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文. カン・ミョンソク
写真. BIGHIT MUSIC

RMはYouTubeチャンネル『BANGTANTV』の「『Indigo』Album Magazine Film」で、自身のソロアルバム『Indigo』の最初の曲「Yun (with Erykah Badu)」が故ユン・ヒョングン画伯の名前「Yun」から来たと述べた。よく知られている通り、RMはここ数年間、美術、特にユン・ヒョングンのような韓国作家の作品と人生に大きな興味を寄せてきた。「Weverse Magazine」とのインタビューで、「美術についてコツコツと勉強した結論」を聞く質問に対し、「『タイムレス(Timeless)』に近づいて」いきたいとも述べたことからすると、巨匠の人生と作品は彼に、ゆっくりとした呼吸であっても、永続性に挑む作品を残すことへの渇望を抱かせたのかもしれない。ところが、彼が永続性を追求する場所は、BTSのメンバーとしての人生の中だ。「グループを抜きにした君は本当は何でもないよ君は」、「高速道路から小道に行こうとするんだ君は」といった「Yun (with Erykah Badu)」の歌詞は、彼がBTSとして活動しながら受けた反応のうちの一部だろう。

 

「あちこちからさされた後ろ指が 今では向かうべきところとしてあの山を指さす」と言うほど、彼が属した世界は何もかもが目まぐるしく、簡単に変わる。そのため「僕の速度と方向」が必要で、「Yun (with Erykah Badu)」の最後に収めたユン・ヒョングンの声のように、人間であり、芸術であり、人生としての道理を追求しようとする。「欲も全部捨てて。すべての欲を全部捨てなければならない。無邪気な世界に入らないと。私はそうしたいけれど、できないんだ。それでも、死ぬまでそうしてみようと努力はしないと。それが人間の目的だと思う」。しかし、RMはまだ29歳の青年だ。「Yun (with Erykah Badu)」で「僕はあなたの言った真理が何かわからない」と吐露するのも当然だ。「いつも、まずは人間になれ」、「芸術をしようと思わず、遊べ」と言っていた「彼」、ユン・ヒョングンの言葉を青年が実践するのは可能なことなのか。導入部でユン・ヒョングンの声に続くRMの最初の歌詞は、彼の現在の座標のようにも見受けられる。「Fuck the trendsetter」。心はユン・ヒョングンを追いかけるも、体はヒップホップで生まれ育った20代だ。ユン・ヒョングンの言葉を受け入れつつ、アルバムの最初の単語として「Fuck」を使う、衝突による連続性。

「Yun (with Erykah Badu)」には、エリカ・バドゥの声もまた収められている。ユン・ヒョングンの言葉がそうであるように、エリカ・バドゥが歌う短い文には、人間らしい人生に対する一つの方向がある。「You keep the silence/‘Fore you do somethin’/You be a human/Till the death」。エリカ・バドゥの最初の登場の前に、RMは「未だに僕は許されない夢を見る 誰も見ないダンスを踊る」とラップをする。RMが死ぬ瞬間まで人間の道を探求することは、大衆音楽産業の誰も期待しない夢かもしれない。それ故に、RMのラップに続くエリカ・バドゥの歌は、彼の悩みに対する巨匠の答え、さらには苦悩する人間の前に現れた神の声のようにさえ感じられる。この地の上の世俗的な人生の中で自分の道を探すスーパースターかつ青年に対し、巨匠は高みに至らない限り不可能な生き方を啓示するかのように歌う。この教えと世俗的な価値の間で、時には混乱に陥る。BTSのメンバーとして浴びていた数え切れない視線と非難は、憤りを呼び起こすこともある。RMは、このすべてが衝突する自分をそのままさらけ出す。時流に乗るだけのことはしないという態度は「Fuck the trendsetter」に続き、「All Day (with Tablo)」の「消えろ人工知能 fuck the algorithm」にも引き継がれ、「いつも虫けらどもはオンラインに命がけ」(「Still Life (with Anderson .Paak)」)と無責任な非難をする誰かに直接的な怒りをぶつけたり、「Baby 僕はお金で時間を稼ぐ」といったドライな事実だけを言っても自慢になる、BTSのメンバーだからこそ可能なスワッグを見せる。しかし、同じ曲でRMはこのすべての衝突の中でも「止まらない静物」になり、「また咲かせる 僕の花を」と言い、自分が望む人生の方向への意志を示す。RMが「『Indigo』Album Magazine Film」で、『Indigo』の1つ目のセクションとして説明した「Yun (with Erykah Badu)」、「Still Life (with Anderson .Paak)」、「All Day (with Tablo)」の3曲がRMの音楽的根源とつながっていることは、それ故に重要に見える。「Yun (with Erykah Badu)」はオールドスクールのブーンバップ・スタイルで、「Still Life (with Anderson .Paak)」には古典的なファンク(funk)の楽しさとサウンドが込められている。そして、「All Day (with Tablo)」はRMが「『Indigo』Album Magazine Film」で、Dynamicduoを連想させるスタイルで作ったと述べた。この曲に参加したTabloは、10代の頃の彼の英雄だった。RMは10代の頃に聴き、結局彼がシーンに飛び込んだ音楽、そしてその音楽の根源に近い音楽をヒップホップの形で表現してみせる。ビートの上にラップを載せ、ラップには今の自分自身の話が込められている。巨匠の教えを反芻しつつも、時には憤り、時には自慢したくなり、それにもかかわらず自分の方向に向かって前へ進もうとする人間。彼は自分の音楽的な根っこであるヒップホップの形で、何でも可能そうでありながらも、どこにも行くことが簡単ではない自分をそのまま表す。

 

『Indigo』の2つ目のセクションである「Forg_tful (with Kim Sawol)」、「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」、「Change pt.2」、「Lonely」、「Hectic (with Colde)」の5曲には、今の時代を生きる一人の人間としてRMの人生の複数の断面が描かれる。RMが「『Indigo』Album Magazine Film」で明かした通り、愛(「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」)、人と世界の変化(「Change pt.2」)、今年のラスベガス公演を準備しながら泊まっていたホテルで感じた孤独(「Lonely」)、夜中にひとり家に帰る時の感情(「Hectic (with Colde)」)などがそれぞれの曲に分かれている。「Forg_tful (with Kim Sawol)」でRMが曲をレコーディングした年齢「26」を歌詞に残したように、彼は曲を書いたまさにその時に自分が覚えた感情を曲として残しておいた。この瞬間と感情そのものには、なかなか一貫性がない。当たり前だ。一人の人生だからだ。しかし、RMはそれを『Indigo』で一つの文脈でつなぐ。前の3曲がユン・ヒョングンからRMに引き継がれる過去と現在を直線でつなぐものだとすると、この5曲はRMが現在経験していることと感情を平面的に広く扱う。RMの内面を見つめるこの2つの方法論が1つにつながり、『Indigo』はRM自らが自分の総体的な姿を立体的に表現した成果物になる。

 

「Forg_tful (with Kim Sawol)」でRMは「たったの26なのに」頻繁に物忘れをし、友達に文句を言われる平凡な一人の青年としての姿を見せる。これは「All Day (with Tablo)」までの自分の道を作っていこうとするRMとは衝突するように見える。しかし、「たったの26なのに」、「メモリーが足りない」し、「公園に行かなきゃならないんです」と歌わずにはいられない当時のRMの心境は、彼がBTSのRMだから経験したことでもあろう。BTSとして生きていきながら彼は毎日、全部思い出せないほどたくさんのことを経験し、公園にでも行って思索をする時間が必要だった。RMの2ndミックステープ『mono.』では、アルバム一枚にわたってこの思索の瞬間を表していた。アルバムの最初から最後までを流れていくような音楽の中で、彼が瞬間瞬間覚えていた感情が表現される。一方の『Indigo』では、その思索の瞬間がアルバム全体を流れる省察の一つの過程になる。RMが自分だけの道を追求する土台には、公園で、ホテルで、夜中の道で、自分の感情と考えを見つめるキム・ナムジュンとしての人生がある。『Indigo』はこれらすべての場所の、すべてのRMであり、キム・ナムジュンであり、BTSのリーダーを彼の省察で統合し、音楽を通してつなぐ。

「All Day (with Tablo)」から「Forg_tful (with Kim Sawol)」に移る瞬間は、オールドスクールの韓国ヒップホップと韓国の代表的なインディーズ・シーンのアーティストが参加したフォークのちがいほど異質的だ。しかし、楽しい雰囲気の真っ只中だった「All Day (with Tablo)」は最後に至り、RMが低い声でフックのメロディを繰り返すことで終わる。最後には声が急に止まり、消えるようなエフェクトによってテンションをやや下降までさせる。そして、この雰囲気はアコースティック・ギターの物静かな演奏で始まる「Forg_tful (with Kim Sawol)」の雰囲気へと自然につながる。「All Day (with Tablo)」の後半では、RMが「むごい世間が oh 君を嘲笑うような時 世間がなんと言おうと僕たちは飛び上がる」と歌う。彼はこの部分を、2番でフックが楽しく盛り上がった後、低い声で歌う。急な雰囲気転換はK-POPで一般的に、曲の後半につながるクライマックスに向けた仕掛けとして使われる。2番のサビが終わった後、テンションを急降下させ、そこから再び上昇し、曲の中で最も楽しく、または激情的な瞬間が登場する。RMが「All Day (with Tablo)」で、「アルゴリズム」で代表される時流、またはトレンドだけを追いかける世間に対する不満を打ち明けた後、この部分で「世間がなんと言おうと」自分の道を歩む「僕たち」に対するリスペクトを表すという点で、なおさらそうだ。そのすべての険しい道を歩く者には、華やかなクライマックスがふさわしいかもしれない。ところが、RMは「All Day (with Tablo)」で完全な歓喜の瞬間を見せない。人生の方向について悩まされる彼の人生がそういうものでないだけでなく、この選択は音楽的に鮮明な対比をなす「All Day (with Tablo)」と「Forg_tful (with Kim Sawol)」を一つの文脈でつなぐ役割をする。

 

ユン・ヒョングンの声で始まり、ユン・ヒョングンの声で終わる「Yun (with Erykah Badu)」はもとより、後半に楽しい雰囲気を続けていった「Still Life (with Anderson .Paak)」もまた、前段のフックと同様にRMがラップを繰り返す水準で終わる。3曲はまるで決まった範囲があるかのように、一定の水準内で音や感情の大きさを上げたり、また下げる。『Indigo』の1つ目のセクションの3曲は、漸層的に徐々に上昇した後、「Forg_tful (with Kim Sawol)」の下降につながり、2つ目のセクションの5曲はまた「Forg_tful (with Kim Sawol)」からだんだんと激情的な感情を表現する。「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」でお互いのちがいを確かめる恋人の感情をPaul Blancoが吐露するように歌い上げると、「Change pt.2」ではRMが荒い電子音とピアノ・トーンの鍵盤演奏が交差するサウンドの中、冷笑的な声で人は変わるものだという事実を噛み締める。この冷たく硬い雰囲気が「I’m fuckin’ Lonely」で始まる「Lonely」の荒い吐露につながる。しかし、自分がツアー中のホテルに閉じ込められたようだと叫ぶ「Lonely」もまた、RMがフックを低い声で繰り返すことで静かに終わる。その結果、RMが「『Indigo』Album Magazine Film」で「シティポップ」だと話した「Hectic (with Colde)」は、「Lonely」が形成した情緒的な雰囲気の上で独特な個性を発揮する。RMの声の響きを引き立たせ、のんびりした雰囲気のサウンドが夜中に人の気配のない道を歩きながら、または夜、窓の向こうの景色を眺めながら思索するような落ち着いた雰囲気を醸し出す。一方、曲の始まりから迫力をもって走り出していくリズム、それに続いて低音でありながらも力強くまくし立てる「Yesterday was a hectic」のような導入部のフックのメロディは、この曲にロック的なダイナミックさを加える。『Indigo』はヒップホップからフォークまで、それぞれの曲ごとに異なるジャンルを巻き込み、それぞれ異なる感情と雰囲気を表現する。しかし、RMはまるで演劇で幕を分けるように『Indigo』を3つのセクションに分け、それぞれのセクションごとに徐々にクライマックスに走っていくように各曲を精緻に配置し、それがまたセクションとセクションを結び、一つの大きなクライマックスにつながるようにする。

『Indigo』全体を聴けば、なぜ「Wild Flower (with youjeen)」がこのアルバムのタイトル曲にならざるを得なかったか納得がいくようになる。ロックバンドCherry Filterのボーカルyoujeenが全力を尽くし、吐き出すようにフックのメロディを歌うこの曲は、RMが先の8曲にわたって徐々に積み上げてきた感情を一気に爆発、浄化させる。「Wild Flower (with youjeen)」が『Indigo』で曲の終わる瞬間まで感情をすべてぶちまけるのは、この曲だけのための選択ではないだろう。RMは「Yun (with Erykah Badu)」、「Still Life (with Anderson .Paak)」、「All Day (with Tablo)」で巨匠が提示した人生の道と現在の自分の間で衝突しながら迷い、「Forg_tful (with Kim Sawol)」、「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」、「Change pt.2」、「Lonely」、「Hectic (with Colde)」では日常の瞬間で彼が覚えた感情と思索を表す。この過程を通った後、RMは「Wild Flower (with youjeen)」で「もともと僕のものは何もなかったんだ」という気づきとともに、「燃える花火から野花へ」生きていくという自分の哲学を伝える。

 

名前を並べておくだけでもドラマチックな『Indigo』のフィーチャリング・アーティストは、この地点で最高の力量を発揮する。youjeenではなかったら、「Wild Flower (with youjeen)」が『Indigo』全体のクライマックスになることは難しかっただろう。彼女の爆発的な歌唱力だけでなく、Cherry Filterのボーカルとしての活動で身にまとうようになったアーティストとしてのオーラが曲のイメージを強化するからこそ可能なことだ。韓国のインディーズ・シーンにおける一つの方向を代表するとも言えるKim Sawolが「Forg_tful (with Kim Sawol)」に参加し、フォーク音楽をする瞬間は、ボーカリストとしての彼女の役割だけでなく、文脈的に『Indigo』が今の大衆音楽の主流となるスタイルから外れていることを象徴的に示す。エリカ・バドゥは「Yun (with Erykah Badu)」で短いメロディを神秘的に繰り返しながらまるでRMに人生の道を案内し、アンダーソン・パークは「Still Life (with Anderson .Paak)」で「I'm still life」を彼特有の声音で叫びながら曲でRMと会話をするなど、彼を応援するような立場にある。そして、今ではRMと音楽的な交流をする先輩になったTabloは「All Day (with Tablo)」で、長い息のラップで好みの画一化を批判するRMの立場に同調する。「特色を踏みにじった think tanks/冷めてしまった個人のインパクト」。RMが『Indigo』で悩んでいることを悩み始める遥か前から自分の人生をラップで記録してきており、数々の栄光と誤解と賛辞と不当な非難を同時に受けていた韓国のヒップホップの鬼才が、RMのラップに続き、「この雰囲気どうした」と自分の登場を知らせる瞬間は、それ自体で強烈だ。また、聴く人までも息を押し殺してしまうほど曲の雰囲気を制するラップで「もっと大きい火をつけて、君の人生はビッグマッチ」、「Haters 早く目を閉じな 僕の人生を見たくもないなら もともと夢みたいなことは見ていられない」のようなヒップホップの言い方で投げかける言葉は、アーティストとしての彼の人生模様と重なり合い、RMだけでなく、今人生の真ん中を生きている人たちに妙な力をくれる。音楽でも、美術でも、絶えず掘り下げていくRMは、自分が招待したアーティストの歴史とシーンにおける文脈を理解した上で、まさに彼らが存在すべき的確な役割と空間を作った。

「Hectic (with Colde)」の前半は、多少荒いトーンで展開されるRMのメロディ・パートとともに、リズムがさらに速くなり、サウンドが加わることで、だんだん感情的に激しくなる。しかし、RMに続き、Coldeの柔らかい声が登場する瞬間、「Hectic (with Colde)」は夜の迷いではなく、夜の落ち着いた思索を表した音楽になる。「『Indigo』Album Magazine Film」でこの曲のプロデューサーPdoggは「Hectic (with Colde)」について、「夜中にひとりタクシーに乗って家に帰るとき」の感じだと話し、RMは飲みに行った帰りに「二日酔い最悪だろうな」と独り言を言う気分について話した。そして、Coldeは「未完成な青春の物語」とも話した。RMの話のように、「ネオンサイン、携帯電話、ビル、タクシー、オリンピック大路」が思い出される、言語で定義するには困ってしまうが、今の都会に住む青春ならその感覚がわかる音楽。RMは「Hectic (with Colde)」をシティポップの骨格の中でロック的な展開を加えつつ、自身とColdeのボーカルによって「Hectic」という単語に対する相反する解釈を展開する。『Indigo』の2つ目のセクションに参加した若いアーティストは彼らの感性を通し、『Indigo』にRM個人だけでなく、今の都会の、20代の間を流れる情緒的な共通点を吹き込む。はっきりとした一つの感情で表現するには複雑で、愛なり寂しさなりの感情を極端まで押し通すよりは、中に呑み込んだまま、自分について思索することに切り替える。

 

この10年間、BTSのメンバーとしてあらゆることを振り返る暇もなく経験してきたRMの人生を考えると、「Forg_tful (with Kim Sawol)」で「ここの皆がバカですから たくさんの棘と 必ずやってくる朝と それぞれのやり方で 自分で麻酔していくんです」といった歌詞は、人生の苦しみに耐えていくしかなかった一人の青春の絶叫のように感じられさえする。しかし、RMはそれをアコースティック・ギターの静かな演奏に込め、「公園に行かなきゃならないんです」という日常の中の小さな解消方法を何気なく投げかけるだけだ。英語の歌詞で進行される「Closer (with Paul Blanco, Mahalia)」で韓国語が出てくる瞬間は、Paul Blancoが「これで満足する」と「君の愛でいい」を歌う時だ。韓国系カナダ人のPaul BlancoがRMのアルバムで英語を使う途中で韓国語で愛する相手に対し、これだけで充分だと淡々と歌う瞬間に出されるすべてのニュアンス。これがまさに今、全世界の都会を生きる20代の音楽とも言えるだろう。RMは『Indigo』の参加アーティストほど、曲ごとにそれぞれちがうジャンルとスタイルを巻き込みながらも、そこにアルバム全体を緻密に結びつける構成と、自分とアーティストの情緒的なつながりによって統一性を付与する。各々の曲はジャンルがちがったり、ジャンルを定義することが難しい時もある。だが、すべての曲には、都会に住む20代が思索を通した洞察の過程の中で、世間ではなく自分の中に入る情緒が一貫して保たれる。『Indigo』で最も冷たく世間と人について語る「Change pt.2」でも、前半の耳をつんざくような電子音が後半では叙情的な鍵盤に置き替えられる。歌詞を強いアクセントで歌ったRMの声音もまた、静かに変化する。どんな話をしようと、『Indigo』の曲は自分の内面に対する独白になる。

そこで、『Indigo』は逆説を生む。RMは過去から現在に至るさまざまなジャンルとアーティストを巻き込み、アルバム一枚を聴いてようやく文脈と意図が完全に理解できるアルバムを作った。具現化すらなかなか容易ではない試みであるだけでなく、アルバム全体に一貫性を付与するために招待したアーティストの面々と、彼らを活かす方法、そして各々の曲が一枚のアルバムのために塩梅された緻密なプロダクションは、彼がどれだけたくさんの音楽を掘り下げ、良いセンスを持ち、それをアルバムの中でうまく具現化できるプロデューサー、またはディレクターなのかを示す。そこで、自分が持つ音楽的資産を注ぎ込み、世間の時流の代わりに自分だけの道を追求したこのアーティストの音楽はまさに今、世界のどこでも20代のイヤホンから流れてきそうな情緒とスタイルを持つようになった。それぞれちがうジャンルの音楽が一貫した雰囲気の中でつながるということは、『Indigo』の情緒に共感する誰かには素晴らしい一種のプレイリストの役割をも果たせるという意味になる。RMは自身の総体的な面を表現したアルバムを通し、かえって彼が生きる世界の時流の中で理解してもらえる作品を作り上げた。その点で『Indigo』はRMの永続的な完成ではないとしても、現在の完成とは言えるだろう。RMは自分について語り、それで彼とつながっているアーティスト、ひいては同世代の青春が情緒的に同期化できる成果物を出した。

 

『Indigo』は3つ目のセクションの2曲、「Wild Flower (with youjeen)」と「No.2 (with parkjiyoon)」で終わる。youjeenとparkjiyoonは、RMが韓国の大衆音楽をK-POPではなく「歌謡」と呼んでいた頃、「歌謡」的な感性の中にあるヒット曲を出したアーティストだ。RMが音楽をするアーティストとしてヒップホップから今のインディーズ・シーンに至るさまざまなジャンルの音楽の中で成長したのであれば、平凡な10代として過ごしたRMの日常には、この「歌謡」が象徴する時流の中の人生があったはずだ。RMはその人生の一部を占めたであろう両アーティストの感性で『Indigo』を締めくくる。『Indigo』全体を通すクライマックスと言える「Wild Flower (with youjeen)」の中のyoujeenのパートは、彼女だけの声音とスタイルをそのまま反映する。さまざまなジャンルで海外の有名アーティストとも協業したアルバムのタイトル曲であり、クライマックスは、RMが韓国で生まれ育ちながら聴いたその感性だ。彼は人生と音楽について悩み、迷うものの、自分が暮らしている地に足をつけて生きているという事実を忘れない。「No.2 (with parkjiyoon)」でRMは「ただ承認に飢えていた幼い子供」と子供時代を振り返り、自身が通ってきた道について「最善を君は尽くしただけなんだ」と自分を慰める。少年時代の彼に偉大な巨匠の世界への熱望を切り開いてくれたのがエリカ・バドゥだったのであれば、「君はそう特別ではない」という言葉に涙していた彼にイヤホンの中で慰めの言葉をかけてくれた声はparkjiyoonだったのだろう。そして、parkjiyoonはその時と同じように、彼女だけの哀愁混じりの声でRMを慰める。彼は数々の悩みと、それだけのたくさんの音楽を経て自分を音楽で表現し、それと同時に時流に流されずとも、今の時代の普遍性と通じ合う成果物も出すことができた。しかし、このすべては結局、一人の青年が子供時代の自分に向き合って自ら慰め、自分が特別ではないという言葉に対し「もうこの言葉に泣かない」と話す人に成長する過程だ。RMが大人になったという話だ。おそらく「Yun (with Erykah Badu)」の歌詞の通り、「ただ、少しマシな大人」。