JIMINは生まれながらのアイドルだ。何をしてもかっこよく、ファンに向けた言葉はいつも優しい。そして驚くことに、その言葉はすべて本当に真摯なものだ。

  • ジャケットはサンローラン(Saint Laurent)、コンバットブーツはヴァレンティノ(Valentino)、ネックレスとイヤリングはティファニー(Tiffany & Co)、パンツはスタイリスト私物。
3枚組のアルバムを作ってみて、気分はいかがですか。
JIMIN:最初は僕たちが、「結構いろいろとやってきたんだな」という思いが一番たくさんありました。振り返ってみる時間も少し持つことができましたし、「Yet To Come」も「まだ僕たちの最高の瞬間は来ていない」という内容じゃないですか。その言葉通り、これからももっと良い活動をたくさんしたいです。

一旦区切りをつけて次に進むアルバムだと言えるでしょうか。
JIMIN:こうして一旦区切りをつけて行くのが大切なことだと思います。この頃は、前に進んでいく途中で、しばらく進む方向を考える時期だと思うので、少し頭を冷やしたりもして、僕たちがグループとして何をしてきたのか、考える時間を持つべき必要はあるように思います。

パンデミックが終息に向かっているのが、影響を与えているのでしょうか。「ここまでひとまず来たな」という。
JIMIN:それももう越えたように思います。僕は今は、振り返るよりも仕事をしながらもっとよく感じられるような気がするので、新たなことをたくさんやってみようと思っています。それでいろいろなプロデューサーの方々とミーティングをしています。ちゃんとチャレンジをしてみたいと思うので。

「With You」を発表してから、V LIVEで「これはスタートで、これからすごくいろいろなことをする」と言っていましたよね。今作業中なのですか。
JIMIN:これから始めます。プロデューサーの方々と一緒に事務所で過ごしながら、そのままずっとやってみることにしたんです。ひと月ぐらいはほとんど一緒にいると思います。何度かお会いして、どんなメッセージ、そしてどんな姿、またはイメージを見せたいか、そういう話をしていました。

グラミー賞とコンサートまでしながら、見せたいものがもっとたくさん出てきたようですね。
JIMIN:はい。もう少〜し露骨になってもいいんじゃないかと。

あ、露骨とは?
JIMIN:もう少し僕の生身の姿を見せてもいいんじゃないかと思ったんです。それが成熟した姿といえば成熟した姿かもしれませんが、それよりは今よりももっと本来の僕だけの生身の姿を、ありのままに音楽やミュージック・ビデオなどに溶け込ませて見せたら、これまで見せていなかった姿を見せられるんじゃないかと思います。

「生身」というのはどういうところでしょうか。
JIMIN:僕が普段考えていることをもう少しそのまま見せられるような? 今は僕の考えがBTSのアルバムにずいぶん込められてはいますが、それより少し暗い面のような部分は、年上のメンバーたちの場合、個人的なミックステープにたくさん表現しているじゃないですか。僕もそういうことをやってみようと思っています。

語りたいテーマのようなものがあるのでしょうか。
JIMIN:誰かに何かを話したいというより、僕のためにやってみたいです。パンデミック以降1年半ぐらい過ぎてようやく、「彷徨っていたんだな」とすごく思ったので。メンバーたちがそれを知って、「音楽でちょっと表現してみたらどう?」と提案してくれたので、「こういう話を一度盛り込んでみよう」と思うようになりました。

過ぎてみて彷徨っていたことに気づいたようですね。
JIMIN:はい。そうみたいです。僕は楽しく生きていると思っていたんですが、考えれば考えるほど、それはちょっと避けて通っているような感じを受けました。

観客に会えない状況のようなことについてですか。
JIMIN:そういうのもありますし、それにもかかわらず、悩みなどができたりするんですが、僕はそういうことを後回しにして、「別に僕は楽しく元気に過ごしている」というふうに避けて通ろうとしていたように思います。

個人的な悩みであれ、パンデミックという状況であれ、避けたかった時期だったようですね。
JIMIN:そうだったみたいです。「今考えてみれば」ですが。BTSという頼もしいグループがあるので、それなら少なくとも僕が崩れることはないと思っていたようです。でもふと思うのが、「それじゃあこのグループではなく、僕個人が表に出たら、僕はそれが果たして大丈夫だろうか」、そういうことを認識するようになりました。

「With You」を発表して、HA SUNG WOONさんとコラボしました。関係が広く知られている友人と作業をしましたが、それも意図のある選択だったのでしょうか。
JIMIN:はい。ソウルに来て仲良くなった最初の友だちなんです。メンバーを除けば、社会に出て初めての友だちです。以前こんな話をしたんです。「僕たちが今後お互いうまくいって、歌を一緒に作ってみんなに公開したら、すごく大きな意味があると思う」。その「意味」でした。一度はやりたかったこと。

ずっと前から約束していた原点からスタートしたのだと言えますね。
JIMIN:はい。ほぼ7年前からそんな話をしていましたから。お互い歌を作ったりしたものがあれば、聴かせてあげたりしたんです。そうしているうちに、「こういう音楽、一度やってみよう」と言っていたのが実現しました。楽しかったですね。

そんな部分が声のトーンを決めるのにも影響を与えたのでしょうか。JIMINさんが普段使っている声ととてもちがう試みをしていました。
JIMIN:そうなんです。本当にずいぶん練習にもなりましたし、スタートするのがとても大変で、修正をものすごくたくさんしました。「最初からもう一度歌ってみます」と言って、全部やり直すのをずいぶんしたんですが、とても練習になりましたし、OSTの曲なので、もともとやっていなかったことをするよりは、さらっとした姿を盛り込もうと、ものすごくたくさん努力しました。

歌う時のJIMINさんの声というより、話す時の声に近いようでした。HA SUNG WOONさんと声が重なってサビが出てくる部分や、JIMINさんが作曲に参加した曲ではないけれども、メロディの感じが初めて発表した自作曲の「Promise」を連想させたりもするのは、レコーディングの過程でたくさんの細かい試みがあったのだろうと思います。
JIMIN:ものすごくたくさんありました。お互い電話を本当にしょっちゅうしましたし、一緒に作業したPDの方にも感謝しているのが、実は僕が、レコーディングが終わったのに何度も最初からもう一度やろうと言ったり、「これ、もう一度やってみます」と言ったりしたので、ずいぶん苦労されたんです。感じることがたくさんありましたし、ずいぶん勉強にもなりました。やりながら、そういうことがたくさんあったように思います。

「Promise」を作った時は、作曲をしながら当時つらかった気持ちから抜け出したと聞いています。「With You」は、歌いながら表現したい感情を見つけ出していったと言えるでしょうか。
JIMIN:最近MBTIテストをしてみたら外向的と出たんですが、「Promise」を作った時はとても内向的でしたし、憂鬱でもあったんです。「Promise」は、あの時の自分を振り返ることができるきっかけだったと思います。あの曲を通してもう少し外に出てくることができました。「With You」の場合は、レコーディングしていて、最初に完成したバージョンはとても感情的で、徐々に力を抜いていく過程が長かったです。「力をもう少し抜きます」、「もう少し抜いてみます」、「完全に力を抜いてみます」、「たださらっと歌ってみます」というように。さらっとした中から出てくる、悲しくて、何かを切に願う感情を入れたいと思いました。

歌を歌いながら多くのことを感じたようですね。
JIMIN:以前の自分は人の関係や言葉にすごく敏感な時があったんですが、今はそうじゃないと思います。それで「自分が以前感じていた感情は何だったんだろう?」という瞬間を、今経験しているような気がします。

2年前「Weverse Magazine」のインタビューで、ご自身のことを愛されたい人だと言っていましたが、その気持ちから少し解放された感情とも言えそうですね。
JIMIN:それで、空虚感ではないんですが、それに近い感情を感じているような気がします。「それで何が残ったんだろう?」までではありませんが、それに近い感情を感じているように思います。

それではそれを何で埋めるのかという問題があるかもしれませんね。
JIMIN:その通りです。僕はもともと何かをしていないと、かえって苦しくて疲れを感じたりもするんです。「今日一日をこんなふうに過ごしてしまったんだな」と思いますし。それが平気になったのが、この1年でした。そうしているうちに今度は「今は何をしていたんだろう? なんでそうしたんだろう?」、ちょっとそんな感じです。
​アルバム『Proof』はそれに対する答えのために出したものではありませんが、一度ぐらい過ぎた時間を振り返る必要はあったようですね。
JIMIN:アルバム制作をする時、僕は特にそういうことを考えてなかったんですが、結果的に僕にとっても必要な時間だったと思います。メンバーと事務所みんなが一度は振り返って、前に進む必要があったと思います。

「Run BTS」は、デビュー前の話から始まりますよね。この曲でJIMINさんはロックンロールの感じで迷いなく思い切り歌ってもいましたが、そうして無我夢中で走ってきたJIMINさんの以前の姿を思い出してみると、どんな感じですか。
JIMIN:若干あがいている(笑)時期だったと思います。「自分はもっと上手にできる」というふうに。僕の昔の映像を観てもそれが見えますね。

「Tony Montana」は特に「自分はもっと上手にできる」という気持ちが感じられました。どうやってレコーディングすることになったのですか。
JIMIN:SUGAさんと「何かを一緒にやってみよう」と言っていてそうなったんですが、とにかくかっこよく見せたかったんだと思います(笑)。あの時本当に皆さんの目を引きたかったみたいです。「僕も上手なんだ〜」って(笑)。

「Tony Montana」の歌詞で「君たちが悪く言っていたメジャー 本質はアイドル」と言っていました。あの時「本質はアイドル」だったとしたら、今のJIMINさんの本質は何だと言えるでしょうか。
JIMIN:アイドルですね。アイドルで合っています。「アイドル」という単語の意味は、すべての人にとってそれぞれ異なり、韓国の人たちにとってもまた異なると思いますが、とにかく僕はそこからスタートしたことは間違いありません。実際今でも僕はBTSというグループがあるからこそ、個人的に何かをすることができるわけですし、それ以前にアイドルとしてスタートしたからなので、それは変えることはできません。

アイドルとしてARMYたちには何をしてあげたいですか。『Proof』に収録されている「For Youth」で、「その手を差しのべてくれる?何度でも起き上がるから」と気持ちを表現してもいますが。
JIMIN:かっこよくなることでしょうね。良い曲で、良いミュージック・ビデオに、良いステージを見せること。それが僕ができる一番本質に忠実な、一番恩に報いる道だと思います。この2年の間、罪悪感のようなものを抱いていたんです。ずっと公演が中止されていたので、LAで初日のコンサートをしてから、何だかファンに今まで悪いことをしたなと思いました。この方々も絶対、僕たちと会えない時間に感情が冷めることもあり得たのに、見返りなしに待っていてくださったんだと思って、「今まで僕は何をしたんだろう?」と本当にずいぶん思いました。あの時コンサートで「Permission To Dance」を歌って、ARMYたちに挨拶をする時、おかしいことに、明るい曲なのに感情が込み上げてきました。

今も変わらずそういう気持ちを持ったアイドルですが、同時に多くのアーティストたちからリスペクトされる立場になりました。
JIMIN:ARMYたちが言ってくださることについては本当にありがたいんですが、まだ自分ですっかり満足はできていません。自己満足がここまでだったらこの上なく幸せだと思いますが、それができないのでつらいです。それでそれを避けて通っていたような気がします。もっと上手になりたい気持ちが大きいのに、何かをもっと地道にやってこそ人は変わるのに、「この程度なら満足しても良いんじゃないかな?」と、無理矢理覆い隠してしまおうとしていたようにも思います。でも今はもっと上手になりたいです。もっと上手に、もっとかっこよくなりたいです。変わりました。

特に「Yet To Come」を歌う時、そんなことをずいぶん考えたのでしょうね。
JIMIN:それで期待するようにもなりました。これからどんな姿になって、どれくらいもっと良いステージができるだろうかという期待があります。

JIMINさんが追求するステージの理想は何ですか。今回LA、ソウル、ラスベガス公演でも、「Black Swan」をした時、観客がJIMINさんに、見たいと望むものが何なのか、よりはっきりしたという感じがしました。
JIMIN:僕が見せられるすべての姿を最高値で見せたいです。例えば「Black Swan」ならではの暗いながらもセクシーな感じ、「IDOL」や「Burning Up(FIRE)」で最高のエネルギーを見せたり、あるいはかわいい姿を見せる時、すべて最高値を見せたいですね。その最高値が互いに調和を成した時、観客の歓声が爆発するのをいつも望んでいます。僕がミスしたり、うまくできなかった時、自分をすごく責めたのは、そんな理由があったからだと思います。

そんな時がまだ来ていないということですか。
JIMIN:ああ、全然ですね。本当にまだまだですし、今変わっていっている最中です。それで今僕たちが経験している何らかの曖昧さのために、意見を交換し続けました。僕たちが一糸乱れぬ正確なダンスをやってきましたが、もう少し緩く力を抜いたり、もうちょっと観客とやり取りできる、もう少しフリーな姿を適用する段階だったんです。でもそういう新たな姿を見せられる曲が多くはなかったので、僕たちはもっとたくさんやらないといけませんし、どんな演出やセットにすべきかについて、まだまだたくさんできることがあると思います。

グラミー賞の「Butter」のステージを観ていて、そんなふうに思いました。最初から最後までよく組み立てられたパフォーマンスで、最高値を出した感じ? 今回いろいろと慌ただしい状況の中でも重要なステージを行い、そうやってすべてがぴったり合うぐらいであれば、もう新たな境地に進めるだろうと思いました。
JIMIN:本当にものすごく楽しみになりました。「僕たちがもっと上手にできるようになった時、僕たちが演出に一つ一つもっと最高なものを見せられた時、どんな姿になっているだろうか。どれくらいもっと成熟して、そうしたらまたその未来をどう描くのだろうか」。ですので、グラミーで賞をもらうことは重要な問題じゃありませんでした。賞をもらったら嬉しかったでしょうが、それは賞をもらうことがARMYにとても大きな恩返しになると思うからです。ただ単にステージの上で僕たちがこうして本当にかっこいいグループだということを一度見せることを望んでいたんですが、そのステージができるようになって嬉しかったです。実は「ON」もやってみたかったんです。ものすごく力を注いだステージをやって、「僕たちはこんなグループなんだ、わかる?」と言ってそのまま戻ってきたかったです(笑)。それでも急いで準備したにしては良いステージをしたと思いますし、ファンの方々も喜んでくれましたし。「良かった!」と思いました。スカッとしたと言えば良いでしょうか。

未来のJIMINさんという点で、「Friends」でプロデュースをしたのは、もう一つのきっかけになったと思います。「Friends」は映画『エターナルズ』のOSTに使われもしましたが、『エターナルズ』は観ましたか。
JIMIN:はい、映画館に行って観ました(笑)。とても不思議でしたし、ありがたいと思いながらも、「ああ、曲をもっとうまく作れば良かったな」と、心残りもありましたね。

どのように始めることになった曲だったのですか。
JIMIN:実は何もないところからスタートしました。ただ練習室で「僕も何かやってみようか」と思って、ドラム・ビートに、つまり「ズンチャッズンチャッ」と、そこに一人で作業しながらスタートしました。もともと今の「Friends」のようなもっとソフトな音楽ではなくて、メロディはもう少し強く歌いました。メロディを、今のようにエモーショナルな感じよりもうちょっと強い音楽を考えていたんですが、PDの方に持っていったら、「あれ? これ、良いと思う」と言ってくださり、「メランコリーなイメージがJIMINさんに合うと思うんだけど、どう?」と提案してくださって、それが合っていると思ったので、もともと思っていたよりちょっとかわいい音楽になりました。

後半にほぼロックのように変わって合唱が出てくる展開は、そのような理由からだったようですね。レゲエでスタートして、自然に激しく変わる展開が興味深かったです。
JIMIN:はい。やっているうちにそうなりました。それから「アルバムに入れてみる?」という話が出て、Vさんと一緒に「Friends」のテーマが決まりました。

「Friends」のテーマのように、BTSのメンバーたちは今はどう見えますか。「Tony Montana」を歌っていた頃と同じでありながらも、ちがう部分があると思います。
JIMIN:友だちだ、兄だ、家族だというより、ただいつも帰ってくる場所のように感じられます。今回アメリカに行ってずいぶん感じたのが、僕がいろいろと考えている時期があったんですけど、何かを経験して戻ってきて、メンバーたちと話しながら、「そうだったんだ、そうだと思った。でもこうしたらこれからいいと思う。大丈夫」と、そんな瞬間が常にありました。こうだときちっと定義するのは難しいですが、「僕が自分自身に戻るのに、精神的にいつも大きな力になってくれるんだな」、そんな感じをすごく受けました。ですから、彼らがかっこいいというよりは、ただ「ありがたい、いつも」。言葉でまとめるのは難しいですけどそうです(笑)。
Credit
文. カン・ミョンソク
インタビュー. カン・ミョンソク
ビジュアルディレクター. チョン・ユリム
プロジェクトマネジメント. オ・ミンジ
ビジュアルクリエイティブチーム. キム・イヒョン(BIGHIT MUSIC)
写真. カン・へウォン/Assist. オム・ジス、シン・ヨンウク、オ・ヒヨン、ユン・チホ
ヘア. ハン・ソム/Assist. キム・ファヨン、ファン・ソンヒョン
メイク. キム・ダルム/Assist. ソ・ユリ、キム・ソンミン
スタイリスト. キム・ヨンジン/Assist. キム・イェソン、キム・ボンギュ
セットデザイン. チェ・ソユン、ソン・イェヒ、キム・アヨン(darak)
アーティストマネージャーチーム. キム・シンギュ、チャン・ジング、キム・スビン、イ・ジュンミン、アン・ダソル、パク・ジュンテ、イ・スンビョン、イ・ヒョンギ、チョン・デソン、イ・ジュサン