
NoW
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』、2022年の韓国を語るドラマ
今あなたを待っているドラマ、映画、本、音楽
2022.07.15
Credit
文. チェ・ジウン(作家)、イム・スヨン(映画専門誌『シネ21』記者)、キム・ギョウル(作家)、キム・ユンハ(ポピュラー音楽評論家)
デザイン. チョン・ユリム
写真. ENA
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(ENA、Netflix)
チェ・ジウン(作家):自閉スペクトラム症のある「天才」弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)のキャラクター設定は、諸刃の剣のようだ。障害のある主人公を通して、健常者たちの差別的な認識を打ち崩すこともできるが、障害を「克服」できるほど特別な能力を持つ人だけが社会で認められ得るという認識を与えるとしたら、それはまた別の差別を助長するリスクがあるからだ。だが『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、難しい課題を誠実に突破していくドラマだ。ウ・ヨンウは、重度の自閉症のある依頼人キム・ジョンフン(ムン・サンフン)が、自分とさまざまな面で異なるという事実を知っているが、健常者たちは好意からであれ敵意からであれ、二人を「同じ」障害者として扱う。ジョンフンの母は、息子をはじめとする多くの自閉症の人とちがい、学力水準が高く、自立した生活が可能なウ・ヨンウを見て、複雑な心境を吐露する。自閉症の人に対する大衆の無知と敵意に接したウ・ヨンウは言う。「80年前には自閉症は生きる価値のない病でした。今も数百人の人が『医大生が死んで自閉症の人が生きていたら、国家的損失』というコメントに『いいね』を押します。それが私たちが背負ったこの障害の重さです」。その瞬間、視聴者も新たな課題と向き合う。その重さを前にして、自分はどんな人間なのか。
RRR(Netflix 日本未配信)
イム・スヨン(映画専門誌『シネ21』記者):インド映画には、インドだけが作ることのできる豪快な迫力がある。虎を素手で退治するという英雄神話的な設定も、インド映画特有の楽しい雰囲気に身を任せていると自然と納得できる。現在韓国のNetflixで鑑賞できる『RRR』は、1920年代のイギリス帝国主義の支配を受けているインド帝国を背景に、2人の独立運動家の友情から革命につながる過程を、エネルギッシュに描いたアクション・ミュージカルだ。実在の人物からインスピレーションを得た2人の独立運動家の登場人物、コマラム・ビーム(ラーマ・ラオ・ジュニア)とナム・ラマ・ラジュ(ラーム・チャラン)のバディ・アクションと、要所要所に登場する歌と踊りに五感を奪われているうちに、185分という上映時間が90分であるかのように過ぎていく。もともとヒンディー語ではなくテルグ語(インド東南部で使用されている言語)で作られた作品であるため、ボリウッドではなく「トリウッド」と呼ぶ方がより正確な表現であり、1930年代トリウッドがインド独立運動に重要な役割を果たしたという点を思い起こす時、『RRR』が成し遂げたことは、楽しい娯楽映画を超え、歴史的脈絡を持つ。
『ノーランド』 - チョン・ソンラン
キム・ギョウル(作家):韓国SFの全盛期が続いている。ここ数年間、多くのSF作家が注目され、がっちりとした読者層を形成しているのだが、それは着実で豊富なストーリーテリングと、すっきりとまとめられた文体で武装した作家たちの力量のおかげだ。その主役の一人である作家チョン・ソンランが2作目の短編集『ノーランド』を出版した。長編小説『千個の青』、『ナイン』、短編集『ある物質の愛』などを通して、希望に溢れる世界を見せたのとは異なり、今回の本でチョン・ソンランは、人間が直面する死という運命の不条理をまっすぐに見つめる。ホラー、ミステリー、ゾンビもの、純文学までも網羅した作品は、戦争や宗教、暴力のような問題を扱うことを躊躇わない。そしてその力強いテーマをしっかりと束ねるのは、作家の整然とした描写だ。彼女は、おそらく死に向かって旅立つ人、そこに寄り添う人、旅立ってまた戻ってきた人、旅立ちに行く人について、とても多くの問いを投げかけているようだ。長い間の問いが蓄積され誕生した物語は、どれも皆長い余韻を残す。
「dislike」 - saeneok
キム・ユンハ(ポピュラー音楽評論家):「か細い恋をしようと 僕を追ってついて来ないでください/僕は与えられるものがありません 同じ思いを分かち合うこともできません」。すぐにでも消え入りそうな声は、それにしてはかなりきっぱりと歌う。そんなに自分に会いたいなら、別の言い訳を持ってくるようにと、なぜかわからない悲しみに向き合ってもつらくないと思うだろうと。陽炎のように立ち上る、繰り返されるギター・リフは、そうやってはっきりとした信号を送るつらい言葉を精一杯包み込む。嫌になってしまった日々、嫌気を感じるあなたが間違っているわけではないと。ただそうなってしまっただけだと。世の中にはそんな人たちがとても多いと。
1stアルバム『tinge』でデビューしたシンガーソングライターsaeneokは、まるで世の中のすべての秘密を予め知ってしまった人のように歌う。ギター・ポップとドリーム・ポップのどこかで夢うつつのように鳴るバンドの演奏は、そんな彼の歌に描かれた物語に丁寧に肉づけをする。すでにすっかり遠くなった気持ちに合わせて空気中に散らばった、互いに没頭していた熱い頃が、急に繋がりぼんやりした形を浮かべる。努力をする。それでも消えるものは結局消えるだろう。すべてのことが、嫌気がさしていた頃さえも、懐かしくなるだろう。心がつらいある日の夜、この歌がふと思い浮かぶだろう。
Copyright © Weverse Magazine. All rights reserved.
無断転載及び再配布禁止
無断転載及び再配布禁止