
『なぜオ・スジェなのか』(SBS)
チェ・ジウン(作家):信じていた人に裏切られ、奈落の底に落ちた主人公が、再び戻ってきて目標に一歩ずつ近づいていくストーリーが、おもしろくないわけがあるだろうか。それが学校や出身地のつてもない女性である上に、家族と言えば、自分から金をせびり取ることしか考えていない母親と、無能な兄たちがすべての「K-ドーター(Daughter、親や家族の面倒を見なければならないという自他の意識に苦しめられる韓国の娘)」であればなおさらだ。かつては正義感に溢れ純粋だった弁護士オ・スジェ(ソ・ヒョンジン)は、男性派閥からの妨害に遭い利用された末に生まれ変わり、勝つためなら手段も方法も選ばない勝負師となる。「私たちに不利な証人は信頼性を崩壊させ、私たちに不利な裁判は裁判そのものが成立しないようにする」というのが彼女の信条だ。だが『なぜオ・スジェなのか』の決定的な快感は、正義を追求しない女性が、自分から搾取し無視していた権力者男性たちの裏をかき、結果的に正義を具現化するというアイロニーから来る。韓国社会の性差別と性暴力に関する歪曲された認識などにきっちりと照準を合わせ風刺する脚本は、キム・ヘスのドラマ『ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-』に続き、アンチヒーロー型の女性弁護士が活躍する姿をエキサイティング描く。何よりソ・ヒョンジンの吸引力ある演技が、オ・スジェの疾走から目を離せなくする。
「Swimming pool」 - Ohelen
カン・イルグォン(ポピュラー音楽評論家):かつてポップスは大衆に馴染みやすいメロディ、R&Bはソウルフルなムードで代弁できる音楽だった。だがオルタナティブ・ポップとオルタナティブ・R&Bといったジャンルが出てくるにつれ、そのような公式は崩れた。既存の作法とジャンル的特性に反して、新たなスタイルを確立した2つのジャンルは、プロダクティングとボーカルの面で共通分母が多い。それ故しばしば境界が曖昧になったりもする。シンガーソングライターOhelenの音楽のようにだ。前衛的なポップスとR&Bの境界に立った彼女の音楽からは、脱形式的で即興的な味が滲み出る。完成されたインストゥルメンタルを聴くや否や本能的にメロディを作り出して口ずさんだボーカルを、そっくりそのまま持ってきたようだ。ニューシングル「Swimming pool」は、まるでデモ・バージョンを聴いている感じすらする。それが本当に興味深い。独特な歌声と唱法、そして卓越したプロダクティングが一つになり、未完の美しさのある、完成された作品になった。矛盾はOhelenの音楽が持つもう一つの魅力だ。「ここは少し暖かくてあそこは少し深いということも知っている 今は」という歌詞がさらに濃い余韻を残す。
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