今年2月22日、イギリスは新型コロナウイルスによるロックダウンの緩和計画を発表した。オミクロン株の感染拡大が収束傾向を見せることから、改めて正常化を狙ったものだ。正常化計画は、音楽公演の再開を含む。5月17日から一定条件を満たす場合、室内では最大4,000人、屋外では最大1万人規模の公演開催ができる。6月21日からは全ての制限をなくす予定で、全ての公演が可能になる。もちろん、新型コロナの感染状況によっていつでも変わるおそれはある。イギリスを皮切りにヨーロッパの他の国々も似たような緩和計画を打ち出すと見られる。アメリカの場合、州別に違いはあるものの、去年の夏からワクチン接種・陰性証明とマスク着用義務化を条件にほとんどの室内イベントが可能になった。3月前後にはマスク着用義務化を解除する段階に入った。早速4月に予定されているコーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバルは、新型コロナに関するいかなる制限規定も設けない方針だ。
要するに、世界は新型コロナに対する「エンデミック時代」を期待している。コロナ禍で最も深刻な打撃を受けた分野のうち一つである公演業界は、なおさらだ。もちろん今後も長い間、新型コロナは多数の公演を脅かすだろう。最近あったエディ・ヴェダーの例のように公演関係者の感染によって公演がキャンセルまたは延期となる可能性は依然として残る。それにもかかわらず、できることとそうでないことの違いは大きい。特にツアーが生業であり、音楽を続ける財政的基盤でもあるほとんどのアーティストにとっては死活問題だ。オンライン公演をはじめとするパンデミック時代の多様な試みはそれ自体で意味があったものの、伝統的な公演の完全な代案にはならない。追加的な収益のアイデアにはなり得るが、それすらも会場で公演をすることを前提にしている。
もちろん、公演業界がパンデミック以前と全く同じものになるとは予想していない。現在最も現実化した悩みは、大物アーティストに関することだ。彼らは非常に大きな観客動員力を持つ。同時に大規模な公演に伴い、かなりの資本が投入される。その分、新型コロナによるもしもの事態に対するリスクも高い。複数の大陸や国を対象とするグローバルツアーでは、この全ての問題がさらに深刻化する。そのため、アーティストがいくつかの限られた場所で長期間公演を開き、観客が公演に訪れるレジデンシーの形が対案として提示されている。アメリカで最も目立つものは、ラスベガスのレジデンシーだ。セリーヌ・ディオンの伝説的なレジデンシ―以降、ラスベガスはいわゆる「象の墓場」という汚名を返上して久しいが、最近はなお華麗だ。2022年、ラスベガスではケイティ・ペリー、キャリー・アンダーウッド、レディー・ガガ、シルク・ソニック、アデル、スティングなどが短くは数週間、長くは数か月にわたって公演を行う。長い経歴のアーティストが定番リストを披露する公演ではなく、新しい音楽をお披露目するツアーを回りそうなアーティストがレジデンシ―を選んでいる。この悩みは大衆音楽だけにとどまらない。アメリカとヨーロッパの大編成オーケストラも同じ理由から似たような対案を模索中だ。将来はニューヨーク・フィルハーモニックの公演を観るためには、上海に行かなければならないかもしれない。
韓国は全面的なロックダウンなくコロナ禍を耐え忍び、現在もほとんどの公演は各種感染防止対策を遵守する範囲内で行われている。しかしアジア市場、ひいてはその向こうを見越している韓国のアーティストにとって、状況は遥かに厳しく複雑だ。ロサンゼルス、ソウル、ラスベガスを行き来しているBTSがいる一方で、他のアジア市場でチャンスを逃している他のアーティストもいるというわけだ。そういう意味で、ソウルの状況だけでK-POPの公演市場を正常であると言うことはできない。しかし、結局のところ市場が再び開かれるのは、自明のことだ。誰かは準備できているはずであり、我々は遠くない未来にその結果を目にするだろう。
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