FEATURE
プレイリスト、音楽のすべてになる
ストリーミング時代、音楽を聴く基準となったプレイリスト
2023.02.13
Credit
文. ソ・ソンドク(ポピュラー音楽評論家)
写真. Spotify
ストリーミングの重要性は強調するまでもない。主な音楽の消費経路という表現は謙遜に近い。ストリーミングは今、すべてのアーティストとレーベルの最も重要な収益源だ。IFPI(国際レコード産業連盟)の2022年年間報告書によると、ストリーミングはグローバル音楽産業の売り上げの65%を占めている。アメリカ市場だけを見ると、ストリーミングの比重は84%に達する。全世界の音盤産業の売り上げは、デジタル音源の登場とともに2001年の240億ドルから2014年の142億ドルにまで減少した。だがストリーミングが浮上して急速に回復した売り上げは、2021年に259ドルを記録し、新たな頂点に達した。音源ダウンロードは一度もCDなどの実物音盤市場を圧倒したことはない。2021年のストリーミング収益は実物音盤市場の3倍を超える。
ストリーミングは音盤産業と音楽消費を根本から変えた。過去、音楽に対する支出がCDなどの音盤購入と同じ意味だった頃のことを考えてみよう。ある音楽について知ることと、それを消費することは分離されていた。ラジオやDJは、新たな音楽を選別し、似た嗜好を分類する基準だった。音盤の流通はまた別の種類の産業だった。あなたは音盤を購入し、その音盤はあなたの音楽ライブラリーを形成した。デジタル音源もライブラリーという概念を変えることはできなかった。「iPodはあなたの音楽ライブラリーすべてをポケットに入れられる」と強調した。今はどうだろうか。無料の広告モデルでも有料のサブスクリプションエコノミーでも、個別の支出という敷居はない。あなたのライブラリーは意味がない。あなたは1億曲以上をいつでも聴くことができる。すべての鑑賞行為が消費として測定され、売り上げに繋がる。そのすべてがSpotify、Apple Musicなどのストリーミング・プラットフォームの中で行われる。ストリーミングはMP3の延長線ではない。
プレイリストは音楽の発見と消費を統合するサービスの要だ。すべての消費者は、素速く手軽に、新しく興味深い、そして同時に自分の好みにぴったり合う音楽を発見したがる。完璧な世の中であれば、私たちは「Hey Siri、私が好きそうな新しい歌をかけて」と言うだろう。現在私たちは、Spotifyのアルゴリズムが生成したディスカバー・ウィークリー(Discover Weekly)とリリース・レーダー(Release Radar)に始まる、さまざまなパーソナライズ化されたプレイリストを持っている。ストリーミング・サービスはあなたのすべての鑑賞活動を測定している。どんな歌を最後まで聴くのか、途中で止めるのか、リピートして再生するのか、「いいね」を押して他の人と共有するのかを記録する。サービスがあなたの好みを発見する可能性は、次第に高くなっている。しかしアルゴリズム以前に、その出発点には人が自分の手で作る(editorial)プレイリストがある。Spotifyのニュー・ミュージック・フライデー(New Music Friday)、あるいはApple Musicのニュー・ミュージック・デイリー(New Music Daily)のような新曲紹介から、各種ジャンル、雰囲気、活動に合うプレイリストが、1次的な選択、分類、評価をする。いわゆるストリーミング露出戦略がスタートする場所だ。
ポップス・ジャンルを例に上げると、ニュー・ミュージック・フライデー(New Music Friday)、またはポップ・ライジング(Pop Rising)を経て、トゥデイズ・トップ・ヒッツ(Today’s Top Hits)の再生リストに至るのは、一種の公式的なヒット経路だ。個人的に韓国以外の市場でK-POPの存在を最もはっきりと感じたきっかけは、ビルボード・チャートの成績ではなく、いつだったかK-POPが初めてニュー・ミュージック・フライデー(New Music Friday)の1番トラックとカバーを飾った瞬間だ。ニュー・ミュージック・フライデー(New Music Friday)には400万以上のフォロワーがいて、トゥデイズ・トップ・ヒッツ(Today’s Top Hits)は3,300万だ。ヒップホップ・ジャンルのラップ・キャビア(Rap Caviar)は1,500万だ。公式プレイリストが誠実な音楽消費者数百、数千万人に一度に露出される機会になる理由だ。アルゴリズムもデータが蓄積されて初めて祝福が与えられる。
もし人気アーティストであれば、どんな市場であれ露出の機会を得る。だが新しいアーティストや新しい音楽であれば、少し異なる戦略が必要だ。例えば、全体のジャンルを網羅するニュー・ミュージック・フライデー(New Music Friday)のようなプレイリストよりは、個別のジャンルのプレイリストを狙う方が易しい。新たに登場するニッチなジャンルに完全に合致するスタイルであれば、小さくてもより確実な機会を得ることができる。もう一歩進んで、さまざまなスタイルのリミックスは、より多くのジャンル/雰囲気のプレイリストに搭載されるようになる。近頃アルバムの発売に先立ち、長期間こつこつと新曲を公開することも、ストリーミング市場への最適化の一環だ。例えばピンクパンサレスは、そのすべての過程を経てキャリアのターニングポイントに至った、一番最近の事例だ。あなたは近いうちにあらゆるところで彼女を見かけるだろう。
Spotifyでさえ、最初からプレイリストがそのように重要な存在になろうとは思っていなかった。初期のSpotifyにおいてプレイリストは、ユーザー間で好みを共有し、薦め合うツールだった。2010年以前のインターネット・サービスで最も重要なキーワードが「共有」だったことと同じだ。しかし今やプレイリストは、単純に市場への露出ではなく、もっとずっと多くのことを成し遂げている。ロレム(Lorem)はZ世代の嗜好を象徴する存在になった。イコール(EQUAL)やグロー(GLOW)は、女性アーティストや性的少数者のコミュニティに対する音楽業界の関心を代弁している。K-POPでもよく聞く用語になったハイパーポップ(Hyperpop)は、Spotifyの再生リストとしてその名前と存在を確立した。ハイパーポップは代表的なケースに過ぎない。Spotifyは地域、時代、スタイルによって、いわゆる「マイクロジャンル」に分類しており、それは約6,000種に及ぶ。そのうちほとんどは別途のプレイリストを持っていない。だがSpotifyの検索バーでハイパーポップを検索してみるとわかるだろう。Spotifyはすぐに、あなただけのハイパーポップ・ラップ(Hyperpop Rap)、ハイパーポップ・アップビート(Hyperpop Upbeat)、アングリー・ハイパーポップ(Angry Hyperpop)といったマイクロジャンル・プレイリストを作ることができる。
それは不必要に、とりわけ拘っているわけではない。プレイリストが産業的露出のための売り場ではなく、私たちが音楽を楽しむすべての方法を代弁している証拠だ。Spotify以外でも同様だ。例えばTIDALのプレイリスト、クラシカル・ジャズ(Classical Jazz)を見てみよう。アメリカの古典音楽としてのジャズが、ヨーロッパのクラシックと交流する地点をどのように捉え、一つの独立した流れとして認識するか。百語の文章より聴いた方が早い。今私たちはシングルやアルバムを聴かない。プレイリストを聴く。プレイリストが音楽だ。
Copyright © Weverse Magazine. All rights reserved.
無断転載及び再配布禁止
無断転載及び再配布禁止