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文. キム・リウン
インタビュー. キム・リウン
デザイン. チョン・ユリム
写真. BIGHIT MUSIC
BTSがデビュー10周年を迎え、オフィシャルブック『BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー:10-YEAR RECORD OF BTS(以下『BEYOND THE STORY』)』を去る9日出版した。BTSのメンバーたちが2年余りの間に行ったインタビューを主軸に、3年の制作期間を経て、BTSのこれまでの10年を再構成したこの本は、10年余り前にソウルに集まった7人の青春が全世界が注目するK-POPグループになるまでの過程を見せ、またこれから描いていく未来を提示する新たなスタート地点であると同時に、彼らがその身を置いてきたK-POP産業のある時期についての記録でもある。BTSに直接インタビューし、本を執筆した『Weverse Magazine』カン・ミョンソク編集長、そして本のプロジェクト進行者であり編集者であるHYBE出版パート担当者キム・ヨンジュ氏に、この本が作られるまでの過程について聞いた。
​BTSは音楽やドキュメンタリー、そしてさまざまなオリジナルコンテンツなどで、率直なメッセージを常に伝えてきました。それに加え、BTSの話を本という密度の高い形態で記録した趣旨とは何だったのでしょうか。
カン・ミョンソク:『BEYOND THE STORY』は、BTSのこの10年についてのもう一つの「Proof」でもあります。BTSがアルバム『Proof』で「Run BTS」や「Yet To Come」などを通してこの10年間ずっと走り続けてきた道のりとともに、これからも進んでいくというメッセージを音楽で伝えたとしたら、オフィシャルブック『BEYOND THE STORY』は彼らが歩んできた道とともに世の中に伝えようとしてきたメッセージ、そして彼らが今何を見つめているのかについて、メンバーたちのインタビューを中心にストーリー形式でまとめたものです。そのような過程を通してメンバーたちが世の中に伝えようとしてきたことを、当事者の声でより深く伝えたいとも思いましたし。この本の趣旨についてメンバーたちに説明する時間を持った後、RMさんは「もっと時間が経つ前に、デビューから今までを振り返りたい」と、出版に同意もしてくれました。

キム・ヨンジュ:プロジェクトについての話が初めて出たのは2019年です。BTSがアイコニックなグローバル・アーティストとして急浮上した時点でもあり、一方では彼らについての真摯なアプローチと記録が必要だという趣旨でした。BTSの声をありのままに盛り込んだという点で、他のどんな文章より本質に最も忠実にアプローチしたと言えます。特にメンバーたちのインタビューのコメントは文語体で整えていますが、「言葉」が「文章」になる時たびたび発生するギャップを最小限に抑え、そのために本文に収録されたすべてのコメントについて、実際のインタビューでの前後の脈絡をすべて調べ、何度も検討しました。できればメンバーたちの普段の話し方までも最大限活かそうと努めました。

グループの10周年をまとめた本が7月9日の「ARMY DAY」に出版されるという点も感動的です。
キム・ヨンジュ:デビュー10周年に合わせて出版を準備することになり、私の頭の中には2つの日にちが刻まれていました。「2023年6月13日印刷」、「7月9日発行」。そうして今年の初めに海外の出版社とミーティングを行ったのですが、こう話していました。「私たちの国では日曜日に本を出版しない」と。お恥ずかしいのですが、そこで初めて今年の7月9日が日曜日だということを知りました。心の中で思いましたね。「韓国も日曜日に本は出しません…」。それぐらいあまりにも当たり前に、その日の出版だけを考えていたんです(笑)。ですが、結果的には多くの国や地域で7月9日のARMY DAYに出版することになりました。BTSだからこそ、そしてARMYだからこそ可能なことでした。海外の出版社としては私たちの日程計画に首を傾げたかもしれませんが、結局賛同してその日に揃えて、趣旨に沿うようにしてくださったので、本当にありがたいという思いです。今後も今年の下半期にかけて、いくつもの言語版が続々と出版される予定です。20か国を超える外国語版が存在するので、海外の各出版社の翻訳やデザイン、プロモーション・コンテンツを検討して、フィードバックをやり取りする手順を並行して行っていて、今も3つの言語版が「番号札を取って」待っています(笑)。

『BEYOND THE STORY』を執筆したカン・ミョンソクさんは、エンターテインメント業界について長い間文章を書いてきたジャーナリストでもあります。筆者に選定された理由は何でしょうか。
キム・ヨンジュ:「選定」と言うのが適切なのかと思うぐらい、私たちが思い浮かべた人はカン・ミョンソクさんただ一人でした。BTSをずいぶん前から細部にわたり見守ってきた人で、韓国大衆音楽界についても彼のように広く深く語れる人はそうそういないと思ったんです。BTSのストーリーを追っていくと「小説よりもっと小説のような」瞬間があるのですが、それが文章を書く立場からは大変魅力的な点だったと思います。だからか、プロジェクトについての話が出ていくらも経たない時点で、筆者が目次のほとんどを小見出しまですべて決めてきてくれました。何を扱うか、どんな内容で展開するかは、筆者のおかげで序盤からすべて準備されていたんです。私はそれを「どんな形に整えて見せるか」を悩めば良かったんです。

カン・ミョンソク:執筆のオファーを受けた時点は『Weverse Magazine』で仕事をする前の2019年の夏で、メンバーたちのインタビューは2020年の春にスタートしました。一人につき8回ずつインタビューをして、約3か月に一度メンバーたちに会いました。インタビューを1回行うたびに、その内容をもとに出来事を再構成した後、その時期についての追加の資料調査と事実確認をするというやり方で進めました。それくらいメンバーたちのインタビューがこの本の始まりであり終わりです。ですので、どうしてもお伝えしたいのは、この本は私が文章を書いてはいますが、BTSなしには成立自体が不可能なBTSの本だという点です。私はメンバーたちの話を整理して、よりよく伝えるために必要な要素を加える役割を果たしただけだと思っています。もちろんインタビュー以外の部分に出てくる文章には私の意見が盛り込まれていて、私の責任の領域です。ですが、この本は根本的にBTSの、BTSのための、そして彼らの声によって完成することができた本だということをお伝えしたいです。
本が制作されている時期の間ずっと、BTSはより大きな成長を見せ続けていました。そのため執筆と制作を完了する時期を決めるのが容易くはなかったと思います。
カン・ミョンソク:初めはBTSの過去についてのインタビューを1年ほど行って締めくくればいいのではないかと思っていました。ところが「Dynamite」が出たら、「あ、この時期を扱わないわけにはいかないじゃないか」(笑)と思い、インタビューをさらに行うことになって、その後また「Butter」が出ました(笑)。そしてパンデミックが終わり、スタジアムツアーも再びできるようになったので、それも扱わないわけにはいきませんでしたし(笑)。そうするうちに結果的には取材の日程が増えて、BTSのほぼすべての活動を盛り込んだ本になったので、とても嬉しく思っています。

キム・ヨンジュ:現在進行形の物語を果たしてどこまでこの本に載せるべきか、ずいぶん悩みました。筆者が最後の「CHAPTER 7」の執筆を残して苦しんでいたことを思い出しますね(笑)。情報が常にアップデートされなければなりませんでした。BTSが活動中なので、状況は変わり続けていて、一方では時間が経つにつれメンバーたちの価値観や心境が少しずつ変化する部分もあったので、「最々終バージョン」が何なのか、持続的に確認しなければならなかったんです。ですので、とても些細な部分もメンバーたちに作業の大詰めまで問い合わせたりしました。今もその考えが有効なのか否かが文章に反映されなければなりませんから。メンバー全員が丁寧に答えてくれたのでとても助かりました。

インタビューを行った期間の大部分が折しもパンデミックの時期でしたが、その部分が本にどんな影響を与えたのでしょうか。
キム・ヨンジュ:パンデミックによりBTSの活動が一時停止した時、ちょうど最初のインタビューが始まりました。当初の計画通りであれば、BTSは海外ツアーを回っていて、現地でスケジュールの合間合間にインタビューに応じるやり方でした。その前まではツアーのため海外での滞在期間が長く、スケジュールも何しろびっしりで、深い話をする時間をたくさん取ることは現実的に難しかったと思います。ところがパンデミックの時期にはすべてのスケジュールが韓国で行われ、BTSはオフラインの活動が不可能になり、ファンの方たちと会えなくなった時期に、自身を振り返る時間を持つことになったんです。デビュー前から今までを振り返る趣旨で、メンバーごとに個別に行われたインタビューは、『BEYOND THE STORY』が初めてです。

カン・ミョンソク:最初のインタビューまでは、コロナによる問題は一時的ではないだろうかという若干の希望もありました。ですが、パンデミックが長期化して、メンバーたちのインタビューにも、当時の各自の思いと省察、ファンに直接会えない息苦しい心境が自然と表れていました。それでもどうにかしてファンの方たちに何をしてあげられるか、どんなメッセージを伝えるべきか悩んでいて、インタビューが度重なるにつれさらに成長する姿が本当に印象的でした。特にメンバーたちの最も最近の歩みを扱った、本の最後のチャプター「WE ARE 僕たちは」にそういう部分がたくさん書かれています。本の執筆を超え、多くのことを学んだインタビューでした。

BTSと長い期間インタビューを行っていて、最も印象深かった瞬間はいつでしたか。
カン・ミョンソク:2021年11月にあった「BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE - LA」公演直後に行われたインタビューでした。パンデミックが終わりつつあり、久しぶりに公演をした後に行ったのですが、メンバーたちが公演が終わった直後、宿舎で休憩を取っている時に話を聞いたんです。とても疲れた状態だったと思うのですが、パンデミック以降初の公演を終えたメンバーたちの感情と思いが非常に密度濃く表れていました。例えばVさんは普段インタビューをする時、大変落ち着いて話をするのですが、その時ばかりは声も少し大きくなって、必要な時は大きい動きもしながら、言葉の意味を説明したりもしました。メンバーたちがインタビューのうち唯一気持ちが浮き立っていたと言えるほど、公演直後の観客に会った感情がそっくりそのまま表れていたように思います。

キム・ヨンジュ:スケジュール上、初日に一人だけインタビューをして、その翌日に6人のインタビューを立て続けに行ったことがあります。ミョンソクさんは6時間休まずに話していました。改めて大変だったと思います(笑)。見ている立場の私には、インタビューを行っている間、メンバーたちがアーティストとして進んでいく方向を見つける過程、同時に個人としての生活を整えて暮らしていく流れが窺えました。メンバーたちの考えや嗜好、価値観が徐々に変化したり、だんだんはっきりしてくる過程を見守るのが興味深かったです。本の特性上、デリケートな内容についての質問も含まれたりしていますが、インタビューが終わるとメンバーたちが、「振り返ることができる」、「癒やされる」、「おもしろい」などとコメントしてくれたので安心しました。インタビューの雰囲気が徐々に和やかになって、例えばJIMINさんは恥ずかしそうに、「僕がしたこの話は(本に)載らなそうですね(笑)」と言いながらも、いつの間にかあれこれと話し出していました。Vさんは「これは僕たちのことを記録しているわけじゃないですか。ですので、すべて話したいです」と言って、率直に応じてくれました。最後のインタビューの時、RMさんは話し込んでいる途中で笑いながら、こう言いました。「僕が今までしたインタビューの中で、今が一番リラックスしているように見えますよね」と。出版を前にして4月頃、メンバーたちにゲラを共有した時は、内容をきちんと検討したかったのか、自分のコメントをまとめてもう一度くれるように頼まれたこともあって、意見をやり取りするミーティングをしたりもしたんですが、そういうフィードバックや要請がこのプロジェクトに対する関心だと感じられて、本当にありがたかったです。

長い期間メンバーたちに接するうちに、グループとメンバーについて新たに理解できた部分もあると思います。
カン・ミョンソク:以前からそうだと思ってはいましたが、思った以上に数え切れないほど、自分たちの人生とグループについての悩みが多い人たちだと感じました。インタビューをするたびにいつもメンバーたちには、その時点で置かれた状況と各自の人生についての悩みがあって、その悩みを解決するために自分が何をすべきかについて常に考えていました。そういう悩み故に、特にパンデミックという状況でアーティストとしてできることが制限された状況によりつらい部分が確かにあったと思いますが、問題を解決し次の段階に進み続けようとする姿に尊敬の念を抱きました。この本はその過程を盛り込んだ記録でもあります。インタビューをした後、ジェイムズ・ジョイスの小説のタイトルでもある『若き芸術家の肖像』が思い浮かびました。本に参加することになったことも大いなる喜びでしたが、メンバーたちのそのような過程を見守れたということ自体が光栄でした。

キム・ヨンジュ:誰かを「こうだ」と定義することは、非常に慎重でなければいけないことですが、見ている立場として、それでも一つは言えると思います。BTSは「ファンの方たちが心から応援してもいいアーティスト」だということ。誰かに愛情を注いでいると、自分がいわゆる「人間として良い人」を支持しているのか、ふと確認したくなる時があるじゃないですか。ですが、その点でBTSは、ARMYの皆さんが溢れるほど愛を与えても「安全な」アーティストです。なぜなら、溢れるほどその愛を返そうという考えを彼らは常に持っていますから。
『BEYOND THE STORY』というタイトルは、BTSのブランドアイデンティティである「BEYOND THE SCENE」とも繋がっていますが、同時にメンバーたちの「ストーリー」が文字通り核心だという意味にも読めます。
カン・ミョンソク:最初にこの本を企画した時、「BEYOND THE STORY」とともに「BE THE STORY」という文が浮かびました。大きな成功だけでなく、これまで経てきたすべての過程が一つのストーリー、または物語そのものになったグループ。そしてそれを超え、再び新たなストーリーを書いていくグループ。この本に参加する前から、BTSの成功の歴史はアーティスト、特にK-POPグループという独特な位置にいるグループが誕生して成長するストーリーの原型に近いという印象を受けていました。同時に21世紀の韓国の青春の物語としても読めることを望んでいますし。全世界の人たち皆が見守るK-POPグループが、どんな過程を経て成長し問題を克服してきたのか、この時代に韓国という背景の中で育った少年たちが、どうやって大人になっていくのかについての原型のようなストーリー。RMさんの「Yun (with Erykah Badu)」の歌詞を引用するなら、7人の青年が「もう少し良い大人」になっていく道のりです。K-POPグループのメンバーは全世界で少数の人たちだけがやっている特殊な職業ですが、その仕事で成長してきた青年たちの人生が他の人に良い影響を及ぼすことになる、普遍性を持ったストーリーとして伝わってほしいです。ですので、このストーリーが絶えることなく次、そしてその次の世代に語り継がれるように伝わったら、この上なく嬉しいですし。

編集者の立場としては、個別のものながらも普遍的なストーリーを込めた本を、ARMYだけでなくさまざまな読者に伝えるという観点で気を配った部分があったのではないかと思います。
キム・ヨンジュ:BTSを全く知らない人になって、第三者の視点で文章を読んでみたりもして、本文では言及することができなかった内容を、テキストだけでなく、いわゆる視聴覚資料で補ったり、気になることを解消しようと努めました。文章の中に入っては、たびたび抜け出して眺めて、再び中に入ることを繰り返しましたし。事実確認に関しては、韓国国内及び海外のメディアの記事、SNS、各種映像及び音源プラットフォームなど、私が可能な限りの資料はできる限り調べて、比較対照して一つずつ整理していきました。BTSをよく知らなかった読者でも、グループとしてのBTSについてなら、この本一冊を通してそのヒストリーを隅々まで知ることができるようにと思いました。

最初のページからメンバーたちの姿をモノトーンで見せるフォト、グレースケールで色味を最小限に抑えた全般的なデザインが、人物と内容に完全に集中させるという印象を受けました。
キム・ヨンジュ:写真の場合、メンバー全員の衣装と背景を統一して、装飾的な要素を排除し、BTSの飾らないそのままの姿を見せようと思いました。コンサートのオープニングの時スクリーンに映し出されるVTRのように、ストーリーの中に入っていく前に一種の人物紹介を見せたいと思いましたし、目を閉じた写真を各自の最後のカットとして配置することにより、内面に入っていくような雰囲気を伝えたいと思いました。そうしてストーリーの向こう(beyond the story)に渡っていけたらいいなと思ったんです。そしてメンバーたちの活動名以外にも本名を23の言語版ですべて同じく韓国語で載せて、アーティストとしてばかりでなく個人としての心境もこの本に盛り込んでいることが伝わったらと思いました。デザインの面では、特定のカラーがBTS、またはBTSの10年を代表しないようにしたいと思いました。よく知られている紫はARMYのためのカラーだと考えましたし、BTSというブランドのイメージにどんな影響でも与えるようなカラーは使用しませんでした。この本のデザインを担当したデザイナーのチョ・ユンジュさんと、一日に何度も頭を突き合わせながら修正していきました。その結果、国及び地域別の制作環境によって若干のちがいはありますが、本のカバーは重みが感じられる深いネイビーをベースにして、蛍光インク(Fluorescent Ink)を使用し、7本の斜線に躍動感を吹き込みました。本文にはブルー一色程度だけを使用して、未来志向性・青春の雰囲気を部分的に加味しました。カバーを外したハードカバーは、ブラックの用紙に銀箔でグループを象徴する斜線を1つだけ入れました。海外の出版社に私たちの編集及びデザインの意図と基準、制作に関して、非常に厳しくフィードバックをしましたが、どの言語版でも最上のクオリティを出して、出来上がりに一貫性を持たせたいためだということを、各出版社にご理解いただけたら幸いです。それぞれの要件や技術的な部分、必要な日程などを考慮して、やむを得ず適性ラインで妥協したり許容した部分もありますが、すべての言語版が可能な範囲内で、最大限の完成度を引き出すために努力してくださったと信じています。

構成的な面では、7つのチャプターが「SEOUL ソウル」で始まり、「WE ARE 僕たちは」で終わるという点が印象的でした。特殊な都市からスタートして、共同体を成す構成なので。
カン・ミョンソク:チャプターの構成については最初から意図していたものです。2010年代の韓国の青春という観点から見ると、10代中盤~20代序盤の青春期にある人たちが、夢を叶えるために故郷を離れソウルに来て、激しい競争を経ながら成功を夢見る過程です。ですが、成功の後にはまたもや、思ってもいなかった問題と悩みが出てくることになりますし。そのすべての過程がBTSのストーリーに自然と溶け込んでいます。振り返ってみると、アルバムを中心にしたBTSの歩みは、すなわち彼らがその時経験していた悩みを解決する過程でもありました。例えば『WINGS』で、「花様年華」シリーズの成功以降変化した環境の中で自分たちの内面を見つめたり、「LOVE YOURSELF」シリーズでは、グループが収めた大きな成功自体により、グループの内部に生まれた悩みが反映されています。ですので、初めは競争で生き残らなければならず、だからこそ「承認をめぐる闘争(他者・社会に認められるための闘い)」をしなければならなかった青春期の彼らが、成功と成長をともに遂げながら、各自の魂の地図を作っていき、その過程で世の中に何をすべきかについて考えることに繋がります。そのため7人が集まる過程を描いた「SEOUL ソウル」からスタートして、BTSがARMYとともに真の共同体になる「WE ARE 僕たちは」で締めくくられる流れで構成しました。

本の流れを完全に理解できるように、本文の中で重要に扱われているBTSの振り付け映像、ミックステープ、ブログの文章などのQRコードが多数挿入されているという点も印象的です。
キム・ヨンジュ:QRコードの挿入は、まさに私自身の必要性と便宜のために始めました。編集過程で文章に言及されている映像や音源、投稿を一つ一つ確認しながらリンクを別途メモしておいたんです。そうするうちにQRコードだけで330個を超えたんですが、1冊の本にQRコードがこんなに多く入っているのは、私も見たことがありません。外国語版を出す各出版社も私たちのデータを受け取って、とても驚いたと思います(笑)。この本を読む方たちがすぐに関連資料に接することができるようになっているので、結果的には満足です。もちろんそれはBTSがこれまで積み上げてきた豊富なコンテンツのおかげでもあります。

『BEYOND THE STORY』はBTSのインタビューを中心に構成されていますが、話の流れに沿ってパフォーマンス、音楽のサウンド、特定のステージなどのコンテンツについても詳細な分析と批評が伴ったとても複合的な性格の本でもあります。
カン・ミョンソク:BTSの作品についての批評的な部分は、文字通り話の軌道に沿いながら、BTSを理解するのに助けにならなければならないという点を重要に考えました。批評が目的ではなく、その時点のBTSについてどうしても語らなければならない部分があったら、BTSの生き方が作品にどのように溶け込んでいるのかという観点で書きました。メンバーたちがインタビューの過程で重きを置いて言及していたり、その当時の内面に影響を与えた曲があったら、その曲について確認しなければなりませんし、グループの歴史において重要な役割を果たしたステージについては、当時のパフォーマンスについても説明しなければなりませんから。ですので、この本を通して新たに意味を伝えることになる曲もあればいいなという願いがあります。すべてのアルバムやステージを平面的に扱うより、BTSの歴史を一つのストーリーとしてまとめながら、自然に入ることになる曲やステージについて書こうと思いました。

メンバーたちのインタビューと筆者の観点が共存する本なだけに、メンバーたちのコメントと筆者の叙述が視覚的に区別されている点も重要な要素に思えます。
キム・ヨンジュ:筆者の初稿がある程度入ってきた時点で、構成の方向を模索していた際に、まるで「アハ・モーメント(Aha Moment)」のような瞬間があって、「これはテキスト中心の構成になるべきだ」という結論を下しました。メンバーたちのコメントが筆者の叙述と区別されると同時に、筆者の文章の流れが見えなければならないと思いました。最初はBTSの発言を視覚的にもう少し強調する方向も考えました。カラーを使用したり、コメントごとにメンバーを表記したり、デザイン的にトレンディで華やかな方向を考えてみたりもしました。ですが、結果的にはフォントやレイアウト、カラーを可能な限り基本中の基本に近く整えました。『BEYOND THE STORY』は、構成要素がすでにとても複雑なコンテンツです。筆者の叙述文、BTS7人各自のインタビューのコメント、未公開ポートレート写真、アルバム別のコンセプトフォト、ディスコグラフィ情報、インタビューのコメント抜粋ページ、本文のQRコードや脚注など、要素が非常にたくさんあります。そうであるほど、視覚的にはむしろすっきりと見えるよう気を配りました。RMさんがこの本をはじめいろいろな媒体で、自分が求める音楽をたびたび「Timeless」と形容しているように、『BEYOND THE STORY』が「Timeless」なものになってほしいと思いました。テキストも写真も無理なく盛り込める器にならなければならなかったため、本文に使う紙、本のサイズなどもその点を考慮して決めました。

10年を網羅するBTSの物語とともに、当時のK-POP産業の流れについての筆者の分析が合わせて書かれているだけに、BTSについての本であると同時に、彼らが活動していた時期のK-POPについての一種の記録のようにも読めます。
カン・ミョンソク:BTSはK-POP産業に非常に大きな影響を与えていて、グループが成長してきた過程そのものが産業としてのK-POPの成長の歴史を説明してもいるので、その相互作用について語らなければ、彼らを完全には説明できないと思います。例えばアメリカでBTSが収めた成功が、K-POPまたは韓国大衆文化産業にどんな意味を持つのかを説明しなければ、その意味がわかりにくいんです。そしてBTSの歴史にはK-POPならではの特殊性を説明しなければならない部分があるのですが、海外はもちろん韓国国内でもこの産業がどんなやり方で動いているのか、外からではわかりづらい部分がたくさんあります。そういう点を合わせて言及してこそ、BTSのアルバムの内容や活動の仕方などについて説明できると思いました。

メンバーたちの悩み、さらには当時グループで経験した大変な状況などについてありのままに扱っています。本文でRMさんが言及したように、「『ファンタジー』が業界の重要な基盤の一つ」であるK-POPアーティストの本としては、異例の選択だと感じました。
カン・ミョンソク:「オフィシャルブック」と言えば、主にBTSの成功の歴史を扱った本だと思うかもしれません。もちろんBTSが成功を収める過程は重要で、本でもたくさん扱っています。ですが、BTSの成功以上に7人の成長が重要に感じられました。この人たちが人として悩み成長する過程こそ、この本を読む方たちの胸に響くと思います。メンバーたち自らが悩みや問題について率直に話してくれたんです。そういう部分はほぼそのまま入っていますし、そういう悩みがどこから来てどのように解決したのかを語るには、多くのことをそのまま扱わなければなりません。そしてBIGHIT MUSICから発行するオフィシャルブックだと言っても、一人の筆者として責任を負うためには、私の立場と観点を正確に表すべきだと思いましたし、当時の時代像が盛り込まれた現実的な話を通して、BTSというグループをもっとよく理解させたいとも思いました。そうできた理由は、それくらい私に、文章を書く者としての自律性を保障してくれたからです。本の内容と方向について、BIGHIT MUSICとBTSのメンバーたちが示してくれた尊重に対して、大変感謝しています。

キム・ヨンジュ:プロジェクト進行者の立場からお話しすると、BTSは『BEYOND THE STORY』にインタビューの形で参加していて、叙述のレンズは基本的に筆者の視線に沿って移動します。そのようなオープンなアプローチと解釈を許容するのは、ある面では容易くないことですが、メンバーたちの包容力が印象的でした。『BEYOND THE STORY』は、BTSを巡って世の中に存在する無数の観点のうちの一つだと思います。ある決まった答えを提示しようとはしませんでした。ただオフィシャルブックなだけに、事実確認、筆者の見解などについて、より厳格に検討しました。「これは当事者であるBTSの立場からしても適切な叙述なのか」についても留意しました。特に出来事の前後関係や背景を正確に把握することもまた重要でした。BTSの履歴は単線的に展開されたものではなく、いろいろな状況が絡み合って、数十もの方向に枝を伸ばしてきました。メンバーたちのコメントについても事実確認を再び経て、すべての資料を動員して最初から最後まですべて把握していきました。正直言って大変な過程でした。何と言いますか、孤独な探偵になった気分でした(笑)。

「BTSの成功以上に、成長が重要に感じられた」というお話の通り、『BEYOND THE STORY』の重要なテーマの一つはBTSとARMYがともに成長する物語だとも思います。
カン・ミョンソク:原稿でも言及した部分なのですが、BTSについては常に「BTSがなんでそんなに人気なの?」、「なんでBTSがそんなに好きなの?」という質問がありました。ところがそれは、BTSでもなく、ARMYでもなく、第三者の視線なんです。一般的に誰かを愛する時、なぜ愛しているのか、その理由を自ら問うことはないじゃないですか。質問が変わるべきだと思いました。「なぜ愛するのか」ではなく、「その愛があなたの人生に何を与えたのか」になるべきだと。CHAPTER 6に当たる「THE WORLD OF BTS BTSの世界」は、事実上ARMYたちの愛に対する献辞です。2019年の夏、BTSがサウジアラビアで公演の前日にリハーサルをした時、暑い中、スタジアムの外に小さく流れてくる声でもいいから聴こうと集まって、メンバーたちの声が聞こえるたびに歓声を上げていたARMYたちの姿に、本当に大きな印象を受けたんです。あんなに無条件の愛を誰かに与え、誰かの苦難をともにしながら応援して、その過程でアーティストとファンダムが良い相互作用を築いて、しかもARMYが寄付や観覧文化などを通して、良い影響力を行使する文化的な現象にまで発展したじゃないですか。そうやって愛を通して良い姿に向かっていく人たちがいるのであれば、その人たちがアーティストとの関係から何を感じて得たのかが一番気になりましたし、語られるべきだと考えました。そうしてアーティストとファンがお互いにこの10年の間ともに成長してきて、これからもお互いの幸せを考えられる関係になったという部分を、どうしても見せたいと思いました。BTSのメンバーたちが常に強調しているように、彼らの人生はARMYが導いてくれたものでもありますから。

本が全部で23の言語で出版され、世界三大文学賞の一つであるブッカー賞のインターナショナル部門最終候補に挙がったアントン・ホ、ハン・ガンの『菜食主義者』やチョン・ボラの『呪いのウサギ』などをドイツ語に訳した翻訳家イ・ギヒャンのように、有数の翻訳家たちが参加しているという点も、BTSとARMYの力ではないかと思います。
カン・ミョンソク:書き手として、優れた翻訳家の方たちが参加することになったという点がとても嬉しかったです。個人的な話ですが、これがもしかしたら私の人生で最後の本になるかもしれないと思っているのですが、本当に光栄なことだと思います。すべてBTSとARMYのおかげでできたことです。

キム・ヨンジュ:翻訳家の方たちの立場からすると、内容上、韓国文化をはじめK-POPやBTSについての背景知識が少なかったら、決して簡単ではない作業だったと思います。個人的には、その方たちがこの原稿を翻訳しながらどんな感情を抱いていたのかが気になります。BTSが最初からあんなに高いところに上っていたわけではないということを、初めて知った方たちもいると思うんです。名前程度しか知らなかった出版社の関係者たちも、この作業をきっかけにグループについて知っていったと思うので、機会があればその感想も聞いてみたいです。そしてハングルを20数か国の自国語に翻訳する過程で、翻訳家の方たちが最善を尽くしてくださったと思いますが、もしも意見がありましたら、それぞれの出版社に鋭くも詳細なフィードバックをくださったらありがたいです。

最後に本の出版についてお二人の気持ちをお聞かせください。
カン・ミョンソク:『BEYOND THE STORY』はBTSのメンバーたちはもちろん、多くの方たちの努力と力が注がれて完成した本です。『Weverse Magazine』の業務と並行して書いた本なのでとても忙しかったのですが、その分私の足りない部分をとても多くの方たちが気を配って補ってくださって今の本ができたということに、本当に深く感謝申し上げます。編集者としてともに作業してくださったキム・ヨンジュさんに特に感謝いたします。そしてBTSとARMYがいなければそもそも存在し得なかった本なので、その方たちには感謝だけでなく、このような機会を与えてくださって光栄だったとお伝えしたいです。

キム・ヨンジュ:BTSに関連した作業をしているすべての方たちがそうだと思いますが、今まで生きてきて一度も経験したことのない状況を、それぞれの分野で経験することになります。私もまたコンテンツを企画・制作していて出合える最大のスケールと、驚くほどさまざまな予期しない要素を、このプロジェクトを通して経験しています。目の前で繰り広げられ体験するこのすべての光景は、音楽の力、人の力、そして私たちがよく「愛」と称するその気持ちが生み出したのだということを知っています。他の方の手を経たとしたら、『BEYOND THE STORY』は今とはまた別の姿だったでしょうし、もしかしたらそのほうがもっと良い何かだったかもしれないと思います。ただBTSの時間をそっくりそのまま見せるために、一文一文自分なりに苦心して整えたということ、どうお見せすればいいか絶えず工夫を凝らしたということ、そしてその中心にはARMYたちがいたということが伝わるのであれば、私は自分の役割を果たしたと思います。BTSは『BEYOND THE STORY』の対象であり参加者ですが、彼ら以上のすべてのこと、特にその分厚い記録を記していったうち、半分のテーマはまさにARMYです。ですので、少なくとも私にとってこれは共同の記録です。翻訳に「出発語(原語)」と「到着語(翻訳語)」という表現があります。『BEYOND THE STORY』は韓国語から出発しました。世界各地で「私の言語」として到着し、今までより一層身近に届くこの記録を通して、ARMYをはじめ多くの方たちの心に、BTSの7人のメンバーたちがより深く根を下ろすことを願います。