ニューヨーク港に位置するガバナーズ島で開催されるガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルは、ニューヨークを代表する野外フェスだ。2011年にジョーダン・ウォロウィッツ、トム・ラッセル、ヨニ・ライズマンが始めたこのフェスティバルは、ジャンルを問わずにその年最も人気のあるアーティストを呼び、ニューヨークの有名レストランやフードトラックの参加を募って様々なイベントを提供する総合カルチャーイベントとしてお馴染みになった。当初はバンドのガールトーク（Girl Talk）やプリティ・ライツ（Pretty Lights）、エンパイア・オブ・ザ・サン（Empire Of The Sun）、マック・ミラー（Mac Miller）、ネオン・インディアン（Neon Indian）などが参加する小規模フェスだったが、2014年にアウトキャスト（OutKast）、ジャック・ホワイト（Jack White）、ザ・ストロークス（The Strokes）、ヴァンパイア・ウィークエンド（Vampire Weekend）などの大型バンドが出演したことで知られるようになり、翌年からはドレイク（Drake）、カニエ・ウェスト（Kanye West）といったヒップホップスターたちの活躍が続き、華やかな巨大音楽フェスへの足場を築いた。名前こそガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルだが、実は初回を除けばランドール島、シティ・フィールド、フラッシング・メドウズ・コロナ・パークなどに場所を移して開催されている。今年のガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルは6月9日から11日まで開催され、ヘッドライナーはリゾ（Lizzo）、オデッザ（ODESZA）、ケンドリック・ラマー（Kendrick Lamar）が飾った。6月10日、K-POPグループとしては初めてaespaが登場し、40分ほどのステージを披露した。この日、サブヘッドライナーとして日本出身シンガーソングライターのリナ・サワヤマ（Rina Sawayama）も出演した。

aespaはアメリカ大陸を横断し、また一つ、K-POPグループ初の米国フェス出演記録を打ち立てる。彼女たちは、8月11日から13日までサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークで開催されるアウトサイド・ランズ・ミュージック＆アーツフェスティバルの初日ステージを飾る。今年のヘッドライナーはケンドリック・ラマー、フー・ファイターズ（Foo Fighters）、オデッザと、ガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルに似ているものの、出演アーティスト数とフェスの規模はより大きい。2008年にサンフランシスコで初めて開催された「アウトサイド・ランズ・フェスティバル」は、初回のヘッドライナーにレディオヘッド（Radiohead）を掲げ、瞬く間にサンフランシスコを代表するフェスとなった。もちろん赤字によって規模を縮小したり、偽造チケット取引が盛んに行われるなどの問題もあったが、現在はバラエティ豊かなイベントを楽しめるエコフェスティバルとしてその地位を確立した。ガバナーズ・ボール・ミュージック・フェスティバルと同様、選ばれしジャンルミュージシャンらが招待され、ステージを繰り広げる。

韓国アーティスト初となった米音楽フェスのヘッドライナーステージといえば？ 2022年7月31日、ロラパルーザ・シカゴ4日目のJ-HOPEによるステージだ。前日の7月30日には、TOMORROW X TOGETHERが韓国グループ初となるロラパルーザデビューを果たした。1991年にロックバンド、ジェーンズ・アディクション（Jane's Addiction）のボーカル、ペリー・ファレル（Perry Farrell）のアイデアから始まり、シカゴからアメリカを代表するフェスブランドにまで成長したロラパルーザは、多様なジャンルのミュージシャンが集まる総合音楽フェスのコンセプトを掲げ、全世界の様々な都市で開催している。2010年にチリへ進出し、以降ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、スウェーデン、そしてイスラエルやアジアにまでフェスのフォーマットを輸出した。今年のロラパルーザには、計4チームのK-POPグループが登場する。まず、7月21日から7月23日まではボーイズグループのStray Kidsがロラパルーザ・パリで初めてヘッドライナーステージに立つ。8月3日から8月6日まで、計170チームあまりが登場するロラパルーザ・シカゴには、TOMORROW X TOGETHERとNew Jeansが登場する。TOMORROW X TOGETHERは米音楽フェス進出1年目にしてヘッドライナーとしてステージに立ち、New Jeansはデビュー1年目にして米音楽フェスで北米のK-POPファンダムの目の前に現れる。

様々なジャンルの総合音楽フェスがトレンドとしての地位を確立した現在、「ロックフェスティバル」という名前にはなぜか時代遅れの印象が漂う。しかし、歴史と伝統を誇る音楽フェスとなると話は別だ。1997年から現在に至るまで、日本を代表する音楽フェス、日本初の野外ロックフェスとしてその価値が認められているフジロックフェスティバルだ。後述するサマーソニックと並んで日本を代表する夏フェスの二大巨頭として君臨しており、最大観客数も14万人以上を記録している。ガバナーズ・ボール・フェスティバルと同じく、フジロックフェスティバルも富士山で開催されたのは1997年のたった一度だけだという事実が面白い。初回の天神山スキー場で開かれたフェス会場には、勢力の強い台風と豪雨が吹き荒れ、多くの観客とアーティストが苦しまされた。翌年、場所を東京湾豊洲の東京ベイサイドスクエアに移したが、蒸し暑い日本の夏の気候に足を引っ張られた。1999年以降は新潟県の苗場スキー場に定着し、現在まで開催を続けている。ロックフェスティバルという看板とは異なり、最近は多様なジャンルのアーティストが参加してステージを繰り広げている。今年はRMが参加した「SEXY NUKIM」でK-POPファンに名を知らせた音楽クルーBalming Tigerが、韓国歌手としては唯一フジロックフェスティバルのステージに立つ。

自然の中で開催されるフジロックフェスティバルと反対に都心で開催されるサマーソニックは、日本を代表するグローバル音楽フェスだ。2000年、日本のミュージシャンと世界的なミュージシャンの交流を掲げて登場したサマーソニックは、日本の東の千葉と西の大阪で同時に行われる開催形態で知られている。計2日間の日程のうち、初日公演を終えたアーティストは翌日、他の都市に移動してステージに立つ。音楽ファンは同じアーティストラインナップを2つの都市で楽しむことができ、アーティストたちは、東京にほど近い千葉と大阪という日本指折りの大都市で、多くの観客に自分の音楽と名前を知らせることができる。千葉ではZOZOマリンスタジアムと幕張メッセ、大阪では舞州ソニックパークで公演が行われる。運営は、マリンステージ、オーシャンステージ、ソニックステージ、レインボーステージ、ビーチステージなど様々なステージの呼称を統一し、両都市を訪れる来場者の便宜を図った。K-POPファンにとっても、サマーソニックは多くのアーティストが出演することでお馴染みのフェスだ。INFINITE、MONSTA X、THE BOYZ、SEVENTEENなどがサマーソニックのステージに立った。昨年はTOMORROW X TOGETHER、CL、ZICO、KANGDANIEL、Seoriが韓国アーティストとして参加している。今年はNew Jeans、TREASURE、ENHYPEN、TAEYANG、KANGDANIELがステージに上がる予定だ。

ロンドンのハイドパークで開催されるブリティッシュ・サマータイム（British Summer Time）フェスティバルは、2013年から6万5000人以上の観客が訪れるイギリスの代表的フェスティバルだ。ロンドンを代表するハイドパークで、6月末から7月までの一週間にわたって開催されるこの名高い音楽フェスは、イギリスの人気ミュージシャンをヘッドライナーに据え、ジャンルの区分なしに様々なアーティストたちが登場してステージを盛り上げる。2023年6月23日から7月9日まで開催されるブリティッシュ・サマータイム・ハイドパーク・フェスティバルで注目のアーティストは、BLACKPINKだ。すでに今年、アメリカ最大の音楽フェス「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」で、K-POPグループ初となるヘッドライナーステージを披露して記録を残したBLACKPINKは、ブリティッシュ・サマー・タイム・ハイドパーク初の韓国アーティストおよびアジアグループ初のヘッドライナーとしてステージに立った。