「Diva (Feat. Lil Tecca)」
1996年生まれのミュージック・ビデオ監督コール・ベネット(Cole Bennett)は、2013年からブログを運営しつつ、ヒップホップ音楽関連コミュニティを立ち上げようとした野心家だった。ベネットは彼が在住していたイリノイ州シカゴの優れたラッパーを発信しようと、自身のプラットフォームであるリリカル・レモネード(Lyrical Lemonade)に自ら撮影したミュージック・ビデオとアーティスト・インタビュー、ライブ映像などをアップロードし始めた。2018年5月、ジュース・ワールドの「Lucid Dreams」がビルボード・HOT100・チャートの2位まで上がる大成功を収めたことを機に、イリノイの無名制作者コール・ベネットは一気にエミネム、J. コール、カニエ・ウェストなどといったスーパースターから注目される新鋭アーティストとして知られた。
ザ・キッド・ラロイも2019年、コール・ベネットが監督を務めた「Let Her Go」からリリカル・レモネードに足を踏み入れ、ヒップホップのファンの間でジュース・ワールドの後継者として早速認められた。中でも最も高い再生回数を記録したシングルは、ラッパーのリル・テッカ(Lil Tecca)と一緒に歌った「Diva」だ。飾り気のない簡潔なギターリフを基盤にしたヒップホップ・シングルは、ザ・キッド・ラロイがミックステープを発表する前、音楽市場に早く落ち着かせる確かな足がかりとして働いた。2022年9月25日基準、7,200万回を超える再生回数を記録している曲で、オーストラリアとアメリカでゴールドディスクとして認定された。2020年、多くのヒップホップのファンが「Diva」でザ・キッド・ラロイの名前を初めて耳にした。
「GO」
2020年、ザ・キッド・ラロイの最初のミックステープ『F*CK LOVE』の中で注目を浴びた曲で、ビルボード・HOT100・チャートの52位まで上がった。「GO」は、ザ・キッド・ラロイにとって格別な曲だ。彼のメンターであり、人気ラッパーだったジュース・ワールドと一緒に歌った曲であると同時に、彼が2019年12月8日、薬物の過剰摂取により死亡した後、追悼の意を込めてアルバムに収録した曲だ。
ジュース・ワールドとザ・キッド・ラロイが知り合ったのは、ジュース・ワールドが2018年から2019年にかけてオーストラリアでツアーを回っていた時だった。オーストラリアのヒップホップの新鋭として名を知られていく最中だったザ・キッド・ラロイにポテンシャルを感じたジュース・ワールドは、ロサンゼルスのスタジオに幼い少年を招き、1年間音楽、ラップ、制作など、アーティストへの成長を手助けした。マイアミとニューヨークで開催されたフェスティバル「ローリング・ラウド(Rolling Loud)」のステージにザ・キッド・ラロイを推薦したのも、マルチメディア・チャンネル「リリカル・レモネード(Lyrical Lemonade)」にラロイの「Let Her Go」のミュージック・ビデオをアップロードできるよう力を貸したのも、ジュース・ワールドだった。ザ・キッド・ラロイはジュース・ワールドからエモ(EMO)の感性とメランコリーなメロディを学んだ。
ザ・キッド・ラロイは「GO」のミュージック・ビデオの中で、自身のパートをレコーディングするジュース・ワールドと子供時代の自分が収められた映像を公開し、人生のメンターに向けた追悼のメッセージを表した。ザ・キッド・ラロイはその後、2020年にもジュース・ワールドの死を悼みながら、生前の彼の歌詞をつけた曲「Reminds Me of You」を発表した。
「WITHOUT YOU」
アメリカ市場で成功裏にデビューしたザ・キッド・ラロイが、初めてビルボード・HOT100でトップ10入りを果たしたヒット曲だ。ポスト・マローン(Post Malone)スタイルの激しいシンギング・ラップをか弱い少年の情緒で整え、マイナーコードのアコースティック・ギターによる伴奏を入れた「WITHOUT YOU」は、叙情的な感情でZ世代の心の傷を慰めた。デビュー・ミックステープ『F*CK LOVE』のデラックス「サベージ(Savage)」パッケージに収録されたシングルで、作品全体を通して5番目にシングルカットされた曲だ。
ザ・キッド・ラロイはイスラエル出身の音楽プロデューサー、オマール・フェディと一緒に多くの曲を手がける。オマール・フェディは、サム・フック(Sam Hook)、エラ・メイ(Ella Mai)、24kゴールデン(24kGoldn)、イアン・ディオール(iann dior)、リル・ナズ・X(Lil Nas X)の主要作でともにした2000年生まれの新鋭ミュージシャンだ。オマール・フェディがザ・キッド・ラロイからオーストラリア出身のスーパースター、シーア(Sia)のスタイルの曲を書いてみないかと提案され、ギターコードを作り、ボーカルのレコーディングは一日で終わった。
何一つ過不足なく、とんとん拍子で制作された曲の反響は大きかった。2020年末からTikTokで拡散し、並々ならぬ人気の兆しを見せていたが、2021年3月、ポップスターのマイリー・サイラス(Miley Cyrus)とコラボレーションしたリミックス・シングルの公開を追い風に、ビルボード・チャートで最終的に8位まで上がる快挙を成し遂げる。イギリスでは、オリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)の「drivers license」に次ぎ、シングル・チャート2位まで上がった。ザ・キッド・ラロイのエモ・ヒップホップは、誰にでも開かれている。
「Thousand Miles」
「STAY」の大成功の後、2022年4月22日、コロムビア・レコードから公開したシングルだ。2021年グラミー賞の最優秀プロデューサー賞を受賞したギタリストのアンドリュー・ワット(Andrew Watt)とポスト・マローン、カニエ・ウェストのパートナーであるルイス・ベル(Louis Bell)が意気投合した。マスタリングに参加したエンジニアのマニー・マロクィン(Manny Marroquin)は、TOMORROW X TOGETHERの『minisode 2: Thursday's Child』のマスタリングにも参加したベテランのミキシングエンジニアだ。
「Thousand Miles」は、ザ・キッド・ラロイが目下交際中のTikTokerカタリナ・デメ(Katarina Deme)に一目惚れした経験を描いた曲で、愛している人に自分の人生に対する姿勢に共感してほしいと伝える前の不安な気持ちをユーモラスに歌っている。カタリナ・デメは「Thousand Miles」のミュージック・ビデオにも登場し、ザ・キッド・ラロイと共演した。成功を満喫した後、一段と余裕が感じられるようになったザ・キッド・ラロイのティーンエージ・ラブソングとして、チャートでもビルボード・HOT100・チャート15位、イギリス・シングル・チャート21位に上がり、その人気を裏づけた。
ザ・キッド・ラロイは、もう悲しくない。暗く苦しかった子供時代、たくさんのことを教えてくれた師匠かつ同僚との別れは成長の糧になり、新鋭ラッパーのアイデンティティを固くしてくれた。ジュース・ワールドの霊とともに、ロックとヒップホップを混ぜ合わせた激しいスタイルで、若さの感情を率直に告白するザ・キッド・ラロイの音楽世界は、これからが始まりだ。10月6日、彗星のように現れたティーンエージ・ポップスターの韓国公演に期待が集まる。
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