NoW
ナ・ヨンソクの「ペラペラ」
今週のバラエティ、音楽、本、映画
2023.06.23
Credit
文. ユン・ヘイン、 ランディ・ソ(ポピュラー音楽解説者)、キム・ギョウル(作家)、イム・スヨン(映画専門誌『シネ21』記者)
デザイン. チョン・ユリム
写真. チャンネル十五夜
『知り合いの兄さんとペラペラ』(チャンネル十五夜)
ユン・ヘイン:「5分見逃したって、特に残念でもない感じ」これは、数多くの大ヒットバラエティを生み出したナ・ヨンソクPDが、(ウェブトゥーン作家だったが、今では)人気ストリーマーの沈着マン(イ・マルニョン)から教えてもらった最新の「YouTubeの核心的価値」だ。多くの人材や資本を投入して、毎分毎秒、精魂を込めて加工したテレビ時代のバラエティとは異なり、皿洗いをしながら少々見逃したっていい、うっすら面白いYouTubeの世界がある。
ナ・ヨンソクPDは、彼が産業スパイさながらに入手したこの原理を、YouTubeチャンネル『チャンネル十五夜』に適用した。『🤐ナ・ヨンソクのペラペラ』やライブストリーミングも行う『スタッフです』は、最低限のカメラしか使わず、いかなる演出や視覚エフェクト、華麗な編集も見当たらない。例えば『🤐ナ・ヨンソクのペラペラ』は、長きに渡ってバラエティ番組でタッグを組んできた俳優イ・ソジンを迎え、食事をしながら話をする。イ・ソジンは、電気代を異常に節約する生活習慣、遊園地ではふさわしい服装に着替えるのが「マナー」だという独自の哲学(?)、または体の老化、すでにある程度知られている個人史などを淡々と話すだけなのだが、その過程で、俳優という彼の職業の磨き抜かれたイメージとぶつかり合い、奇妙な笑いの磁場が発生する。この笑いの基盤には、ゲストとの親交をうまく生かしてエピソードを引き出しつつ、沈着マンのYouTubeコンサルティングをフル活用したナ・ヨンソクPDの進行センスがある。『スタッフです』もまた、バラエティ番組のPDや放送作家というゲストの職業的特性に基づき、キーワードだけ聞いても興味をそそられる「財閥インターンエピソード」、「住職エピソード」といった放送業界特有の「笑えるけど悲しい」エピソードが続出する。皮肉にも、ライブストリーミングと編集版のどちらも、5分であっても見逃せない面白さを保障してくれている。
fromis_9 - 「Attitude」
ランディ・ソ(ポピュラー音楽解説者):fromis_9の音楽は「巧みなポップ」だ。前衛的だったり実験的だというよりは、耳馴染みのよいメロディーでポップの真髄に近づく、モノクロの都市をしばし映画のように彩る美しさがある。待ちに待った初のフルアルバム『Unlock My World』のタイトル曲は、彼女たちの基調を受け継ぐ「#menow」だったが、個人的には音楽番組で合わせて披露した収録曲「Attitude」がはるかに好みだった。ここ数年間、fromis_9はカムバックのたびに「Escape Room」や「Rewind」といった、いわゆる「ダークな」収録曲のステージを一緒に披露してきた。「Attitude」はこの路線の完成形であり、fromis_9が進む未来を示す一つの指標とも言えそうだ。ミラ・ジョボヴィッチの表情を彷彿とさせるCHAE YOUNGの強烈な歌い出し、メロウなグルーヴでクールな雰囲気を盛り上げてくれるSEO YEONのプレコーラス、そしてマイナーナインで冷たく着地するサビに、メンバーたちの無表情なボーカルがスタイリッシュに調和する。都市の日常を鮮やかに彩る美しいアイドルだった彼女たちは、今や「Attitude」で、世紀末の都市を闊歩する優雅なアーティストのオーラをまとっている。現役K-POPポップグループの中で、この情緒をfromis_9ほど説得力を持って見せられる者はいないだろう。
『繋がれた苦痛』 - イ・ギビョン
キム・ギョウル(作家):誰でも具合が悪ければ病院に行ける。誰もが病の治療を受ける権利がある。これは、人間が人間らしく生きるための基本的な原則だ。したがって、この「誰もが」が、すべての人、私たちが社会で主流と呼ぶ人々以外をも含むべきだということは当然だ。貧しかったり、疎外されていたりという理由で、彼らの病を放置してはいけない。彼らの人権のためにも、一つの国に暮らす人々の病気が繋がっているという点からも、そうする必要がある。
そこで出てくるのが「外労病院」だ。本書は内科医のイ・ギビョンが、公衆保健医師として外国人労働者を診療する加里峰(カリボン)洞の無料医院で働いた経験を綴ったものだ。注目すべき点は、著者が医療人類学の研究者でもあるという事実だ。短い時間で患者を身体という単位に還元して眺める医師の目と、文化と社会の影響下にある一人の人間として眺める人類学者の目は、互いに補い合う関係にある。本書もそうした二つの観点から書かれている。医師の書いた文章の中で、アネマリー・モルやブルーノ・ラトゥール、アーヴィング・ゴッフマンといった哲学者、人類学者、社会学者の名前を目にすることはめったにない。著者はそうやって、自身の診療経験を振り返って医師としての選択を反省し、病に対する社会的な脈絡を批判し、患者が置かれた状況を再構成しようとする。本書はそのようなやり方で、私たちが身体と病をまなざす視点、外国人労働者の暮らしをまなざす視点について振り返らせてくれる。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
イム・スヨン(映画専門誌『シネ21』記者):前編『スパイダーマン:スパイダーバース』から1年あまり、ブルックリン市民の善き隣人になった高校生スパイダーマン、マイルス・モラレスは、他のスパイダーマンがそうであったように、スーパーヒーローのアイデンティティと平凡な人生の板挟みになって苦悩している。そんな彼の前に、平行世界のスパイダーウーマン、グウェンが再び現れる。異なるユニバースのスパイダーマンたちがマルチバースを自由に行き来できる「スパイダー・ソサエティ」を通じて新たなユニバースに移動したマイルズは、マルチバースの秩序を脅かすヴィラン、「ザ・スポット」に出会う。このシリーズのマルチバースは、ビジュアルやテーマ意識と密接に結びついている。280人を超えるスパイダーマンが属する世界は、古典的なコミックからビデオゲームに至るまで多様なレイヤーに広がっており、ユニバース間の移動は、ポップカルチャーの境界を崩して感覚的なエネルギーを創出する「メディアの実験」となる。また、様々な容貌のスパイダーマン間に生まれる葛藤によって、スパイダーマンをスパイダーマンたらしめる本質がどこにあるのかを問う鋭い作品でもある。歴代のスパイダーマンシリーズを合わせても指折りの力作だ。
Copyright © Weverse Magazine. All rights reserved.
無断転載及び再配布禁止
無断転載及び再配布禁止