2020年は、誰もが望まない理由により、人類の歴史に長く残るであろう1年となった。しかし人々は生きていき、生き残るために奮闘した。12月28日から30日まで3日間続く、6チームのステージのそれぞれの物語は、人々が生きていく、その生き方についての記録でもある。
2020.06.22 Mnet「SEVENTEEN カムバック・ショー『Heng:garæ』」:「Fearless」

SEVENTEENが去る6月22日、Mnet「SEVENTEENカムバック・ショー『Heng:garæ(胴上げ)』」で披露した「Fearless」は、進軍の太鼓の音とともに始まる。VERNONが、重量感のあるビートに合わせ大きな太鼓の音を鳴らすと、ステージはすぐさま戦場になる。ホワイトアウトを引き起こす強い光、火花、スモークなどの演出が加わり、臨場感を吹き込む。ところどころ破れた制服は、それまでに何度も経てきた戦闘の厳しさを物語るようだが、それでもSEVENTEENは、戦いを終わらせるために「再びリングの上に」向かう。彼らが立ち向かう敵は、恐れに苛まれていた過去の自分だ。SEVENTEENが昨年発表した曲「毒:Fear」を考えてみると、「Fearless」は、「毒:Fear」の真実を思い起こし、それを反転させ、主導権を勝ち取る過程だ。「毒:Fear」で右手首に顔を埋め、恐れに浸食される姿を描写していたとすれば、足かせを解いて自由になった「Fearless」では、右手首で、毒を飲み込んだ口元を拭う。以前「怖くて目覚められず」、顔を背けていたSEUNGKWANは、「Fearless」に至り、自分の姿をまっすぐ見つめる。過去の「傷を記憶」するJEONGHANはDINOを起こし、「今日」と歌うDINOを踏み越えたJOSHUAは、「もう少し遠くへ」行く明日を願う。

行き違い、ぶつかっていた3つの時点の自我が互いに抱き合う時、初めて「新しい自分」が誕生する。「恐れのない(Fearless)」内面にもう一歩近づいた瞬間だ。この時WONWOOは、自分に向けて手を伸ばすDKから顔をそむけ、正面を凝視することによって、創造されることを拒否し、ミケランジェロの天井画の中の最初の人間は持つことができなかった、自ら生まれるという主体性を獲得する。続いて彼がかじった果実を高く掲げ、握りつぶす動きは、成果の重さと恐れを気づかせた「毒:Fear」を乗り越える段階を見せている。メタル・サウンドとともにサビの「Because I’m fearless」でメンバーたちは、絶叫するような鋭い高音を上げる。それにより曲は、それ自体が強固で鋭利に研ぎ澄ました心であり、勝利のための武器として存在する。「毒:Fear」で、有限であることに対する不安を止められなかった彼らは、今や恣意的に恐れを切り離し、前に進む。要するに「Fearless」は、ひとつの自我が、恐れとの戦いで激しく悩み、省察し、ついに勝利するまでの物語を描いた大叙事詩だ。「Fearless」が、9か月のブランクを経たSEVENTEENの挨拶であり、カムバック・ショー『Heng:garæ』の初舞台でなければならなかった理由が、ここにあるのだろう。胴上げはひとりでは絶対に成立しないものであり、上に投げられた人と、それを受け止めまた投げ上げる人たちが、それぞれ墜落と重さに対する恐れに打ち勝ち、互いを信頼する時にのみ可能となる。「永遠なものは絶対にないということを わかりながらも終わらせられな」かった過去のSEVENTEENは、勇気を出して身を投じ、「永遠なものは絶対ないと わかっているから終わらせられる」と歌う現在のSEVENTEENが、負傷しないように支える。SEVENTEENが飛翔する瞬間だ。「自分」と「自分たち」を信じているから。万一落ちたとしても、再び飛び上がれることを知っているから。
文. イム・ヒョンギョン
デザイン. ペイポプレス
写真. PLEDIS Entertainment