「新メンバーはブログに ハハ 今回はダンスですね」。BTSがメンバーとして合流したJIMINを紹介した日、Twitterに上げた投稿だ。Twitterで人々に自身たちの情報を発信し、詳しい内容はブログに上げる。そしてそのブログには、デビュー前にダンスの練習をしているJIMINの姿が込められている。BTSはデビュー前からSNSやYouTube、ブログなどを活用し、自身たちの近況と日常を発信してきた。マスメディアではなく、インターネットのどこかでデビューを知らせるアイドルグループの登場だった。特にBTSは練習生時代、ブログを通じて彼らの日常やデビュー過程、関心事などを絶え間なく打ち明けた。SUGAがMIDI機器に関するレビューを投稿すると、J-HOPEはストリートダンスに関する投稿と練習過程を上げ、RMが#ビルモンド・チャートという名前で毎週音楽をおすすめすることもあれば、JUNG KOOKのデビュー前のアメリカ研修記やデビュー前にメンバーと一緒に過ごしたクリスマスといった日常も確認できる。また、BTSとしてデビューする直前に切り札のように紹介されたVは後日、最初のカバー曲「SOMEONE LIKE YOU (cover.)」を上げるとともに曲に対する感想を書き込み、ファンと楽曲に対する感情を直接伝え合うこともあった。特に、ブログに明かされたBTSの練習生時代の苦労話は、いま見てもおもしろいと同時に心の片隅を痛めるところがあり、例えば「パンを作るキム・ソクジン」といった投稿で、JINは実に4時間にわたってパンを作ったものの、ひと口食べたとたんにその味の悪さから食べることを諦め、何事もなかったかのようにラーメンを作って食べる姿は、JINのセンスのある文章とともに笑いを誘うが、それと同時に大変な思いをしながらデビューを準備している中、少しでもおいしいものを食べてみようとしたメンバーの状況が重なり合う。この練習生たちが10年後、どんな姿になっているのか彼ら自身も想像がつかなかったはずだ。ブログのメニュー「LOG」にメンバーが独白の形で上げた映像日記『BANGTAN LOG』を見ると、デビュー前に「お母さんに会いたい」と話したり、デビュー直後「初めてステージに立った後でその姿を見たら嬉しかった」、「どうしてこんなに作業が進まないんだろう。歌詞が書けない」、「モニタリングして、まだまだ足りないと思った」と期待と不安をあらわにしていたメンバーは、JUNG KOOKが投稿した「161206 JUNG KOOK」で、「MAMA(Mnet Asian Music Awards、以下「MAMA」)」の大賞「今年の歌手賞」を受賞した後、「これからもっと頑張る」と言えるグループになった。そしてまた『BANGTAN LOG』は、BTSが「Dynamite」、「Butter」に続き「Permission to Dance」でビルボード・チャート「HOT100」の1位を獲った日にも、SUGAが「僕たちのできる限り最善を尽くすことが、僕たちがこれまでやってきたやり方だと思う」と記録を残すまで続く。いつデビューできるかわからず先行きの見えない日々の中で迎えたクリスマスからビルボード1位のその日まで記録として残っているBTSのブログは、彼らの歴史に関する最も私的であると同時に世界的な記録であり、デビューから今まで常にファンと最も身近につながろうとしてきた彼らのアティテュードそのものでもある。そのすべてを成し遂げた後に出した新曲「Yet To Come」で「変化は多かったけど変わりはなかったと言うよ」と歌うように。
「僕たちが主題を見つけたり話を見つけたりしたいときは、僕たちの心の中からそれを探します」。RMが「グラミー・ミュージアム(Grammy Museum)」とのインタビューで述べた言葉は、BTSのアイデンティティの中のひとつを代弁する。BTSがファンと常にコミュニケーションを取ることができ、取らなければならなかった理由の中のひとつは、彼らの伝えたいメッセージがあったからだ。彼らのデビューアルバム『2 COOL 4 SKOOL』のタイトル曲「No More Dream」は当時、夢を抱くことが難しかった同世代に伝える話であると同時に、いつデビューできるかわからない練習生としての不安を抱えながら歩んできた彼らの人生でもあった。「We Are Bulletproof Pt.2」の「Look at my profile, まだ何もない Still 練習生 and ラッパーマン」といった歌詞は、デビューし立ての、ファン以外には誰も注目していなかった境遇の新人グループからの切実な告白であり、アルバムの最後の曲「Outro : Circle Room Cypher」ではメンバーが自由に自分がどんな人なのか紹介する。一方、アルバムの最初の曲「Intro: 2 Cool 4 Skool (Feat. DJ Friz)」は、今では予言になった「We're now going to progress to some steps」と彼らの抱負を明かす。彼らはいつも壁のように前に立ちはだかる現実を率直に語りながらも壁を乗り越える希望を手放さず、このメッセージを伝える方法としてジャンルとジャンルの間を横断する形式を試みた。アルバムごとにその時期の自身たちの話を込めていたため、イントロとアウトロで話の始まりと終わりを明確にし、スキットを通してBTSの実際の会話を聴かせることで、アルバムレコーディング当時の率直な気持ちを伝えた。RM、SUGA、J-HOPEからなるいわゆる「ラップ組」が主に乗り出すサイファーが、彼らの現在はもちろん、ヘイター(hater)たちの反応までストレートに映し出した一方、メンバー各自の個人的な話は、無料で公開したミックステープを通じて発表された。彼らがデビュー1か月を迎えて発表したミックステープ「Born Singer」は、「生まれて初めてバンタンという名前で立ったステージ 未だに大邱の田舎者ラッパーと変わらなかった But アマチュアという単語の上にプロという単語を上書きした」で始まる。今プロの世界に足を踏み入れたばかりの彼らの現実がそのまま反映されており、彼らは自らのことを「アイドルとラッパーの間の境界」にいるとし、「楽屋とステージの間ではペンを手に歌詞を書く」と吐露する彼らだけの現実を伝えた。アイドルであると同時にヒップホップの方法で自身たちの話をしてきたBTSは、ヒップホップをしていると同時にアイドルであり、いま練習生生活を終えてデビューしたばかりの小さな事務所のグループのメンバーが持っている悩みや不安という、彼らだけが感じられる話をヒップホップを通して伝えた。BTSにとってヒップホップは、ただ彼らの好きな音楽的スタイルであるだけでなく、ヒップホップとアイドル、練習生とスターなど、大衆音楽産業のいろんな境界に立たされていた彼らのその瞬間の現実を伝える方法だった。 そのため、BTSの音楽はメッセージに応じて自ずと幅を広げ、メッセージは、年を追うごとにますます多くの人々が彼らに耳を傾けるにつれ、より深く成長した。デビュー当時、必死だった彼らは『花様年華』で彼らの悲しみを同世代の青春と共感できるものへと拡張し、『WINGS』では成長に伴う各自の悩みに向き合い、「2! 3!」でファンに向け「大丈夫 さあ1、2、3と数えたら忘れて 悲しい記憶すべて消して」と、BTSと一緒につらい思いをしていたファンを慰めた。そして『LOVE YOURSELF』に至ると、いつまでも世の中と闘うかのように見えた彼らが他人に対し、自らを肯定し愛することについて語る。BTSが世界的なスーパースターになる過程は、ただ外形的な成功だけでなく、メンバーの成長記録であり、世の中と闘ってきた7人の青年たちが世の中との和解を超え、より良い世の中のためのメッセージを提示するようになるまでの過程だ。K-POPの中で、K-POPの現実に適応すると同時に闘争していた人たちが、たくさんの境界を乗り越え、たくさんの人たちとつながり、抱き合う過程。メッセージを持って生まれたアーティスト、「Born Singer」が持つ力だ。
BTSは2013年6月13日、『M COUNTDOWN』でデビューステージを飾った。当時のタイトル曲「No More Dream」とともに公開された「We Are Bulletproof Pt.2」で、彼らはダンスブレイクの途中、次のようなパフォーマンスを披露した。J-HOPEがビーボーイングの後に腰を後ろに反らし、JIMINがその上でタンブリングをする。またJIMINがJUNG KOOKと帽子を投げてキャッチする。客席から歓声が上がった。初めての番組ステージでBTSが見せたパフォーマンスは、彼らが見せてくれる未来に対する自らの予言だった。当時のBTSの練習室は小さかったものの、ステージに対する熱望は際限なく大きく、彼らの立つステージが大きくなるにつれ、さらに驚くべきパフォーマンスを披露した。2014年「MBC歌謡大祭典」で、彼らはまだ新人だったにもかかわらず、既存の曲を歌う他にも「海洋少年団」のコンセプトで大人数での群舞を披露し、同じ年に「MAMA」ではBlock Bと一緒に「Boys In Battle」というテーマで、韓国では珍しいグループ対グループの対決形式のパフォーマンスで話題を集めた。新人グループが年末ステージで見せた型破りのパフォーマンスは、BTSに対する関心が集まるきっかけとなり、この勢いは翌年の『花様年華』シリーズへと続き、今や「伝説」と言えるBTSの成功の歴史が始まる。そしてBTSが2016年「MAMA」でついに「今年の歌手賞」を受賞したその時、彼らはその年に発表したアルバム『WINGS』のカムバック・トレーラー「Boy Meets Evil」をテーマにした同名のパフォーマンスを披露し、『WINGS』のコンセプト・トレーラーとタイトル曲「Blood Sweat & Tears」などで見せたシーンを公演用に新しくアレンジし、衝撃的なシーンを届けた。JUNG KOOKが空中にぶら下がったままパフォーマンスが始まり、ビーボーイングと舞踊をミックスしたJ-HOPEと、目隠しをしたまま踊るJIMINのソロダンスが交差した。そして「Blood Sweat & Tears」が終わった後、ダンサーと披露した「Burning Up (FIRE)」の大規模パフォーマンスは、「今年の歌手」の資格を自ら証明する圧倒的な瞬間を残した。彼らにとって授賞式などの重要なステージは、1年の成果を確認してもらう場というよりは、むしろより新しく、より驚くべきパフォーマンスを披露する挑戦の場であり、彼らはいつも以前の限界を超えたパフォーマンスで、さらに高い人気を博した。BTSが「ビルボード・ミュージック・アワード」と「アメリカン・ミュージック・アワード」に初めて立った2017年の「MAMA」では、「MIC Drop (Steve Aoki Remix Ver.)」でスーツを着たメンバーが、背景画面以外になんの舞台装置もなく、激しい歌とダンスだけで彼らの情熱に満ちたエネルギーを見せており、ビルボード・チャートの「ビルボート200」で1位になり、全世界的なスターに飛躍した2018年には「MMA(Melon Music Awards)」で、「IDOL」に現代音楽と舞踊をはじめ、扇の舞、獅子舞など、韓国の伝統文化を結合させたパフォーマンスで衝撃を与えた。彼らのステージはただ華やかな演出やかっこいい振り付けだけでなく、それぞれの時代ごとにBTSがなぜ人々を熱狂させたのか、彼らがパフォーマンスで何を伝えたのかを残した記録でもある。2020年「MAMA」の中、BTSは「ON」をソウルワールドカップ競技場で披露した。本来のパフォーマンスにはなかった大規模マーチングバンドと一緒だった。誰もいない客席でのことだ。本来は観客で埋め尽くされた大型スタジアムですべきだったはずの「ON」のパフォーマンスは、誰もいないスタジアムでパンデミック終息を祈念する儀式になった。そして彼らが再び観客の前に立った「第64回グラミー賞授賞式」で、彼らは「Butter」をスパイがグラミーに侵入するようなコンセプトのパフォーマンスで披露し、ステージへの帰還を告げた。あいにくこのパフォーマンスを準備していた当時、メンバーは怪我やコロナウイルス感染などで練習が容易ではなかった上に、着ていたジャケットを脱いで一度で結び合うなど運も問われる振り付けのため、困難に直面していた。しかし、ステージに上がった瞬間、彼らは嘘のようにすべてのパフォーマンスを成功させた。最も大事な瞬間、そして時には、予測できない問題が生じる。それでも結局のところ、最もかっこいいパフォーマンスを披露してみせる。そして振り返ると、ショーの最後、一番高いステージの上にいた。
BTS: 10 Years & 10 Things That Changed The World
03 Burn The Stage
by Weverse Magazine
BTS “Paldogangsan” Dance practice
BTS: Gayo Daejejeon intro performance trailer
2015 MAMA [Boys In Battle] BTS vs BlockB (2014 MAMA) 151127 EP.5
BTSのデビュー日である6月13日を記念するために6月初めから13日まで続く「FESTA」は、BTSがファンと一緒に作っていく祭典の時間だ。未公開曲や振り付け映像、写真などが10日間余りの間、溢れんばかりに出てくるのはもちろん、各種イベントも続く。Vの最初の自作曲「4 O'CLOCK」、JUNG KOOKの「My You」、ラップ組の「DDAENG」、ファンソング「so 4 more」、「I Know」など数々の音源もまたFESTAで公開された。デビュー1周年の当時、メンバーで「何でもやってみよう」という気持ちで家族写真を撮るなど、ささやかなイベントで始まったFESTAが、今ではFESTAのために動画で配信したミニ・ファンミーティング「ホームパーティー」、「プロムパーティー」などをはじめとした特別な各種イベントを行う大掛かりな催しに発展し、デビュー10周年の今年はオフラインでの大型イベントまで準備された。「FESTA期間には予定も入れてはいけない。毎日『新しいコンテンツや情報』が出てくるから」。SUGAが「FESTA」について話したことは、BTSにとって「FESTA」が持つ意味を表したものでもある。アーティストが過去1年間感じたファンに対する感謝の気持ちを、その間準備してきた「新しいコンテンツや情報」で表現すること。BTSの人気が急上昇するにつれ、彼らはだんだん多くのスケジュールをこなさなければならなかった。しかし彼らはその間にもいつも「FESTA」に向けた準備を進めてきた。BTSは「FESTA」を通じてARMYに対する感謝を伝え、ARMYは「FESTA」を通じてBTSと強い絆で結ばれていることを確認する。「FESTA」はアーティストがファンに対し、特定の期間を決めて行う一種の感謝祭として、K-POPファンダム文化にも大きな影響を及ぼしたが、アーティストとファンが毎年彼らの通った道を振り返ると同時に、彼らの成長を確かめられるという点で、またちがう意味を持つ。BTSが一緒に撮った家族写真と直接書いたプロフィールがメンバーの変化を表し、デビュー100日記念で始めた「見るラジオ」コンセプトの「KKUL FM 06.13」は、いつの間にかFESTAのイベントのひとつになり、メンバーが過去1年間を振り返るきっかけにもなった。この過程を経てARMYはBTSの通った道を思い出し、それと同時に自分とBTSがともに過ごした時間を記憶する。FESTAはそれ自体でアーティストとファンが一緒に作ってきた時間に対する思い出のアルバムであり、BTSからの「新しいコンテンツや情報」をARMYが楽しみながら完成する、アーティストとファンが一緒に作り上げた共同体を記念する過程でもある。このような彼らの絆は、『MAP OF THE SOUL : PERSONA』の発売前、ARMYがBTSとの思い出を振り返る大型ファンイベントだった「ARMYPEDIA」といったまたちがう祭典の形式にもつながった。「Make It Right」の歌詞の通り、ARMYは「招待されていない、歓迎されない僕」だったBTSに「気づいてくれたたった一人」でもあった。今のBTSは、いつの間にか誰もが招待したがる存在になった。そしてまさに今、BTSは自身の名前でARMYを招待する。FESTAという名で。