、トレンディーなボーカルのラジオ・フレンドリーなソロ女性歌手による無害なディスコ・ポップの合作は、他国の言語で歌われた曲では掴みにくいとされるレガシーメディアに好奇心を抱かせるに値するちょうどいいプロジェクトだった。そうやってBTSは、このコラボレーションを通じて一つの壁をまた越えることができた。一方のホールジーは、BTSとの協業によりアメリカを超えて国際的にファンダムを拡張することができたため、持ちつ持たれつだった。
この時期にホールジーは、複数のインタビューでBTSと彼らのファンダム・ARMYに頻繁に触れ、愛情を示した。特に、「アジア出身」の「ボーイ・バンド」であるBTSに対し、差別的だったり否定的な含みを持たせるインタビュアーを前では、積極的に誤解を正し、指摘した。普段からもホールジーは、自身のリベラルな政治観で有名なセレブだ(前のアメリカ大統領選挙の際は、バーニー・サンダース候補を公に支持し、インタビューシリーズも進行した)。アジア人に対する尊重に欠けた会話の場ではいつも直ちにその部分を指摘し、そういう姿は特にBTSのファンに強い印象を残した。いまだに多くのファンが彼女のことを「アワーガール(Our girl)」と呼んでいるのは、そのためだ。
Charli XCX - 「Dream Glow」 / Zara Larsson - 「A Brand New Day」 / Juice WRLD - 「All Night」
ネットマーブルによりリリースされた「BTS WORLD」は、BTSが長時間かけて撮影したゲームコンテンツであると同時に、華やかなサウンドトラックのラインナップとしても多くの関心が寄せられた。1週間に1曲ずつ、1か月で計4曲が公開され、その中の3曲で有名海外アーティストとのコラボレーションが行われた。イギリス出身のチャーリー・エックス・シー・エックス、スウェーデン出身のザラ・ラーソン、そして今は故人となったアメリカ出身のジュース・ワールドの3人は、いずれも注目の若手歌手だった。この3人の歌手は、それぞれのトラックで魅力を放ち、正式アルバムに近いクオリティを完成させることに一助した。
Lil Nas X - 「Old Town Road (Seoul Town Road Remix)」
「Old Town Road」は、インディーズ・ラッパーだったリル・ナズ・Xを今に至らせたスタート地点であり、2019年を風靡した最高の話題作だった。最もアメリカ的で白人的なジャンルと言われるカントリーと、不良かつクールなトラップのミックスという一味違った試みのおかげで、ビルボード・カントリー・チャートにランクインしては除外されるというハプニングさえ経験した曲だ。様々なアーティストとのリミックス・コラボレーションは、同曲の話題性をさらに高めた。RMは4曲の公式リミックスのうちの最後のトラック「Old Town Road (Seoul Town Road Remix)」に参加した。アジア出身グループであるBTSになかなかチャンスをくれなかったグラミーだったが、BTSはこのコラボレーションによってリル・ナズ・Xと一緒に歴史的な初のグラミー賞授賞式のステージを披露することができた。
Becky G (j-hope) - 「Chicken Noodle Soup」
J-HOPE個人のミックステープとして発売された「Chicken Noodle Soup」は、リメイク曲だ。2006年に発売されたウェブスターとYoung Bの原曲は、両腕を鶏の羽根のように羽ばたかせたり、ダブルダッチ(Double Dutch)のように速く動いたりするなどの面白い動作で大人気だった。今もそうだが、この時期に流行っていたヒップホップ・ダンスのほとんどは黒人コミュニティから作られたため、「Chicken Noodle Soup」のリメイク制作においては、自分のルーツを自然に出すと同時に、その歌とダンスのルーツにもリスペクトを送る解釈が大事だった。J-HOPEの「Chicken Noodle Soup」は、ラティネックス出身のミュージシャンであるベッキー・Gと一緒に手がけることで、そこに多様性のレイヤーをもう一層足すことに成功した。同曲は、韓国光州出身のストリート・ダンサーからスタートしたJ-HOPEによる韓国語のラップ、第3世代南米系女性アーティストとして刮目すべきキャリアを積んできたベッキー・Gによるスペイン語のラップ、そして英語のボーカル・ヴァースが交差する3か国語のコラボレーションだ。自ずとヒップホップで重視する出身地(Home)への愛と、一家を興した自己努力への誇りが滲む。同曲は、ヒップホップの発生国であるアメリカの外側からアメリカの内側に向けられた繊細な試みとして、多くの人たちに特に強い印象を残した。
Lauv - 「Make It Right」
エド・シーランが提供した曲「Make It Right」は、アルバムの曲として先に発売された後、後続してラウヴがフィーチャリングとして参加したリミックスが発売された。ラウヴとの縁は、彼がBTSのウェンブリー公演でバックステージに来てくれたことから始まり、コラボレーションする仲にまで発展した。ラウヴは、チル(chill)な音楽でSpotifyの全幅の支持を受ける新人アーティストだった。その影響がラジオなど既存の媒体にまで及び、ラウヴがフィーチャリングした「Make It Right」もそれまでと比べて優れたラジオ放送点数を獲得した。
Halsey (SUGA) - 「SUGA’s Interlude」
互恵に基づいた間柄らしく、「Boy With Luv」以降、ホールジーのアルバムにBTSがフィーチャリングをすることもあった。『Manic』の収録曲「SUGA’s Interlude」は、海外アーティストの曲に対するBTSのフィーチャリングとしては初めてSUGA一人で参加した。英語圏歌手のアルバムの収録曲に韓国語ラップが使われたことは特記に値する。最初、ホールジーから参加のオファーが来た時、SUGAはどうして英語で歌詞を書かない自分を選んだのかが気になったという。ホールジーは、SUGAのもう一つのエゴであるAgust Dのミックステープを印象深く聴いたとし、内面に集中する自己告白的な歌詞をこの曲にも書いてほしいと説明すると、SUGAはそれに納得し、曲に参加することになった。BTSの相次ぐ成功と非英語にオープンマインドな一部の英語圏アーティストが増えたことで、SUGAの韓国語ラップでのコラボレーションは、MAXのアルバムへの参加などに続いた。
Sia - 「ON」
『MAP OF THE SOUL : PERSONA』のタイトル曲「Boy With Luv」でホールジーからサポートを得たのであれば、『MAP OF THE SOUL : 7』のタイトル曲「ON」ではオーストラリア出身のシンガーソングライターのシーアに声を添えてもらった。協業の形からすると、ホールジーの方よりはオリジナル・バージョンにフィーチャリング・アーティストの声を載せたニッキー・ミナージュとの作業にもっと近かった。普段から番組出演を控えているシーアというアーティストの特性上、両者が会ってインタビューをするなどのことはなかった。「Boy With Luv」や「Make it Right」の時とは違い、「ON」はアメリカのラジオ番組でさほど流してもらえなかった。ラジオ・フレンドリーなポップス歌手との協業が必ずしもエアプレイの必勝の手ではないということをそうやって確認することができた。
Lauv - 「Who」
「Make it Right」のリミックスで協業したラウヴとはその後、彼の2020年のアルバム『How I’m Feeling』の収録曲「Who」でもう一度タッグを組んだ。このコラボレーションでは、BTSからJUNG KOOKとJIMINの2人が参加し、物憂げでありながらも激情的な曲を理想的に歌い上げた。JUNG KOOKとJIMINが繊細な表現に長けたR&Bシンガーであることを示した曲だ。
MAX (Agust D) - 「Burn It」
SUGAがもう一つのラップネーム・Agust Dとして出した2枚目のミックステープ『D-2』では、様々なアーティストがフィーチャリングに参加した。中でも目を引く名前は、海外歌手のMAXだった。SUGAは発売後のV LIVEで、この曲は最初からアメリカの歌手に歌ってもらいたいと思っていたと明かした。そうして探していた中、MAXと連絡が取れ、今の「Burn It」になった。SUGAは特に、MAXが韓国語の歌詞の読み方を教えてもらってコーラス・トラックをつくるなど、丹念に取り組んでくれたことについて多大な感謝の気持ちを表した。
Jawsh 685 and Jason Derulo - 「Savage Love (Laxed - Siren Beat) (Remix)」
「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」は、2010年代のヒット歌手にとどまっていたジェイソン・デルーロを復活させた曲であり、サモア-クック諸島系のジョーシュ685を世界的なプロデューサーに仲間入りさせた曲だ。その振付に対するTikTok上のバイラルに支えられ、ビルボードHOT100で上位を占めていた同曲は、BTSによるフィーチャリングが最後の切り札となり、ついにジョーシュ685にとってキャリア初の最上位曲となり、BTSにとって2番目のHOT100での1位曲となった。これは、BTSの変化したステータスを象徴的に表す出来事だった。
MAX (SUGA) - 「Blueberry Eyes」
SUGAは「Burn It」でタッグを組んだMAXのアルバム『Color Vision』の収録曲にもう一度韓国語ラップでフィーチャリングした。最初、MAX側では「New Life」という曲への参加を依頼したが、SUGAは自身がその曲にあまり似合いそうにないとし、一度断ったという。すると、MAXがアルバムの全曲を彼に送り、SUGAが直接選んで作業を始めた曲が「Blueberry Eyes」だ。SUGAとMAXの2人は、プライベートな時間にスポーツ試合を一緒に観戦したり、会って会話をするなど、すでに親交を深めておいた状態だったため、このようなコミュニケーションがより自然にできたという。MAXはミュージックビデオにSUGAのあだ名である猫を登場させたり、彼の韓国語ラップ・ヴァースを積極的に覚えてライブで歌うなど、大きな愛情を覗かせた。
Megan Thee Stallion - 「Butter (Remix)」
BTSは夏の締めくくりにミーガン・ジー・スタリオンのフィーチャリングを加えた「Butter」のリミックスを発表した。同曲は不思議にもレーベルによる広報ではなく、ミーガン・ジー・スタリオンと彼女のレーベルである1501サーティファイド・エンターテインメント(以下、1501)の法廷争いで先に知られた。ミーガン・ジー・スタリオンの主張によると、1501はミーガン・ジー・スタリオンを抜擢し、デビュー当初から管理してきたが、彼女の人気が高まるにつれ、アーティストの影響力を制御しようとしたという。まだ訴訟が進行中のため明言はできないが、確かなのは1501がミーガン・ジー・スタリオンの音源発売に歯止めをかけ、ミーガン・ジー・スタリオンは裁判所に緊急救済を要請し、なんとか曲を発表してきたということだ。ヒット曲「Savage」が収録されたアルバム『Suga』もこのような過程を経て世に出された。「Butter」も発売直前に救済要請が認められ、予定されていた日に発売することができ、BTSはこのリミックスでビルボードHOT100の1位をさらに1週間追加することができた。全世界のARMYがこの訴訟に関心を持ち、情報開示された法的文書にも目を通したが、それによってBTS側が協業の際に創作者を尊重する契約を締結しようと努めた痕跡が明るみに出た。
最近では、BTSが先日、大統領特使としてニューヨークの国連本部を訪れた後、ミーガン・ジー・スタリオンとも簡単な会合を持った映像が公開された。J-HOPE、JIMIN、JUNG KOOKがミーガン・ジー・スタリオンのラップに合わせて踊る動画。
Coldplay - 「My Universe」
BTSはかねてから好きなアーティストとしてコールドプレイをよく言及してきた。ポスト・ブリットポップの期待株としてデビューしたコールドプレイは、時間が経つにつれて次第にアリーナ向けのバンドへと成長し、音楽についてはロックだけでなく様々なジャンルを吸収し、大規模な観客と一緒に歌える定番曲を多数つくってきた。世界的に高い人気を集めるようになり、段々ホールからアリーナへ、アリーナからスタジアムへと公演会場の規模が大きくなっていったBTSにとっては、参考に値するような、影響力のあるアーティストだったはずだ。両グループの間でコラボレーションの話はとっくにやり取りされていた。そこでティーザーを公開するかのように、BTSは自身の名前を掲げた2021年『MTV Unplugged』でコールドプレイの「Fix You」をカバーした。
多くの人たちがステージにポジティブな反応を示したが、そうでない人たちもいた。特に、「ドイツの ラジオパーソナリティによる人種差別発言事件」は象徴的なものだった。コールドプレイのファンを名乗る同パーソナリティは、「Fix You」のステージに対する酷評をはじめ、韓国人グループのBTSに対する差別発言を憚らなかった。新型コロナウイルスによるパンデミック以降、ヨーロッパやアメリカ大陸を中心に深刻化しているアジア人に対する嫌悪ムードの中、全世界級の人気歌手であるBTSさえも嫌悪から逃れられないということを示したこの事件は、多くの人たちに憤りを抱かせた。ドイツをはじめとする全世界のARMYが彼を批判し、謝罪を求め、そのラリーが続いた結果、それまで一緒に協業してきたアーティストたち、スティーヴ・アオキ、「Euphoria」などを作曲したDJスウィベル、ホールジー、ラウヴなどが批判の声を上げた。BTSが被った差別発言の被害に関する報道に及び腰だった『ビルボード』誌なども、他のアーティストたちの連帯の末に記事を出すようになった。
BTSは前述した事件がある前に、多数のアジア人女性が犠牲となったアトランタ連続銃撃事件に哀悼の意を表し、憤りを覚えるとの立場を表明していた。コールドプレイも1996年にデビューして以来、何度も人種差別に反対するという立場を明らかにしてきた。彼らの協業曲「My Universe」は、「ドイツのラジオパーソナリティによる人種差別発言事件」の前から議論されてきた件だったが、結果的にはこのような流れによって「And they said that we can't be together / Because, because we come from different sides」という歌詞がより大きな響きを持つようになった。音楽的に目指しているところが似ている両バンドの出会いだったからこそ、アウトプットがより自然なものになったと言える。「My Universe」はコールドプレイにバンドキャリア史上初めてHOT100へのホットショット・デビューというプレゼントを贈り、今なお順調だ。
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