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文. ソン・フリョン, キム・ユンハ(ポピュラー音楽評論家), キム・ギョウル(作家)
デザイン. チョン・ユリム
写真. AKMU Instagram

『AKMU みんなの兄妹なんでもする』(AKMUの公式チャンネル)

ソン・フリョン:AKMUがデビュー以来、初めて公開するオリジナルコンテンツ『AKMU みんなの兄妹なんでもする』が見せるコンセプトは明確だ。本格的なAKMU「兄妹力」向上プロジェクト。すでに2回の失敗を経験し、今後も失敗する可能性が非常に高いように見えるこのミッションは、LEE SUHYUNの言うとおり「わざと兄妹力をもっと落として、オリジナルコンテンツを続けていこうとする制作側の目論見」なのかもしれない。だが、面白いことに、『AKMU みんなの兄妹なんでもする』で断然目立つものはLEE CHANHYUKとLEE SUHYUNの「兄妹力」だ。LEE CHANHYUKの一日マネージャーになったLEE SUHYUNがマッサージを口実に、横になっているLEE CHANHYUKの背中に乗って足で踏みつけたり、静かにしろとLEE CHANHYUKからいきなり「ホーム○ンボール」を投げつけられても一切打撃を受けず、にっこりと笑いながら落ちた「ホーム○ンボール」を拾って食べるLEE SUHYUNの姿は、彼らが「家族(のような)関係」だからこそ見せられる場面だ。初回のエピソードでそれぞれお殿様と下僕になって展開したコントは、まるで夕方になるとテレビの前に家族が集まって観ていたコメディドラマのようにも見える。例えば、下僕役として雑用を一人で抱えるようになったLEE CHANHYUKが「与えられた環境に座り込んだままでいてはいけません」という教訓を述べると、LEE SUHYUNが透かさず「なら、殿の私はしばらく座り込んだままでいます」と平然と言い返すなどの「言葉のやり取り」が動画の最初から最後まで絶え間なくつづく。このように9年以上を共にしてきた職場の同僚であり、家族でもある奇妙な関係性から生まれる「兄妹の相性」は、日常とコントの境界をまたぎながら誰もが楽しく見られる愉快な画を作り上げる。「AKMUまた喧嘩」、「服従」、「順位決め」のように、一見するとずいぶん刺激的なサムネイルの中の文言を見ても、笑みを浮かべて気軽に動画をクリックできる理由だ。

Lee Jin Ah『Hearts of the City』

キム・ユンハ(ポピュラー音楽評論家):誰もが覚えている強烈なデビューは、音楽家にとって祝福だろうか、呪いだろうか。音楽界にあまりにも多く、いちいち数えることすら無意味に思えるこの縛りの真ん中に、シンガーソングライターLee Jin Ahも立っている。SBS『K-POPスター4』に出演し、注目を集めたときから早くも10年が経とうとしているが、大衆の記憶の中のLee Jin Ahのイメージは、依然として子供のような声を持つ独特な感性の音楽家にとどまっている。関心は固定観念に、スポットライトは影になり、長い尾を引いた。着実にシングルとアルバムをリリースしてきたにもかかわらず、Lee Jin Ahを「独特な歌手」以上の何かとして位置づける人は極めて珍しかった。

 

フルアルバムとして5年ぶりにリリースする『Hearts of the City』は、そうしておとぎ話の中に永遠に取り残されそうだったLee Jin AhとLee Jin Ahの音楽が、ようやく自分を閉じ込めていた殻を破り、秘めていた大きい翼を思いっきり広げる作品だ。アルバムから伝わる彼女の音楽的、情緒的成熟は、安定した愛が同時に感じさせるぬくもりと不安を歌う最初の曲「My Whole New World」を聴いただけでわかる。昨年、不意に訪れたというスランプは、それまで自分の目にだけ映る輝きを探してあちこち飛び回っていたLee Jin Ahならではの純粋な感性を、ぐっと成長させた。Lee Jin Ahの特長である声と一寸先も読めない、弾けるような曲の展開はそのままで、それらを音楽として表現していく方法がいつにも増して親切で優しく感じられる。Stella JangやPARKMOONCHI、Sarah Kang、Lee Hyo Ri、Lee Sang Soonといったいろんな仲間たちの温かいサポートもアルバムの体温を1度高めてくれる。

『共産主義者が来る!(原題)』-イ・シンジュ

キム・ギョウル(作家):タイトルだけを見るとどこか不謹慎に見えるが、いざその内容は少しちがう意味で不謹慎だ。2018年、第3回韓国科学文学賞中短編部門で大賞を受賞したSF作家イ・シンジュの短編集で、計12本が収録されている。それぞれの作品はSFで見られる独特な題材を粘り強く推し進め、読者に知的快感を届けてくれる。言語の駆使を通じて人々の認識を変えようとする秘密組織、食品開発会社が開発した「パーフェクトフード」、エビの姿で現れた「万能細胞」、普通の人間とはちがって(!)一つの体に人格が一つしかない「単一性アイデンティティ障害」などの題材はそれだけでも興味深いが、真面目なアプローチと充実した蓋然性が加わり、没入感を生み出す。「おもしろい」や「悲しい」といった感情では説明しづらい苦い後味から人間という存在を改めて考えさせられる作品だ。物語に夢中になって読んでいると、いつの間にか自分と社会、世界に対して不思議な問いかけをするようになる本。