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統計庁によると、2021年の韓国人の婚姻件数は19万3,000件で、2020年と比べ2万1,000件、9.8%減少している。1970年代に統計を始めて以降最も低い数値だ。このうち30代前半の男性、20代後半の女性の婚姻件数が最も多く減少している。正確な統計を出すには難しい部分だが、恋愛をする人たちの数字も減っている可能性が高い。恋愛番組の人気に「代理満足」という単語が直観的に思い浮かべられる理由だ。『脱出おひとり島』は、華やかな見た目の出演者たちと、真冬に暖かいリゾート地の風景を通して目を惹きつけ、『恋するアプリ Love Alarm チャ!チャ!チャ!』は、人気ウェブ漫画『恋するアプリ Love Alarm』で好きな人が半径10m以内に近づくとアラームが鳴るアプリ「Love Alarm」と、その作品に登場する恋愛番組『チャ!チャ!チャ!』の設定を引用し、まるでウェブ漫画の中のキャラクターたちの恋愛話を現実に移したような感じを与える。『乗り換え恋愛 2』は、そもそも毎回オープニングで出演者たちの名前と顔を大きく紹介して音楽をつけており、まるでドラマのオープニングのような演出をしている。恋愛や結婚が容易ではない時代に、恋愛番組を通してファンタジーに近い他人の恋愛過程を見ることにより、代理満足を提供しているとも言える。
だが恋愛や結婚がそうであるように、恋愛番組の時代が到来した実際の理由には、複雑な現実の背景が伴う。結婚情報会社カヨンが運営するデートアプリ「マッチコリア」は、コロナの感染が本格的に広がり始めた2020年1月と比べ、6か月の間に加入者数が2倍以上に増えた(「韓国経済」紙)。結婚情報会社デュオがコロナ発生の最初の年2020年、未婚の男女500人を対象に実施した「コロナ時代の出会い」に関するアンケート調査では、「コロナ以降新たな異性と出会うことが難しくなった」という答えが全体の回答者の53%で、「コロナ以降異性との出会いを模索した経験」がある人たち(29.8%)の出会いの経路は、「周りの人の紹介によるセッティング」、「同好会、グループの活動」、「結婚情報会社、マッチングアプリの利用」などだった。結婚や恋愛の数字そのものは減っているが、そうしようという意志のある人々は、より積極的に誰かを紹介してもらえるサービスを利用している。パク・スギョン代表によると、そのため結婚情報業者は近頃好景気を迎えているという。「過去、結婚件数が30万件と仮定した時、結婚情報業者を利用する比率が10%だったとしたら、結婚件数が20万件に減少した今、むしろ結婚情報業者の利用率が20%に上昇したような傾向」だからだ。韓国で恋愛が、いわゆる「自然な出会いを求める」比重が以前より減り、「人為的な出会いを求める」人が増えたのだとも言える。結婚や恋愛が減った時代に、誰かに出会うことはその分慎重になり、パンデミックは人に出会う方法を変えた。
つまり恋愛番組は、放送コンテンツという点を除けば、恋愛または結婚を望む多数の出演者たちが集まった「人為的な出会いを求める」イベントだ。『私はSOLO』の演出ナム・ギュホンPDは、『私はSOLO』の演出の仕方について、「結局限定された空間で短い時間に起こることを見せること」だと語る。その過程で恋愛という最もプライベートな領域を捉えて伝える形式は、それ自体で今のバラエティ番組に対する論争的な性格を持つ。恋愛番組の出演者たちは、脚本通りに動くドラマの出演者ではなく、出演者たちは短期間に誰かを選択したり選択される過程で、必然的に葛藤を経験し、強い圧迫感を感じるかもしれない。それについてナム・ギュホンPDは「人々が関係を築きながら、さまざまな側面で繰り広げられる日常のできごとを歪曲せずに反映しようとしています。そうしない方がある面ではもっとリスクがあると思います。それもまた恋愛を通して見える感情と行動なので、愛情を目的とした番組の中で重要な部分」だと話す。ナム・ギュホンPDの言葉を証明するかのように、『私はSOLO』の出演者たちは「愛情を目的に」何であれ遠慮することなく態度に見せる。出演者たちは合宿2日目に、職業、年俸、住んでいる地域、伴侶動物の有無など、自分の生活環境についての情報を一気に公開する。場合によっては現在財テクをどのように行っているか、家が持ち家なのか借家なのかについても話す。ナム・ギュホンPDは出演者の選定基準について、「魅力。キャラクター、そしてしっかりとした身元。不透明ではだめですね」と言う。制作陣の検証を通して信頼できる人たちが集まり、一定期間集中的にともに過ごし、恋愛の可能性を探る。パク・スギョン代表は最近の20〜30代の会員たちが結婚情報会社を利用する理由について、「この頃の青年世代は子どもの頃から専門家たちに助けを受けた経験が多いので、人生で一番重要な結婚もコンサルティングを受けるという考えで、費用に対して得るものが多いというコスパの側面で、結婚情報会社を利用すると考えているようです」と話し、「なにぶん結婚は必須ではなく、良ければする選択の時代だからか、誰とでもするという考えはみじんもないと思います。自分が望むものがすべて備わっている人であってこそ、結婚する気持ちが生まれる、そう話していますから」と、最近の自社の会員たちの結婚観について語る。結婚はもちろん、恋愛も相手について検討すべきことが多く、その分その過程に長い時間がかかる。恋愛番組はその過程をとても圧縮してみせる、「人為的な出会いを求める」現場だ。視聴者たちは恋愛番組を通して、だんだんしづらくなっている恋愛や結婚についてのファンタジーを満足させると同時に、あらゆる条件と感情を確認する至難の過程を経ても、容易に成就されない現実を見ることになる。『私はSOLO』で、良い職場や高所得を挙げる出演者も、人気を得られず、デートができないこともあり、付き合いたい人を見つけられず、「選択をしません」と言うことも多い。
『乗り換え恋愛 2』は、『私はSOLO』と正反対にあるように見える。『乗り換え恋愛 2』の出演者たちは大邸宅で自身の元恋人「X」と長い時間日常をともにする。その間にやはり過去の恋人と一緒に出ている他の出演者たちのうち、誰かに好感を示すこともある。さらに大部分の出演者たちは、多くの人たちの目を引くようなルックスまで備えている。『乗り換え恋愛』の演出イ・ジンジュPDは、「fol:in」誌で番組企画の背景について、「以前の恋愛」を通して人々を知っていき、自分と合った恋愛の相手を見つけるよう構築した「仮想の世界」と語っている。それだけに『乗り換え恋愛』は、現実では起こりにくい設定を通して、出演者たちが互いの感情にのみ集中できるようにする。しかし、『乗り換え恋愛 2』の初回で出演者たちが互いに会うや否やまず聞くのはMBTIだ。そして回を重ねるごとに出演者たちの職業や年齢など、『乗り換え恋愛 2』が作った「仮想の世界」外の条件が一つ、二つ公開される。年齢が公開された後、呼び方が変わったりため口になるように、この条件は出演者たちの感情や行動に変化を起こす。出演者たちが結婚を前提とした出会いを望む『私はSOLO』が、信じられる条件からまず公開し、互いの感情を確認していくとしたら、前の恋人との感情を抱いた状態でやってきて、新たな人に対する感情まで生まれたりする『乗り換え恋愛 2』は、序盤には相手のルックス、スタイル、言動などを通して感情を交流した後、現実的な条件もまた公開させる。ところがルックス、スタイル、MBTI、年齢、職業、さらには性格まで気に入っても、『乗り換え恋愛 2』の出演者たちはなかなかカップルになることが難しい。「X」と呼ばれる前の恋人の存在のためだ。「X」の正体を互いに隠した状況で、出演者は誰かに感情を寄せていても、相手が「X」にまだ気があるかもしれないという点が頭にある。反対に自分もまた新たな人に気持ちが向きながらも、「X」に揺れてもいる。すべてが満足でも、相手の、さらには自分の気持ちもわからない。
ナム・ギュホンPDが『私はSOLO』に対して、「今この時点で韓国人の恋愛を最も正確に見せる番組。見方によっては、韓国人の恋愛、そして恋愛を通して見た韓国人の姿、特に男女のある関係や行動や感情について見たいなら、『私はSOLO』を通してとても正確に見ることができる」と話すのには理由があるように見える。『私はSOLO』も『乗り換え恋愛 2』も、今の韓国の恋愛番組は、誰かに出会うことがどれほど多くのことを考えなければならなくて、至難の過程を経なければならないのかを見せる。だからこそその過程を圧縮して、代わりに見せてくれる恋愛番組は、「代理満足」のできるファンタジーになるが、その過程で人々が互いに出会い、好きになることがどれほど複雑で難しいことか、それ故に次第に「人為的な出会い」を求め、可能性を高めようとする現実を見ることができる。『私はSOLO』が、結婚を望む人々を通して、結婚が相手の年齢、職業、収入などを見ないわけにはいかず、その中でちょっとした食事の習慣や「遠距離恋愛」が可能か否かまで把握しなければならない息苦しい過程であることを、美辞麗句なしに見せるとしたら、『乗り換え恋愛 2』は、ファンタジー的な設定と雰囲気の中で、恋愛が今の青春世代に、心理的にもどれほど多くの問題を解決しなければならないかを見せる。
『乗り換え恋愛 2』の制作陣は、出演者たちが集まった後、各自の前の恋人が作成した「私のX紹介書」を読むことで自己紹介に代えさせ、自分に関心があるというメッセージを送った人が「X」なのかちがうのかを教えながら、気持ちを揺らし続ける。『乗り換え恋愛 2』で出演者たちが誰の「X」だったのかを明かすたびに、好感を抱いた理由、恋愛過程、別れた理由についてのインタビューが流される。インタビューの間には二人の幸せだった時間が盛り込まれた記録も公開される。他の恋愛番組は、初めて出会った人たちが関係を結ぶ過程を見せるが、『乗り換え恋愛 2』は、新たな出会いの過程を見せると同時に過去の恋愛を通して積み重ねられた出演者間の物語も同時に進行する。好きで、親しくなって、ある程度検証されたけれど、終わった恋愛がある。また一方では、やはり好きで、同時に新しく、でもどうなるかわからない恋愛がある。『乗り換え恋愛 2』は「X」の存在を通して、リアリティー番組の中でドラマのような劇的な事件を起こし、「X」が誰なのか当てる推理、「X」が明らかになった後には、彼らの気持ちがどう変化するかはらはらさせ、見守らせる心理スリラー的な要素を同時に備えている。『私はSOLO』が2022年のドキュメンタリーだとしたら、『乗り換え恋愛 2』はノンフィクションとして作った2022年最高のフィクションの一つだと言えるほどだ。そしてそのベースには、恋愛を互いにスタートすることがただ単に新たな関係の始まりではなく、自身の過去から抱えていた心理的な重圧、または問題の克服だという事実がある。恋愛を一度するたびに、どれほど多くのことと感情の消耗と至難の時間が続くのかを既にわかっていながらも、新たな相手に出会わなければならない。またはその時間をともにした相手と再スタートする決心をしたり、気持ちとは異なり、その慣れ親しんだ相手に揺れたりもする。『乗り換え恋愛 2』で、「X」であれ新たな人であれ、恋愛のスタートを妨げるのは他の誰よりも自分自身の気持ちだ。「人為的な出会い」を通して、新たな恋愛の相手を求め、良い条件と気に入る性格を備えた人を求める。しかし結局最後の瞬間には、回り回って自分の気持ちが何なのかを知らなければならない。多くの人々が、恋愛ではなく恋愛番組を通して恋愛について学び語ろうとする理由かもしれない。パンデミック以降の恋愛は、より複雑でより難しい。そして恋愛をしなくても、恋愛について語ることのできる恋愛番組はとても多い。
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