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『ムービング』、隣の超能力者たちの世界
今週のドラマ、音楽
2023.08.25
Credit
文. ユン・ヘイン、キム・ドホン(ポピュラー音楽評論家)
デザイン. チョン・ユリム
写真. Disney+
『ムービング』(Disney+)
ユン・ヘイン:チョンウォン高校3年生のキム・ボンソク(イ・ジョンハ)は、高揚すると体が宙に浮いてしまう。豚カツ屋を経営する母ミヒョン(ハン・ヒョジュ)は息子の能力が世間に知られぬよう、食事をたくさん取らせて体重を増やし、足首にアンクルウェイトをつけて身体が浮かないように工夫する。能力のコントロールが難しい息子は何かと宙に浮きそうになり、彼にその能力を譲った母は、我が子が地に足をつけて生きられるよう懸命に努力する。カン・プルによる同名ウェブ漫画が原作で、カン・プル本人が脚本を担当した『ムービング』は、超能力を持つ親とその能力を受け継いだ子供の物語だ。超能力を持った子供たちがとある理由で集まるチョンウォン高校を舞台に、国家情報院を引退した親世代の超能力者たちが、謎の殺し屋フランク(リュ・スンボム)に次々に殺される中、チョンウォン高校に転校してきたチャン・ヒス(コ・ユンジョン)とチキン屋を経営する父親ジュウォン(リュ・スンリョン)に隠された能力と過去が少しずつ暗示され、物語が広がっていく。超能力者の物語ではあるが、彼らは学生や自営業者といった平凡な日常を生きる人々であり、親は子供が変わらぬ日常を生きていけるよう心を砕く。それゆえ幼い頃のボンソクに、どんな能力よりも「他人の心を理解する能力」が大切だと話す母ミヒョンの台詞は、『ムービング』のヒーロー観であると同時にメッセージだ。親が子世代に譲らなければならないのは、非凡な能力ではなく善良な態度と正しい心、そして危険な世界から切り離された日常だ。回を重ねるほど、当初は関係なさそうに見えた多くの人物や事件の関連が明らかになり、スケールの大きい物語が展開するカン・プル作品特有の魅力がドラマにも生かされている。先行公開された7話まではボンソクやヒス、フランクを中心として現在の事件が、8話からはミヒョンやジュウォンといった親世代の過去が本格的に語られる。Disney+で現在、11話まで公開されている。
Soul delivery – 『Peninsula Park』
キム・ドホン(ポピュラー音楽評論家):ブラックミュージックバンドSoul delivery(ソウルデリバリー)は、集まってこそより輝ける方法を探求するグループだ。彼らが志向するものは、一方的な配送(デリバリー)や強い自己主張ではない。SHINDRUM、Joon’s Second Life、HAEUN、チョン・ヨンフンの4人からなるこのバンドは、音楽という言語で通じあう経験から生まれた。聴く者はその旅路を共にする仲間になる。様々なライブコンテンツを公開したり、ソウルミュージック・アンサンブルを行ったりなど、彼らのアプローチは親しみやすく心地よい。ロンドンでの1か月間の共同生活によって制作した2作目『Peninsula Park』は、彼らの魅力に満ちた新譜だ。スタジオでのジャムセッション、あるいはNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)ミュージックの『Tiny Desk Concert』をリアルタイムで聴いているかのような作品だ。計3回のサウンドチェックを経て、インスト曲とボーカル曲を交互に配置した有機的な流れの上に、R&B、ジャズ、ソウル、ファンク、ブルースの自由な交差点が広がる。気の合う面々と挨拶を交わし、スタジオにやって来た友人らと想像の翼を広げながら自然とスピリチュアルな創作に没入する。デビュー作『FOODCOURT』で頼もしいボーカルを披露したSOLEとTHAMAはもちろん、ベテランミュージシャンのJINBO、ユン・ダヘ、RuRuも参加している。ジャズフルーティストのコ・ユジンが参加した「Impossible Espoir」は、クロード・ボリングとジャン=ピエール・ランパルのコラボレーションをブラックミュージックで再解釈したような心地よさが感じられる。共同体の危機が叫ばれる昨今だ。美しい音楽とともに団結しなければならない。
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