*この文章にはドラマ『Sweet Home –俺と世界の絶望–』のネタバレとなる内容が含まれています。

2020年12月18日に公開されたNetflilxドラマ『Sweet Home –俺と世界の絶望–』(以下『Sweet Home』)は、ある日突然現れた怪物たちと、それらと戦う「グリーンホーム」マンションの住民たちの孤軍奮闘を描いたクリーチャーものだ。人々はある理由から内面の欲望が具現化された怪物に変異し、残った者たちは他人と自分、すべての人に疑心を抱き、恐れる。『Sweet Home』は、公開後わずか1週間の12月25日、映像ストリーミング・ランキング・サイトFlix PatrolのNetflilxワールドTVショー・チャートと、アメリカ・ショー・チャートの両方で3位を記録した。アジアのコンテンツがアメリカのショー・チャートで上位10位以内に入ったのは、チャートが集計されて以来初めてのことで、非英語圏のコンテンツとしては『ペーパー・ハウス』以降2作目だ。だが、『Sweet Home』の異例な話題性は、今年1月アメリカを含む数々の国のチャートから脱落、またはランク・ダウンし、人気下火の傾向にある。

このような『Sweet Home』の人気の浮き沈みは、韓国ドラマ、ひいては「Kコンテンツ」の、世界のメディア市場におけるステータスを示唆する。最近の、国を超えたOTTの活性化とパンデミックの状況が相まって、Kドラマ、Kムービー、K-POPのように、ひとつのジャンルとして認識されている。デジタルメディア「VICE」によると、2020年にNetflilxで韓国のコンテンツを視聴した利用者は、2019年と比べてアジア圏で4倍、アメリカ、カナダ、ポルトガル、スペインで2.5倍以上増加した。Netflixドラマ『キングダム』、映画『#生きている』が、海外で得た人気を考慮すれば、『Sweet Home』の公開直後のランクの急上昇は、それまでのKコンテンツを体験してきた、全世界の視聴者たちの期待が反映されたものだと言えよう。しかしこのような背景は、Kコンテンツに対する高評価を保障するものではない。期待が全般的に高まった分、評価を受けるコンテンツの内容面もぐんと重要になった。ホラー・ジャンル専門サイト「Bloody Disgusting」(ブラッディ・ディスガスティング)は、やぼったいVFX(視覚的特殊効果)、イマジン・ドラゴンズの曲「ウォーリアーズ」をバックに繰り返されるお決まりの演出を取り上げ、「今まで数多く観てきたゾンビものから、ゾンビを怪物に換えただけ」と指摘した。ピアス・コンラン(アイルランド出身の韓国映画評論家)は、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙を通じ、「緊迫した導入部と鬼気迫る内容にもかかわらず、視聴者が引き込まれるほどのストーリーを充分に提供できていない」と評した。『Sweet Home』のIMDb(インターネット・ムービー・データベース)の評価点は7.4点、(1月6日付け)で平均を上回るレベルだが、4倍以上の評価数を確保した『キングダム』が8.5点(1月7日付け)だということを勘案すれば、多少残念な数値だ。『Sweet Home』の1話当たりの制作費が『キングダム』の1話当たりの制作費の1.5倍の30億ウォン規模だということを合わせて考えると、さらにである。ただそれは相対的なものであって、『Sweet Home』の絶対的敗北だと速断するには早い。『Sweet Home』は、Kコンテンツをひとつのジャンルとして関心を持って見守る最近の傾向を確信させてくれ、これまで韓国内で容易く試みることができなかったクリーチャーものの、成功の可能性を提示した事例だ。

過去安定性を追求しなければならなかった韓国内コンテンツが、メディア環境の変化により、選択肢を広げていっている。知名度の高い監督、作家、俳優をひと所に集め「興業公式」を実現することも、冒険的な試みにより全世界の視聴者の趣向を発掘することもできる。前者はワシントン・ポスト紙BBCなどの主要海外メディアが注目したtvN『愛の不時着』、後者は香港、シンガポール、台湾などで人気を集め、NetflixワールドTVショー・チャート8位を記録した悪魔退治ヒーローもの、OCN『悪霊狩猟団:カウンターズ』が代表的な例だ。また、未来の地球と宇宙を舞台にしたSF『静かの海』、ティーンズ・ミステリーもの『グリッチ』のように、ジャンルや素材面でさまざまなコンテンツが公開を前にしている。つまり『Sweet Home』は、Kコンテンツの「結果」というよりは、Kコンテンツが新しく、多様な方向に伸びていく道に置かれた「過程」に近い。今注目すべきは、『Sweet Home』の次の作品だ。
TRIVIA

​OTT

「Over The Top」の略。インターネットで映画、ドラマなどのメディア・コンテンツを提供するストリーミング・サービスを指す。特定のネットワークを利用する既存の通信事業者や放送局とは異なり、OTTは汎用インターネットを使用するため、鑑賞する時と場所や機器などを、ユーザーの都合に合わせて利用することができる。海外サービスとしては、Netflix、Disney+、HBO Max、Amazon Primeなどがある。このうちNetflixは2016年から韓国に進出しており、Disney+は2021年中に韓国で提供開始される予定だ。
文. イム・ヒョンギョン
デザイン. チョン・ユリム