
FEATURE
「Weverse Con Festival」が踏み出した一歩
「まさに今」のフェスティバル
2023.06.23
Credit
文. カン・ミョンソク
写真. Weverse Con Festival
「ありがとうございます。このステージを覚えていてくれて。そして、またステージに上がる力をくれて」。今年6月10~11日、ソウルのオリンピック公園KSPO DOME(以下、「Weverse Con」)と88 Lawn Field(以下、「Weverse Park」)で開かれた「Weverse Con Festival」の「Weverse Con」に立ったUhm Jung Hwaが公演の感想を述べた。Uhm Jung Hwaは「Weverse Con Festival」が自身のために献呈した「トリビュート・ステージ」で、LE SSERAFIMと一緒に自身の楽曲「Ending Credit」を歌った。歌手として1993年にデビュー、韓国大衆音楽界において女性アーティストの歴史で決して欠かせないアーティストと、2022年にデビューしたガールズグループが同じステージに立った瞬間。「2日間のステージの間、とても幸せでしたし、それまでの時間が再び蘇り、輝く気持ちでした」。Uhm Jung Hwaの感想のように「Weverse Con Festival」は、Uhm Jung Hwaが韓国大衆音楽史の中で積み上げてきた時間を第4世代ガールズグループが活動する現在とつなぎ、「再び蘇り、輝く」ようにした。この過程で伝説的なソロ・アーティストUhm Jung Hwaの持つ意義と影響力がLE SSERAFIMにまで届く。アーティストをつなぐことによってお互いの世界が出会い、拡張する。そして、拡張によって作られた新しい意味で大衆音楽史に、または大衆音楽産業に変化を起こす。「Weverse Con Festival」が今年踏み出した一歩だ。
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© Weverse Con Festival
「今年のラインナップは私にとっては非常に大きな一歩でした。HYBEの歌手ではない、Weverseにコミュニティを開設しているアーティストが大きい役割を担いましたし、野外ステージで同アーティストのスペシャル・ステージをお届けできたものですから」。HYBEのパン‧シヒョク議長の話のように「Weverse Con Festival」は今年、本質的な変化を経験しながら多様な可能性を試した。2020年と2021年の12月31日、それぞれ「2021 NEW YEAR’S EVE」と「2022 Weverse Con [New Era]」としてHYBE所属のアーティストを中心に開かれた年末公演は、今年「Weverse Con」に「Festival」が付け加わり、2日間開かれる音楽フェスティバルへと規模と意味が拡張された。室内で1日間開かれていた公演が2日間の「Weverse Con」と「Weverse Park」として昼から晩まで開かれる音楽フェスティバルとなり、より多くのステージの上により多くのアーティストが立った。BAEKHO、BOYNEXTDOOR、BUMZU、Dvwn、ENHYPEN、fromis_9、HWANG MIN HYUN、Lee Hyun、LE SSERAFIM、MOONCHILD、NewJeans、TOMORROW X TOGETHER、ZICO、&TEAMなどといったHYBE所属のアーティストだけでなく、XIA、BTOB、LIGHTSUM、HYOLYN、ジェレミー・ザッカーなど、ファンダム・プラットフォームWeverseにコミュニティを開設している韓国国内外のアーティストが共にした。オンライン上のWeverseがさまざまなアーティストを1か所に集めたように、「Weverse Con Festival」はフェスティバルを通じてさまざまなアーティストの音楽を経験できるようにした。「トリビュート・ステージ」でUhm Jung Hwaの登場を紹介したアーティストはXIAだった。彼は「Weverse Con Festival」を通じて14年ぶりに合同公演に参加した。TOMORROW X TOGETHERとENHYPENなどのボーイズグループは、「Invitation」、「Come 2 Me」といったUhm Jung Hwaの楽曲を新しく解釈し、献呈した。パン・シヒョク議長は「トリビュート・ステージ」の意義について、次のように説明した。「大衆音楽の歴史的な事実に対する尊重が必要だと思います。それを忘れずに記念する、献呈できる空間が必要です。そのようにして時代的意義を生かしていく公演になるべきだと思います」。
「時代的意義」という側面で、「Weverse Con Festival」はK-POPと規定されたアーティストと彼らのファンダムに対し、従来のK-POPシーンの中では経験が難しかった瞬間を提示した。ENHYPENのメンバーJAYは、自身のグループが「Weverse Park」で「Attention, Please!」を公演していた途中でエレクトリック・ギターを演奏してみせた。「Weverse Park」の公演はすべてバンドの生演奏で行われたが、参加するアーティストがバンドの生演奏に合わせたステージを構成したからこそ可能なことだった。「Weverse Con Festival」の演出を担当したコンサート制作室コンサート演出2スタジオのオム・ヘジョンLPは、「『Weverse Park』公演は、観客にフェスティバル・ムードを感じてもらいたいと思い、アーティストに観客と一緒にはしゃぎながら触れ合うバイブスを演出してほしいと申し上げました」と話す。ENHYPENだけでなく、TOMORROW X TOGETHER、&TEAMなど、「Weverse Park」と「Weverse Con」のどちらにも両日の間に出演したグループは、「Weverse Con」では従来のパフォーマンス中心のステージを、「Weverse Park」では野外フェスティバルにふさわしいバンドの生演奏中心のステージを披露した。LE SSERAFIMのメンバーHUH YUNJINは、「Weverse Park」で一人でバンドの生演奏と共に公演を行ったりもした。LE SSERAFIMのほかのメンバーは、一般観客がいる芝生広場で一緒にHUH YUNJINの公演を観た。従来のK-POP合同公演ではどれも見られなかった光景だ。「Weverse Con Festival」の企画を担当したコンサート事業室国内コンサート事業2チームの担当者ペク・インウ氏は、「フェスティバルとしてどのように差別化を図るのかが非常に大きな課題でした。そこで、2つの公演会場の環境の特性を生かし、アーティストの異なる魅力を見せるようにアプローチしました。同じアーティストでも野外と室内でのムードをずいぶんちがうものにしたのですが、そういう部分が非常に大事でした」と話す。「Weverse Con Festival」はK-POP公演と野外フェスティバル、そしてK-POPアーティストとその外側のアーティストを集め、お互いの範囲を拡張しながら、従来のK-POPとフェスティバルの概念に対する境界を横断した。
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© Weverse Con Festival
担当者のペク・インウ氏は、「Weverse Con Festival」の公演において最も大きく変わった点の中の一つとして「アーティストを直接撮影し、公演中に活用するVTR映像を制作しなかったこと」を挙げた。「Weverse Con Festival」が「アーバン」と「パラダイス」という場所による音楽的コンセプト/境界を設け、「パラダイス」ではアーティストのVTRの代わりに「パラダイス」のコンセプトをつなげる映像を制作し、アーティスト間の公演が一つのテーマでつながるフェスティバルの感じを強調した。「Weverse Park」では公演と公演の間に観客が退屈しないように、観客がダンスを習ってみるダンス・スタジオ、タレントのJaeJaeが進行を務めたブームアップ・ステージなどが設けられた。ダンス・スタジオにはTOMORROW X TOGETHERのYEONJUNがサプライズで参加し、熱い反応を得る場面もあった。オム・ヘジョンLPは公演の合間のちょっとしたイベントについて、「公演を待っている間、ずっと視線を引き留めてくれるものがあることで、ただ単に待っているだけではないという感じを与えたかったです」と述べた。「Weverse Con」で従来のK-POP公演にさらにフェスティバル的な要素を付け加えるようにした一方、「Weverse Park」では従来のフェスティバルの流れの中で、K-POPファンが呼応できる要素を取り入れたと言える。K-POP、またはWeverseとその外側をフェスティバルの中で一つに結び、拡張する試みは、綿密な運営によって観客に以前とはちがう公演経験を与える。公演に対する経験は、技術を基にフェスティバル全般に対する新しい経験にまで拡張される。例えば、観客はQRコードで「Weverse順番待ち」を登録し、自分が入場したいブースを予約し、通知が着たら、そのブースで提供されるサービスを経験することができた。サービスの中には、好きなアーティストの写真を選ぶと、その場でピンバッジやフォトカードを作れる「Weverse by Fans」もあった。K-POPファンの欲するサービスが技術によってフェスティバルに対する新しい経験へと続く。
Weverseのチェ・ジュンウォン代表は、技術を活用した新しいサービスについて「見えざる手のように、Weverseの技術とプラットフォームはコンテンツとIPをしっかり経験できるようにサポートしてくれるものです。チケットを受け取り、本人確認をする手続きをはじめ、公演を観るためのいろんな手続きと経験を、ごく当たり前に感じてもらえるように作ることを目指しています」と述べた。担当者のペク・インウ氏が「Weverse Con Festival」から観客に与えたかった経験の中の一つとして「ファンの皆さんがあまり長い時間、列に並ぶことなく、いろんな体験ができるようにしたい」と話した所以でもある。公演のために、またはフェスティバルのために、当たり前だと思っていたことを遥かに便利に変えることができる。パン・シヒョク議長の表現によると、「今使っている方々にとってはごく自然なことだが、わずか数年前までも誰もが不便に思っていながら受け入れていたものをなくすこと」だ。観客に与えるこのような新しい経験が集まり、「Weverse Con Festival」のような新しい類のフェスティバルに行く理由を作る。チェ・ジュンウォン代表が「Weverse Con Festival」の目標を次のように提示する所以でもある。「今年は観客に『こんな経験が可能なんだ』と感じてもらうところまでは来ていると思います。模擬試験でいい点数を取れたような気分で、たくさんの可能性を見いだしました。これから『この現場に来たら、とても楽しい』、『これは次元のちがう経験だな』と感じてもらいたいですし、それが一番究極の目標です」。言い換えれば、過去に絶対に立ち返れない経験だ。革新とも言われるような。
「K-POPアーティストを中心としたフェスティバルが存在できるだろうかというこれまでの疑問に対する答えが『可能そうだ』になりました」。HYBEのキム・テホCOOは「Weverse Con Festival」について、このように評価した。「特定アーティストのファンの立場からすると、自分の一番好きなアーティストの公演時間が単独コンサートよりずっと短いのに、フェスティバル・チケットをどれくらい購入するだろうかという悩みが多くありました。しかし、フェスティバルを開いてみて、これは経験の問題だったと思えました」。HYBEのキム・テホCOOによると、「Weverse Con Festival」を観た観客の満足度とリピート鑑賞の意思の度合いが高かった。さらに、「Weverse Con Festival」の2日目には、外国人観客の割合が57%に達した。国籍だけでなく、性別、年齢、人種などで項目を分けると、観客は何か一つの類型に分類しがたい。「観客の構成が本当にグローバルな上に、年代もさまざまです。その人たちが芝生公園に集まって、スタンド席で熱狂する観客から座布団に座ってフードを食べながら楽しむ観客、日陰に下がっておしゃべりしながら雰囲気を楽しむために来た観客まで、広い幅を見せているところがとても印象的でした」。Weverseのチェ・ジュンウォン代表が挙げた「Weverse Con Festival」の印象的な瞬間は、「Weverse Con Festival」の可能性でもあった。彼は「お互いの好みを覗いてみれば、各自の好みの境界が拡張されるということを『Weverse Con Festival』で経験していただけたらと思いました。各自の好みが集まれば集まるほど、お互いより多くの好みを共有する共同体になるわけです。我々がこのような方式で音楽シーンの中でジャンルをどこまで拡張できるのか、それだけでも大きな挑戦だと思います」と述べ、「Weverse Con Festival」の可能性を提示した。
そのため、「Weverse Con Festival」が大衆音楽産業に投げかけるメッセージがあるとすれば、「まさに今」、同時代の音楽が未来に進んでいく方向を示すということ自体にあるだろう。伝説的なアーティストと現在のアーティストが出会い、音楽の重要な価値を知らせ、韓国とK-POP中心のアーティストがほかの国籍やジャンルのアーティストとフェスティバルを通して出会い、前例のない経験を可能にする。この過程でオンラインとオフラインがつながり、音楽産業において技術が何を可能にするのかを観客に体感してもらう。パン・シヒョク議長は「Weverse Con Festival」のビジョンについて、次のような一文で圧縮した。「今この時代に大衆芸術を基盤にしているすべての新しい形の技術や芸術的方法論が全部ショーケースできるスポットになればと思っています」。
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