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文. イ・イェジン
写真. HYBE LABLES YouTube
  • © HYBE

去る11月18日、HYBEとユニバーサルミュージックグループ(UMG)傘下のゲフィン・レコードとの合作ガールズグループのデビュープロジェクト『The Debut: Dream Academy(以下『Dream Academy』)』がWeverseとYouTubeのHYBELABELS+チャンネルなどで生中継された「Live Finale」を最後に、3か月余りの長い道のりを終えた。オーディション参加者のうちソフィア、ララ、ユンチェ、メーガン、ダニエラ、マノンがガールズグループ「KATSEYE」のメンバーに選ばれ、デビュー過程を経る予定だ。アメリカで活動するK-POPガールズグループを作るために、世界各国から集まった20人の出演者たちがオーディションを受けるという発想は、それ自体で新たな試みだった。「ずいぶん前から、K-POPの方法論に基づいて多様な出身の人材を育成し、彼らとともにK-POPスタイルのグローバルグループを作りたいと思っていた」というHYBEパン・シヒョク議長の言葉通り、『Dream Academy』はK-POPアーティストだけでなく、K-POP制作システムのグローバル化についての一種の実験であり、検証でもあった。さまざまな国や人種のオーディション参加者たちがBLACKPINK、LE SSERAFIMなどのK-POPガールズグループの曲をこなし、最後には『Dream Academy』のために作った「Girls Don’t Like」、「Dirty Water」、「All the Same」の3曲を披露する過程は、『Dream Academy』を見守る視聴者たちや参加者はもちろん、T&D(Training & Development)を担当するHYBEにとっても新たな経験だった。

 

アメリカのポップス市場では、才能がある程度発現したアーティストを発掘して、すぐにデビューできるようマネージメントするのが一般的だ。その分、個人個人がアーティストになるまで長期間にわたり多方面の力量を開発し育成する韓国の「T&D」の概念は希薄だ。それ故、プロジェクト進行の初期段階から戦略樹立を担当したイン・ジョンヒョン主席クリエイティブプロデューサー(Head of Creative Production)は、HYBE T&D事業室でまとめたT&DシステムのA to Zに関する文書をもとに、丹念に現地システムを構築しなければならなかった。「現地のT&DチームにHYBE T&Dシステムの細かい内容を理解させる過程から始めなければなりませんでした。韓国のT&D事業室と定期的なミーティングを通して、具体的な実行経路と障害となる事項などを共有して、私たちのシステムを構築していきました。結果的に今のシステム自体は、既存のHYBEのものと性質を一にします。ちがうのは方向性でした」。『Dream Academy』の参加者募集のために行われたグローバルオーディション及びスカウトでの練習生選抜基準は、その方向性が何なのかを暗示している。例えばアイドルのスカウトで重要な要素の一つと考えられるビジュアルの場合、オーディションの審査委員たちは、既存のK-POP市場の特性を一定部分考慮しながらも、基準を限定しないままで多様な可能性を広げておき受験者を評価した。一方ボーカルは、イージーリスニング系のアップビート・ポップスをどれほどうまく活かし、歌いこなせるかを評価するなど、明確な基準点を設けた。イン・ジョンヒョンプロデューサーによると、「音楽はアメリカ現地のリスナーたちが幅広く消費しているポップスに近く、パフォーマンスはK-POPに近く」進めるガールズグループという全体的な方向性に相応しい人材を選別するために悩んだ結果だ。ダンスの場合、今後K-POPで要求するレベルの高いパフォーマンスをこなせるか、成長の可能性を見極めるために、ダンスが全くできない受験者たちにも簡単なチュートリアルに従って踊らせ、基本的なセンスを確認したりもした。K-POPアーティストのスカウトで重視する「潜在的な可能性」を捉える方法だ。イン・ジョンヒョンプロデューサーはそのような過程を「HYBEシステムをカスタマイズすること」だと要約した。

「ショーケース(SHOWCASE)」、「チーム(TEAM)」、「芸術性(ARTISTRY)」、全部で3つのミッションで構成された『Dream Academy』は、参加者たちのスタイリングから舞台セット、カメラの構図まで、丁寧に制作した映像を審査委員に披露して評価される。「視聴者がパフォーマンスを一つだけ見た時にも満足できるほど、視覚的に惹きつけられる『質』で勝負をしなければなりませんでした。何よりミッションを重ねながら、毎回のパフォーマンス・ビデオごとにより発展したクオリティを見せ、最終的にはそのクオリティが独立したコンテンツのレベルでなければならないと考えました」というイン・ジョンヒョンプロデューサーの話は、オーディション段階でダンスの経験が皆無だった参加者も、『Dream Academy』出演のために相当な期間のトレーニングが必要だったという意味でもある。『Dream Academy』のT&Dを総括するミッシー・パラモ(Missy Paramo)シニアT&Dプログラムマネージャーによると、参加者たちは初期に動作の統一性、ディテール、魅力、エネルギー・コントロールなどを含むK-POPパフォーマンスの原理と動きを理解することに難しさがあるため、多くの時間投資と研究が必要だった。そのためにトレーニング・システムを個別化し、参加者の足りない点にフォーカスして迅速に改善できる方向で指導した結果、急速な成長を体感できた。『Dream Academy』プロジェクト進行のためにHYBEのT&Dシステム伝授を担当したHYBE T&D事業室シン・ソンジョンHead of T&Dは、「個人個人のスタイルをしばし置いておいて、一定のレベルに到達するまで、リズム、拍子、ラインの正確な表現のために基本のテクニックを磨く過程」が重要だったと言う。グループで同時に数人がダンスをするためには、単純に腕を伸ばす時もどんな角度とニュアンスで伸ばすべきかを正確に理解して、動きを見せなければならないということだ。ただし動きを正確にすることがパフォーマンス・トレーニングの究極の目標ではない。イン・ジョンヒョンプロデューサーは、「最終的には完全な一糸乱れぬ群舞というよりは、ある程度メンバーごとに自律性を持たせたパフォーマンスをすることになったとしても、動きを細かくコントロールして、きれいに踊れる技量があってこそ、結果的にグループと各自の個性を効果的に見せられると思いました。そのようにトレーニングをしてこそ、参加者たちが持っている可能性が開けるので、その土壌を磨いてあげるんです」と語った。一方ボーカル・トレーニングは、HxG(HYBE x ゲフィン)の現地のネットワークを通して繋がったボーカル・プロデューサーとトレーナーが指導するなど、参加者たちがポップス市場に訴求できる力量を育てることにフォーカスした。

デビューを成功させるためには、テクニック的な領域だけでなく、精神的な部分でのトレーニングもまた必要だった。国籍から音楽の経験まですべてが異なる人たちを対象にトレーニングをするためには、既存のK-POPトレーニングとはまたちがい、体系的な教育と管理が必須だった。「メンタルヘルスケアは、彼女たちがそのトレーニングに耐えなければならない過程にも必要で、参加者たちの最高の能力を発揮できるようにサポートします。さらには彼女たちがグローバルスターになってからも、極限まで追い込まれる環境で、長期的なキャリアを維持するために備えられるようにしたいと思いました」。そうミッシー・パラモマネージャーが話すように、参加者たちには教育、ライフ・コーチング、カウンセリング分野の専門家が割り当てられ、密接なコミュニケーションを通して情緒的なサポートが提供された。それは既存のHYBE T&Dシステム内の練習生のカウンセリング・プロセスを、未成年者を中心に構成された参加者たちのメンタルヘルスの問題を特に重視するアメリカの文化的特性に合わせて強化したケースだ。

 

その結果、参加者たちは初めて経験する厳しいスケジュールとレベルの高い練習にも、それほど困難を感じることはなかった。「空手、ダンス、スポーツなどのさまざまな分野の中で、規律と厳しいトレーニングが体にすでに馴染んでいる経験のある参加者たちは、そのすべての過程が本当にアーティストとしてのキャリアの準備のために必要だということをよく理解していました。彼女たちのマインドが他の参加者たちにも良い影響を与えましたね」。ミッシー・パラモマネージャーによると、参加者たちの多様性がむしろ新たなトレーニング・システムに適応し融和するのに役立ち、トレーニングに対する期待値を引き上げるのに重要な役割を果たした。例えば演技経験のある参加者は自分をカメラの前で表現することに慣れているように、文化的に多様な背景や経験、個性は音楽をより豊かに表現できる下地となった。イン・ジョンヒョンプロデューサーは、普段からインタビューを行う時に躊躇うことなく自分の考えを表現していた参加者たちの姿が、歌とダンスにもそのまま表れていると語った。「参加者たちが自分を表現する姿も自然でしたし、その個性を音楽的にも表現できると感じました。自由な表現を促すと同時に、グループにもうまく溶け込ませることのできる方向に、トレーニング方法を発展させようと思いました」。イン・ジョンヒョンプロデューサーはプロジェクト初期に、アジア文化圏中心に行われていたK-POPスタイルのT&Dが、より多様な文化的背景を持つ参加者たちにどのように受け入れられるか、ずいぶん悩んだ。しかし今彼女は、「時間と段階がもっと過ぎて初めてわかるだろうが、今まではそれほど変わらなかった。現地でも作動可能なシステム」だと暫定的な結論を出す。そしてミッシー・パラモマネージャーは、『Dream Academy』のすべての過程を経て確立したHxGの哲学について説明した。「私たちのT&D哲学は、参加者たちが絶対に『自分ではない人』にならないようにすることです。私たちは彼女たちをガイドして発展させるのに手助けをしますが、それは参加者自らの願望と目標に由来するものでなければなりません。私たちはいつもレーベル対参加者の構図ではなく、最高のグローバルガールズグループを作るということ、たった一つの目標に全員が一丸となって集中してきました」というイン・ジョンヒョンプロデューサーの話の通り、「すべての瞬間がいばらの道」のようだった過程を経て、新たなK-POPシステムが誕生したのだ。