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文. ランディ・ソ(ポピュラー音楽解説者)
写真. BANGTANTV YouTube

JIMINを一つの単語で表そうとすると、「魅惑」が思い浮かぶ。魅力的なルックスや磨き抜かれたダンスもそうだが、私は彼の歌う声が一番好きだ。JIMINの声からは魔性が感じられる。その特有の声紋は、細いペンで力を入れて書いた字体のようにか細いながらもきっぱりとしていて、そこから来るヒステリカルな美しさがある。それがカリスマ性として作用し、通りすがりに聞いてもふと振り返ってしまう。どの歌に使われても彼の声には「光」のような存在感がある。それは星のように小さくきらめく時もあり、突き刺すように光る時もある。最近の映画『ワイルド・スピード』シリーズのOSTに収録されている「Angel Pt. 1」でも、ペンタトニック・スケールで書かれたAパートの繰り返しを担当した彼は、同じメロディに声だけでいきなり閃光のようなイメージを加える。彼が持つ声はそういう声だ。 

10年間のアイドルJIMINのキャリアを彩るすばらしい瞬間がある。別名「333」と呼ばれる「Burning Up (FIRE)」のミュージック・ビデオの3分33秒からのシーン、ダンスとボーカルと表情の演技の三拍子が絶妙な調和を成す「Blood Sweat & Tears」の導入部、桜の花びらが散るような「Spring Day」のソロダンス、凄まじいまでの「Black Swan」の表現力、そして「Perfect Man」のカバーや扇を使った踊りなど、授賞式と年末ステージの中の数多くの「レジェンド」ステージ。K-POPアイドルのステージ・パフォーマンスですでにJIMINは一家を成した職人であり、一時代を代表する大衆芸術家の一人として挙げられるほどの人だ。JIMINが放つステージの魔法、その輝く瞬間が誘う感嘆は、「究極のアイドルアーティストがいるとしたらこういう人だろうか」と思わせる。

 

だが彼は完璧なステージを作るために、それ相応の不安と緊張を抱えて生きてきたようだ。コンサートのソロステージや年末の大舞台の前後の舞台裏映像の中の彼は、時折苦しそうに見えた。その後人々の間で高い完成度で話題になったステージでもそうだった。最近『SUCHWITA』のTAEMIN編(JIMINがサプライズ出演している)で、SUGAは普段から彼がステージに上がる前に、「(年上メンバーたちが)祈りながら見てるんだよ。JIMINさん、どうかステージの上で緊張しないでと言っている」と話したりもした。JIMINはK-POPパフォーマーとしてこれ以上すばらしいものはないと思うステージを何度も経験したにもかかわらず、より完璧な作品を創ろうと気を揉む人だった。だからこそさらに一生懸命練習に邁進したとも言う。彼のそのような完璧主義の性格は、ステージを作る原動力であり、彼を悩ませる不安という諸刃の剣だったのだろう。

BTSの「チャプター2」が始まり、JIMINは初のソロスタジオ(EP)アルバム『FACE』をひっさげて登場した。これまでBTSのアルバムに収録されていた彼のソロ曲を考えると、ソロアルバムも何か美しく装飾的なポップソングを収録するのではないかと期待していた。だが『FACE』は期待を裏切るサプライズだった。何人かの作曲家から曲を提供してもらうことなく、約10か月間同じ事務所のプロデューサー3人と苦楽をともにしながら、少しずつ作り完成させたこのアルバムは、そのタイトルの通りJIMINの「素顔」を盛り込んだ。彼が今まで経験した不安と緊張、人間関係の憂鬱などを避けずに、ついに直面するという意味もあるだろう。Weverseに公開された「Jimin’s Production Diary」は、その過程を収めた作業記だ。アルバムのタイトルも、さらにはドキュメンタリーのタイトルも正直この上ない。JIMINはステージ上の魔性の存在や「究極のアイドルアーティスト」としてではなく、BTSという学校の中で音楽を学んだ学生であり、BTSのやり方でファンたちと交流しながら育った人間として、そのソロとしてのキャリアのスタートを切る。

『FACE』はBTSの「チャプター2」としては3番走者で、BTSの「ボーカルライン」としては初のアルバム発売だった。BTSにはRM、SUGA、J-HOPEで括られる「ラップライン」と、JIN、JIMIN、V、JUNG KOOKで括られる「ボーカルライン」がある。2つの「ライン」の間には厳格な線が引かれているわけではない。だがグループ結成初期、概ね「ラップライン」の中心は過去にラップグループを準備していた頃から作って入ってきたヒップホップに、「ボーカルライン」の中心は2010年代のK-POPアイドルに近かった。これらのメンバーの出会いによって、BTSはすでにグループ内部で、2013年当時としては融和が不可能だろうと思われていたヒップホップ・ジャンルとアイドル・ジャンルの化学作用を経験していた。

デビューして数年間、概して音楽を作るのは「ラップライン」の仕事だった。「ラップライン」はBTSの「チャプター2」以前に、すでにそれぞれ1枚以上のミックステープを出して、セルフプロデューシング・アルバムに似た作業を経験している。「ボーカルライン」もまた徐々にアルバムにソングライティングとして参加したり、自作曲の音源を発表していった。まだ「チャプター2」のソロアルバムの話が出ていなかった時も、メンバーたちはいつか自身がプロデュースしたミックステープを発売する未来をよく語っていた。「チャプター2」でも、ミックステープのようなセルフプロデューシング・アルバムを出すのか、外部の助けを得るのか、両方の選択肢があったものと見られる。JIMINもまた準備過程では、アイドルとしてできるパフォーマンスに焦点を合わせたアルバムを考えたりもしたと言う(コメンタリー映像)。

だが最終的に彼は、自分の話を盛り込んだ音楽を作ることに、それを一つにまとめたアルバムを作ることにした。彼がアコースティックギターをベースにした初の自作曲「Promise」を発表したのが2018年の末だった。音源公開後V LIVEで明かしたところによると、彼は抑えられていた感情が曲の制作作業と発表を通して解放される経験をしたと言う。『FACE』はその延長線にあると見ることができるだろう。BTSの7人全員がソロプロジェクトの作品を一つ以上発売した現時点から振り返ると、彼は3人の「ラップライン」の後に、自身のことを率直に告白するセルフプロデューシング・アルバムを発売した最初の「ボーカルライン」のメンバーとなった。

プレッシャーや重圧感は相当なものだったと推測する。だが「Jimin’s Production Diary」の記録の中のJIMINは、ただただ苦しんでいるばかりではない。創作の苦しみもあるが、喜びや楽しさも明らかに見える。ドキュメンタリーの中のJIMINは、多くの人と満遍なく会うというよりは、信頼できる少数の人たちと付き合いながら作業に邁進する。人間関係に疲れ、失望した出来事とその感情は、アルバムを構成する主要なテーマの一つだ。それでも時が経つにつれ、JIMINは関係を通して回復する。作業したビートに楽しくなって、プロデューサーたちとその場で踊ったり、「これ、すごくおもしろい」と声に出して言う。音楽を作る楽しさにリアルタイムで気づいていく姿が印象深い。ほとんど住んでいるのも同然だったプロデューサーPdoggの家やJIMINのリビングルーム、事務所の作業室、レコーディング・ブース、そのように決まった何か所かの単調に見える環境の中でも、JIMINは喜・怒・哀・楽をすべて経験し、アーティストとしてもまた一人の人間としても成長する。

 

ドキュメンタリーは、彼のアルバムが出るまで助けてくれた人たちも一緒に映し出す。ドキュメンタリーのほぼすべてのフレームに一緒に映っているBIGHIT MUSICのプロデューサーたち、Pdogg、GHSTLOOP、EVANと集まって車座になり、アイデアを出し合ってその場で音楽を作り出す過程は、バンドが一緒に音楽を作っていく過程と似ているように見える。実際にJIMINはドキュメンタリーの公開後にWeverseで提供した「QUIZ SHOW」の映像で、10か月間苦楽をともにしたこの4人のことを「スメラルドガーデン・マーチングバンド」という名前で紹介している。BIGHIT MUSICは時折決定的な瞬間に、そのようにインハウスの力だけで集中的に作業した曲を出している。2018年のアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』のタイトル曲「FAKE LOVE」のようにだ。そのような制作過程を考えると、ソングキャンプやA&Rの収集によりクレジットに多くの名前が並ぶ最近のK-POPと比べた時、妙に閉鎖的で内向的なアルバムの雰囲気に納得が行く。そのようなアルバムがビルボードHOT100をはじめとする各種チャートのトップを飾ったという事実も改めて興味深い。

 

BTSのメンバーたちも姿を見せる。RMはタイトル曲の序盤の歌詞がうまくいかない時に現れて、決定的なアドバイスをしてくれる。「JIMINさんの意図が手の中になければならない」、「歌の物語をしっかり作って」、「たたき台を書いてみて」。JIMINが書いて送ったありのままの感情を、RMが整理してくれたりもしたと言う。JUNG KOOKは、JIMINがARMYのために準備したファンソング「Letter」に、近所の年下の友だちの如くいつものように登場し、何とも豪華なコーラスを飾ってくれた。「チャプター2」の第一走者で、アルバム『Jack In The Box』を出したJ-HOPEは、「まず出してみたら、どの部分から努力し直すべきかが明確に見える」と言い、初めての巨大な挑戦を前に途方に暮れるJIMINに、温かくも現実的なアドバイスを伝えた。コメンタリー映像では、「Set Me Free Pt.2」の最初のアイデアにSUGAのラップのフィーチャリングがあり、そのため歌のタイトルがSUGAのミックステープ『D-2』の収録トラック「Interlude : Set me free」と繋がっているというおもしろい裏話も公開された。

 

ドキュメンタリー全体で際立つのは、彼の粘り強い一面だ。初めて準備するアルバムに歌詞が浮かばず、身もだえして明け方が過ぎてしまっても、彼はめったにできないと言わない。パフォーマンスを努力でがむしゃらに練習したように、作詞やソングライティングもそうやって粘って結局やり遂げる方法で作業したようだ。パフォーマンスの時とちがう点があるとしたら、ソングライティングは、作品を創りながら自分の感情と向き合い、吐き出す過程を経たであろうという点だ。JIMINはコメンタリー映像でそれを、「毎日日記を書く子が日記帳を見せる感じ」と表現した。ありきたりの言葉のようだが、「毎日」という単語から準備過程が至難の道であったことが感じられる。

 

BTS全員が公演がたいへん好きだということはよく知られている。歌とパフォーマンスでステージに立つ時の喜びには、観客ARMYと直接会うという条件がある。ソングライティングやプロデューシングは、その観客、あるいは鑑賞する人たちとすぐには会えず、遅れてくる未来の出会いを期待する過程だ。コロナにより世界が閉ざされた扉の後ろで息を殺していた時間の間、JIMINはキャリア史上最も激しい心労を経験したと伝えられている。だが『FACE』を作るために彼は再び自発的に扉の後ろに入っていった。そもそも自分の内面を振り返るのは難しいことだ。精神的につらかった時期を再び思い出して、その時の感情とまた向き合い、その中に入っていって歌うことが苦しいのは当然だ。だがソングライティングのテーマが必ずしも内面の告白である必要はないにもかかわらず、JIMINはそうすることを選択し、誠実に自分の前の課題を遂行した。BTSの初期にRMが『RM』を出し、SUGAが『Agust D』を出したように。当然そうすべきだというように。

 

「Jimin’s Production Diary」をすべて見た後は、『FACE』を出したJIMINは以前の彼とは明らかにちがって見える。それ故、依然として不安と緊張はあっても、心の重荷と一度は向き合って開放感を感じた彼ならば、この次に迫ってくる新たな課題を前に崩れないだろうというおぼろげな確信が湧いてくる。成長型マインドセットがよりしっかりと定着した後のJIMINの次の歩みが楽しみだ。彼のボーカルが好きな私としては、すでに持っている魔法のような声に新たな一面が加わるだろうという期待で特に楽しい。JIMINのように歌える人は、断言するが世の中にJIMINしかいない。制作作業と活動の過程で自分自身の中を開いてみて、また切り取ってみたので、そこから得たデータでまた熾烈に次の準備をする彼を、今はわかるような気がする。

ドキュメンタリー全体で一番記憶に残っているシーンは、アルバムの制作作業を終え、「これから何をすべきかがもう少し明確になるきっかけとなったと思う。やりたいことがもっと増えたと言えばいいかな?」と付け加える部分だ。JIMINは、そうして多くのことを成し遂げ、またそれよりも多くの困難を経てきたにもかかわらず、今も変わらず夢見る目をしている。

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