時代を見抜いた芸術家たちは、時を越えるアイコンとして残り、さまざまな形で私たちにアプローチしてくる。イタリアの主要な美術館をめぐるツアーを終え、去る2月26日から韓国で初めて開催されているアンディ・ウォーホルの大規模回顧展『ANDY WARHOL:BEGINNING SEOUL』もまた、私たちにとって新たな視点で時代をつなぐイベントになるだろう。ポップアートの巨匠としてよく知られているアンディ・ウォーホルは、「芸術はあなたが日常を抜け出すことができるすべてのものだ」という言葉を残しており、日常における経験と芸術に対する大衆の関心を喚起した。1900年代中盤から世に名を馳せた彼の活動により、当時の美術界は、それまでの伝統的芸術の権威を極端に覆されることとなった。作品において作家のタッチは昔から大切にされてきたが、アンディ・ウォーホルの作品にその痕跡を見つけることは難しい。大量生産と消費を追求した当時の時代相を投影した彼の代表作は、どこでもよく見られた日常のイメージを、シルクスクリーン技法により刷った作品であるため、作家のタッチは意図的に除去されるほかなかったのだ。そのように既存の方法と大きな違いを見せた、アンディ・ウォーホルの作品へのアプローチの仕方には、成功した商業美術家として活動した経歴が大きく影響を与えていたことが知られている。

幼いころから有名になりたいと熱望していたウォーホルの出だしは、デザイナーだった。精力的な活動により、ヴォーグ誌、グラマー誌、ティファニーなどの有名ブランドと仕事をし、最高の商業美術家として成功を収めると、彼は純粋芸術家としての名声を追求して、作品活動を始めるようになる。それ故、彼の作品において選択されたイメージと製作方法の差別化は、当然なことにも思われる。ハリウッド・スターや、マーケットでよく見られる生活用品の缶や包装紙、コーラの瓶、紙幣などの日常的な素材は、ウォーホルの手にかかり、社会を見つめる芸術に変化した。意識せず生活している日常と、それを対象として見る観点は、あまりにも違う問題だ。作品の中に見られる対象は、単純に現実の製品や人、それ自体を記録し提示するのではなく、誰もが知っている大衆的な対象を選択し見せることによって、その時代と社会の総体的な風景を語ろうとしていたのだ。彼の作品によって加速化したパラダイムの変化は、数多くの芸術哲学的な議論を生んでおり、当時、アメリカの評論家アーサー・ダントーは、過去の伝統的権威に囚われた芸術の終末を告げるに至った。そのように変化する時代に合わせて変わった芸術と、それを受け入れる観点が、今の私たちにまで拡張され、引き継がれていることは明らかだ。現代の私たちは、初めて見たイメージ、あるいは新たな形式の作品を経験しても、新たな見方で受け入れようとする姿勢を備えているため、アンディ・ウォーホルが示そうとしていた芸術に対する視点を充分に体感しながら、今回の展示を鑑賞することができるだろう。

展示会場の入り口を境に外部と完全に異なる風景は、静かに聞こえてくる音楽と相まって、まるでパーティー会場に入ってきたような感覚を与える。日常的にパーティーを主催していたアンディ・ウォーホルの「ファクトリー」(彼のアトリエ兼サロンの名前)が自ずと連想されるエリアだ。テーマや形式により6つのセクションに分けられている会場は、作品の強烈な色彩と照明の強いコントラストにより、観覧客がアンディ・ウォーホルの展示に期待しているポップアートを、集中して観られるように作られている。今までに世間に多く露出しているシルクスクリーンの平面作品だけでなく、オブジェ、ドローイングなど数々の作品で構成されており、アンディ・ウォーホルの作品について幅広い経験を提供してくれるだろう。作品とフォト・ゾーンが混在しているため、アンディ・ウォーホルの世界を各自の記憶と写真に残す余地があり、それは、単純に作品を眺めるだけでなく、この場所で何を経験したのかを思い出させてくれるだろう。変わらない写真の瞬間性と永遠性を絶賛したアンディ・ウォーホルの言葉のように、写真はこの場所を訪れた観覧客が、写真の中の主人公になった瞬間を日常として残す。時間が経ち、私たちが再び日常に戻った時にも同じように…。その時には私たちも自然と、日常から抜け出していた美的体験を、日常として見るようになっているだろう。アンディ・ウォーホルがそうしたように。

  • © Lee Jangro
トリビア

ポップアート
ポップアート(Pop Art)という用語は、大衆芸術を意味するPopular Artを語源とし、イギリスの評論家ローレンス・アロウェイ(Lawrence Alloway)が最初に使用したと言われている。美術史では主に20世紀中盤にイギリスとアメリカで現れた傾向を指しており、当時の時代相と環境を積極的に受け入れたアートだった。イギリスとアメリカのポップアートは、やや時期に差があり、またアプローチする作家たちの観点において同一ではないが、メディアや広告などの大衆文化的な視覚イメージを純粋美術に取り入れる姿を見せ、伝統的芸術の唯美主義と大衆文化の距離を縮めたと言われている。
文. イ・ジャンロ(美術評論家)
デザイン. チョン・ユリム