歌、公演、そして日常の全てのものごとからVは瞬間のイメージを残す。それらのイメージが繋がり、彼の人生は映画になっていく。
Vさんの自由なところについて、みんなもうある程度受け入れているのではないでしょうか。「Blue & Grey」や「Christmas Tree」以降のVさんの歌に対する反応は、またちがうように思います。複数のテレビ番組で特定の雰囲気の時に両曲が頻繁に流れるほど、Vさんの表現するイメージが人々に理解されているという印象も受けます。
V:人々の反応はよくわかりません。会えなかったので。僕が、僕の目で見ることができなかったので。僕は一旦、僕個人の曲をもっと作ってみないとわからないと思います。そうしてこそ、僕の色がどの方向に向かうか、その道筋を正確につけられると思います。
すでにたくさんの曲を作りましたよね。まだ発表していない曲を公開したいとは思いませんか。
V:その曲たちは全部無しにして、書き直しています。でも今は、いい感じに書けているような気がします(笑)。
曲を無しにするか、発表するかを選ぶ基準は何でしょうか。
V:わかりません。何となくピンと来たら? 曲を作ったその日の僕と今の僕が聞いて、良いと感じられた時ではないかと思います。
その時の自分と今の自分から共に良いと合意がなされなければいけないわけですが、それは厳しすぎる基準ではないでしょうか(笑)。
V:ちっとも残念に思いません。ただこの次の曲は、これよりは良い曲にしようという思いで作るわけなので。僕が作る曲に対しては、自分でできる限り冷静になりたいと思っています。それをいちいち残念に思ったら、僕は物足りなく感じても出してしまう人になるわけですから。そうなると、自分の曲が集められたアルバムの形を、自分の望み通りに完成できなくなると思います。
曲作りをする中で、音楽的な基調が変わるところもありますか。情緒的には一貫性がある一方で、編曲や構成においてはだんだん細かく変わってきましたが。
V:もっと豊かになっていこうとしていると思います。音の色とか、メロディラインがもっとぎっしり詰まったように聴こえたりとか。今はそういう段階までには来ていると思います。僕が作ってきた曲を初期から今まで順番に聴いてみるとしたら、声も声ですが、何より雰囲気自体がさらに深まっていくのが感じられるといいなと思います。それが僕にとっては、僕がずっとやってきた一番重要な宿題のうちの一つです。
『Proof』にVさんが作曲したバージョンの「Spring Day」が収録されました。作曲を始めてどれくらい経った頃でしたか。
V:おそらく2、3年ぐらい経っていたと思います。でも、僕は何となく「フィーリング」を感じたらその都度作るタイプなので、当時は1年に1回、もしくは5か月に1回作ったりもしていました。
Vさんの初期作品の一つとも言えると思いますが、発表されている「Spring Day」とはかなりちがう感じでした。
V:そうなんです。「Spring Day」はある意味、僕たちの初めてのポップス・バラード的な曲でもあるので、この曲は僕に書けそうだと思って、本当にたくさん書きました。一緒に音楽作業をするPDの方々にも気に入っていただいて、事務所からもとても気に入っていただいて、「あ、これはVさんの曲で行きそうだね」という冗談めいた言葉までいただいたのに…。その翌日に僕の曲が脱落しました(笑)。
「Spring Day」を聴いてみると、今のVさんのスタイルとちがうようで似ています。最近表現した音楽よりもっとポップス的で雰囲気も明るいですが、それでいてVさんの曲から感じられる切なさが一緒に存在しています。
V:その曲においては、そういうメロディしか出てきませんでした。なぜなら、「Spring Day」というテーマが与えられた時、僕が考えた春の日は、冷たく寂しい感情を乗り越えた後、再び空が晴れてきたような?何だかまた僕たちに良い日がやってきそうな感じだったんです。それで、僕が考えたメロディよりもっと明るかったらいいなと思ったら、そういうふうにでき上がりました。
その時からグループの曲を作る時は、トラックに忠実な解釈をしたわけでもありますね。
V:はい。でも、僕はそう思ったんですが、RMさんが書いたメロディは、僕が考えたもののその前のテーマだったんです。空が晴れる前。それとも、まだ冬の日のイメージ。そんなムードだったので、僕が考えていたのとは完全に逆で、「あれ? こんなふうにも春の日って捉えられるんだ」と思いました。僕が考えた「春の日」からRMさんはもう一歩踏み出して考えていたんです。僕に衝撃を与えた曲でしたね(笑)。
Vさんの持つ自由さのような個性が、BTSの音楽の中ではどのように調和しますか。『Proof』の新曲でVさんの持つ声の個性とグループの歌で追求する方向がさらにいい感じに調和するようになったと感じました。
V:BTSの中のVの声と、僕個人の音楽はちがうものでなければならないと思います。それが僕が見せられるもう一つの僕の魅力かもしれませんし、僕が持っている武器かもしれません。僕はとにかく自分の人格を複数つくることが好きなので、一つのペルソナだと理解していただければと思います。
BTSとしてのペルソナは、何と言えるのでしょうか。
V:一つに定義することはできないと思います。僕が一本の木だとすると、その木には数万もの枝があると思うからです。その枝に実ったそれぞれの果物が、それぞれちがうVの魅力なんです。なので僕は、説明できる何かと同じものになってもいいですが、わざわざ同じものになる必要はないと思います。なので何とも定義できないんです。あくまでもVとして、僕が見せられる多くの魅力の中の一つをつくっていこうとしているわけですから。僕が見せる一面がVのどの一面なのかと聞かれたら、僕は歌を歌い、パフォーマンスをする人です。Vの数万ものペルソナの中の一つを見せるのであり、それに対する判断はご覧の方々がされるわけです。
その点で、観客とまた会えた公演から受けた刺激が大きいと思います。ステージでさまざまなペルソナを見せることが難しかったじゃないですか。
V:ロサンゼルスで初回のコンサートをした時、2年間の、何だか停滞期とでも言うべきかもしれないものを全て打ち破る気分で、とても嬉しかったです。僕たちが日常で感じていたあの普通のことを再び感じることができて、とても幸せでしたね。僕たちが本当にこんなに愛されているんだということを改めて感じましたし、僕も苦しかったけれどARMYも僕たちの公演を心待ちにしてきたんだ、ということをすごく感じました。今はきれいに最後までやり遂げられて良かったと思います。僕の望む画、僕の望む雰囲気で公演を成功裏に終えることができて、幸せに締めくくられた気分です。ARMY一人一人の声を全部聞きたかったのですが、その声が聞けたことも嬉しかったですし。
ステージでペルソナを見せて愛され、ステージから降りてからは自由な気持ちで曲を書いていますが、その過程からVさんが得たいと思うものは何でしょうか。
V:最初は特に思うものはありませんでした。ただただステージをちがう感じに届けよう、という軽い考えだったんですが、だんだん背負うものが多くなり、考えるべきことも多くなったので、何か一つのことを考え込んだら、そこに囚われてしまうかもしれないと思うんです。それで僕は、「残念に思わずに捨てるものは捨てよう、続けるものは続けていって、作り出すものは自分でちゃんと作り出そう」と考えています。なので曲を作ったとしても、自分でイマイチだと感じたら潔く捨てますし、ステージがイマイチだったら「次は決してこんなふうにしない」と決めるんです。あと、自分で「これをしたい」と思うものがあれば、「いつか自分でこれを必ずやりこなしてみせよう」という思いにまで繋がるような気がします。
では、ご自身で描くアーティストとしての理想がありますか。
V:本当にたくさんのペルソナが自分の中から出てくることができたらと思います。歌手としても、ソロ歌手としても、役者としても、将来は写真作家としても、それとも日常を生きるキム・テヒョンとしても。それとも何か一つに夢中になっている時も、その都度数万もの自分が存在できるように、その日その日新しい自分でまた新しいことができる人間になれるように、たくさんのペルソナを誕生させたいという気持ちが一番大きいですね。それがアーティストとしての僕の最終的な夢だと思います。
その理想にどこまで近づいてきていると思いますか。前回の「Weverse Magazine」とのインタビューでもご自身に対する評価があまりにも辛口でしたが。
V:1点です。
まだ1点(笑)?
V:よくわかりません(笑)。
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