Credit
文. ソ・ソンドク(ポピュラー音楽評論家)
写真. Brenda Lee YouTube

この10年間、ビルボードHOT100の最も印象的な変化のうちの一つは、年末チャートの上位圏におけるクリスマス・キャロルの活躍だ。もちろん、ストリーミングのおかげだ。かなり昔から冬になると、誰もが半ば強制的にクリスマス・キャロルを聴いていた。それでも、季節的なラジオ成績やアルバム、音源の一時的な売上がチャートに影響を及ぼすほどではなかった。しかし、ストリーミングは人が聴くという実質的な消費行動を測定可能なものに変え、チャートがその指標を受け入れた。いわば、クリスマス・キャロルのチャート支配力は、ストリーミングが音楽消費の普遍的プラットフォームになった歴史の中で最も鮮明な地層だ。 

その中心には当然、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」がある。同曲は1994年、マライア・キャリーのクリスマス・キャロル・アルバム『Merry Christmas』の収録曲として発表された。当時としては、トップクラスのミュージシャンにとってクリスマス・キャロル・アルバムはさほど真剣なプロジェクトにはならなかった。しかし、商業的全盛期にいたマライア・キャリーは、『Merry Christmas』をビルボード200の3位にまでのし上げた。「All I Want For Christmas Is You」はミュージックビデオが制作されるなどしたアルバムの代表曲で、ラジオチャートでも良い成績を上げた。だが、公式的なフィジカルアルバムの形態でシングルが出されたことはない。当時のHOT100では、フィジカルな形態のシングルアルバムがないと認定資格を得られなかったため、当然ながらHOT100にチャートインしたことはない。その後も同曲がホリデー・プレイリストの一部にはなったが、商業的成功という側面ではマライア・キャリー本人を含め、誰もがこの程度で満足していたはずだ。

ところが1998年、HOT100認定のためにシングルのフィジカルアルバムを求めるルールがなくなる。「All I Want For Christmas Is You」は2000年1月、83位でわずか1週間、初めてHOT100に登場する。その後、同曲がHOT100に再びチャートインするまで10年以上かかったが、古い曲がチャートに再登場することを防ぐさまざまなルール(Recurrent Rule)がまだ残っていたためだ。このルールが段々と緩和され、2012年ホリデー・シーズンに「All I Want For Christmas Is You」がHOT100に29位で再登場し、21位にまで上がる。ルールの変更によってチャートに再登場したと言うより、それ以上クリスマス・キャロルの波及力を無視できなくなったと言ったほうが正しい。順位は毎年着実に上昇し、2017年には9位、2018年には3位にのぼる。

ついに2019年、「All I Want For Christmas Is You」がHOT100で1位を占める。クリスマス・キャロルがHOT100で1位になったのは、1958年以来のことだった。その後からは伝説だ。2019年に4週間、2020年に2週間、2021年に3週間、2022年に4週間1位を記録し、合計12週間1位を占める。同曲のおかげで、マライア・キャリーはHOT100の1位曲が19曲と、ザ・ビートルズの20曲に対してわずか1曲差だ。彼女は1990年代、2000年代、2010年代、2020年代にすべて1位曲を持つ最初のアーティストだ。彼女は最長期間にわたって1位を獲り、最多週間1位を記録したアーティストだ。

2011年、ビルボードはホリデー100チャートを別ものとして発表するようになった。音楽界がクリスマス・キャロル市場に注目し始めた頃で、HOT100が再登場の条件を緩和し、クラシックなクリスマス・キャロルを再度認定する直前のことだった。2023年のホリデー100チャートは、12月2日付けで復活した。2011年以降、合計63週間作成されたチャートで「All I Want For Christmas Is You」は58週間1位を記録した。残り5週間の1位は、ペンタトニックスが3週間、ジャスティン・ビーバーが1週間、アリアナ・グランデが1週間だ。

ホリデー100チャート2位の定番曲が、他ならぬブレンダ・リーの「Rockin’ Around the Christmas Tree」だ。(ビルボード・オールタイム・ホリデー100チャート)「Rockin’ Around the Christmas Tree」は1958年に発売されたクラシックだ。同曲は2013年ホリデー・シーズンに50位でHOT100に戻ってきた。同曲もまた着実に順位を伸ばし、2017年に30位、2018年に9位と、マライア・キャリーを追い上げてきた。その後、マライア・キャリーがホリデーの女王の座についた2019~2022年の4年間、2位の座を守り続けた。同じ期間、2位だけ9回している。そして2023年、ついに万年2位が新しい王座につく。

今年の年末シーズンが始まった頃に戻ってみよう。11月25日付けHOT100に「All I Want For Christmas Is You」が17位で再登場する。ワム!の「Last Christmas」をはじめとしたその他3曲のホリデー・クラシックがHOT100に戻ってきたが、その中に「Rockin’ Around the Christmas Tree」はなかった。このときまでもマライア・キャリーの独り舞台が永遠に続くと思っていた。12月2日付けHOT100で「All I Want For Christmas Is You」は4位に上昇し、グローバル200では3位にまで上がった。同じ週間、「Rockin’ Around the Christmas Tree」はHOT100に8位、ホリデー100に2位で再登場する。

このときから「Rockin’ Around the Christmas Tree」の勢いが尋常ではないという分析が出始める。12月2日付けチャートが公開された11月28日にすでに、12月9日付けチャートの成績集計期間(11月24日~30日)がかなり進んでいたためだ。当時の途中成績を見ると、「All I Want For Christmas Is You」がラジオと音源売上などにおいてリードしていたものの、「Rockin’ Around the Christmas Tree」のストリーミングがさらに速やかに伸び、Spotifyの「Daily Top Songs USA」チャート1位の座を守っていた。

これは「Rockin’ Around the Christmas Tree」発売65周年を迎え、前より積極的な宣伝ポリシーを掲げたおかげだ。ブレンダ・リーは新しいミュージックビデオを出した。それと同時に、クリスマス・キャロル5曲が収録されたEP『A Rockin’ Christmas With Brenda Lee』を新しくリリースした。その中には、プロデューサー・フィリウスのダンス・リミックスも含まれている。TikTokも始めた。彼女がダンス・チャレンジをするわけではないが、歌と自身のキャリアに対する振り返りを公開した。飛行機の中で機内インターホンを手に歌を歌う動画が拡散したりもした。

 

もちろん、マライア・キャリーの「年金(まるで年金のように長期的な印税収入が見込めるロングセラー)」が何も努力せずに自ずと維持されたわけではなく、今年もまた同様だ。マライア・キャリーは2020年、2021年連続でApple TV+のためのスペシャル・ショーを立ち上げた。2022年にはCBSと特別番組『Mariah Carey: Merry Christmas to All!』を放送するなど、大規模な宣伝を休んだことがない。2023年にも11月になるや否や、短いビデオを公開し、ホリデー・テーマのヴィクトリアズ・シークレットのキャンペーンに登場した。ビルボード・ミュージック・アワードで歌を披露し、功労賞も受賞している。

 

運命の12月9日付けHOT100、その結果は「Rockin’ Around the Christmas Tree」の首位獲得だ。2019年のホリデー・シーズンから昨年まで、2位だけ9回している。細かい成績を見ると、マライア・キャリーが依然として音源売上とラジオにおいて勢いを見せており、ブレンダ・リーがストリーミングにおいてリードしている。総合点数は僅差だったと考えられる。

 

クリスマス・キャロル市場の構図だけでなく、長い時間をかけなければ不可能な、奇跡的な記録が複数出された。HOT100で発売から65年越しの1位は、最も長い時間待たされた記録だ。それまでの記録は、やはり「All I Want for Christmas Is You」の25年だ。ブレンダ・リー個人としては1960年以来、63年ぶりの3番目の1位曲だ。それまでの記録は、シェールが「Believe」で記録した25年ぶりの1位だった。ブレンダ・リーは今年78歳だ。史上最高齢1位アーティストになる。彼女はこの曲を13歳のときにレコーディングした。レコーディング時点で考えると、最年少アーティストの1位曲でもある。どれも今後破られるとは期待し難い奇跡的な記録だ。一方、「All I Want for Christmas Is You」はグローバル200とアメリカを除くグローバルチャートで1位の座を守り抜き、グローバル市場では変わらない勢いを誇った。

 

これからのホリデー・シーズンは、さらにおもしろくなってきた。毎週、誰が1位になるかを注視することが年中のいつにも増して興味深い。今のところ、12月16日付けHOT100では「Rockin’ Around the Christmas Tree」が2週間1位の座を守り続けている。これから1月初めのチャートまで続く対決だ。そして来年も、再来年も。私たちは将来いつの日か、アリアナ・グランデの「Santa Tell Me」、ケリー・クラークソンの「Underneath The Tree」、ジャスティン・ビーバーの「Mistletoe」が競い合うことを目の当たりにするかもしれない。