2006年にリリースされたEruの「Black Glasses」は、2021年に動画プラットフォームTikTokで複数の人気ユーザーにカバーされたことで有名になり、Melon総合チャート100位内にランクインした。Yang Joon Ilは、2019年にYouTube『オンライン・タプコル公園』に投稿された30年前のKBS『歌謡トップ10』の公演動画が300万超えの再生回数を記録し、その後、彼はJTBC『TWO YOOプロジェクト – SUGAR MAN』への出演でスターダムにのし上がった。MBC『撮るなら何する?』は、2020年の「SSAK3プロジェクト」でDEUXの1994年発売の「In Summer」を、2021年の「MSG WANNABEプロジェクト」で2000年代半ばに人気を博したSG WANNABEの過去のヒット曲を各種音楽配信サービスのチャート上位に並ばせた。パンデミック以降、屋外における楽曲利用量は減少した一方、テレビのバラエティ番組の影響力は相対的に大きくなった。また、「TikTokチャレンジ」やYouTubeのハイライト動画、Instagramの「Reels」といったソーシャルメディア上の口コミが楽曲のヒットに重要な役割を果たし、過去の曲が音楽配信サービスのチャートで「逆走(再びランキング上昇)」する場合も多くなっている。
最近、「BIGHITの鄭道伝(朝鮮建国の功臣)」というあだ名がつけられた歌手LEE HYUNは、この変化の流れを自分なりのやり方で追いかけている。2007年に男女混合グループ「8eight」としてデビュー後、「Without a Heart」、「Goodbye My Love」、「Close That Lip」に続き、男性デュオ「Homme」として出した「Still Eating Well」、ソロアルバムの「You are the best of my life」などで人気を博した彼は、2021年3月にYouTubeチャンネル『Hyunie Combo TV』を開設し、「BIGHITの鄭道伝」と言われる自身のキャラクターをコンテンツに積極活用する。LEE HYUNは2018年にMBC『ラジオスター』で、「みんな、僕がBIGHIT所属だと言うと、あなたがなぜBTSの事務所に所属しているのかと聞く。しかし、僕はBIGHITに最初から所属していた。BIGHITの第1号」だと自身を紹介し、現在HYBEのレーベルになったBIGHIT MUSICにおける自身の役目について愉快に話した。LEE HYUNは、彼のこのようなキャラクターと歌手LEE HYUNとしての姿を結合させ、『Hyunie Combo TV』を運営する。HYBEの新社屋への移転当時、「BIGHITの鄭道伝」という自身のキャラクターに相応しく新社屋ツアー動画を投稿したり、BTSの「『Permission to Dance』チャレンジ」が流行っていた時は、当該振り付けを手掛けたソン・ソンドク・パフォーマンスディレクターに振り付けを伝授してもらい、HYBEの他のアーティストやスタッフとの関係を見せる。BTSの「Butter」のミュージックビデオ・リアクション動画ではPdoggプロデューサーとソン・ソンドク・パフォーマンスディレクターを、TOMORROW X TOGETHERの「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat.Seori」の時はSlow Rabbitプロデューサーを招待し、コンテンツの裏話を紐解く場をも設けた。
LEE HYUNは、ミュージックビデオ・リアクション動画が「リアクション動画でありながらリアクションのない、ビハインドに近いような」動画にならざるを得ない理由について、「お互い長い付き合いのアーティストで、なおかつそのコンテンツに参加した立場であれば、自然とそうなってしまう」とし、アーティストであり昔からの知り合いでもある立場について語った。彼が「スタッフ体験」としてコンテンツチームの一員になり、TOMORROW X TOGETHERに会う企画をしたのも、「夜9時から12時の間に筋トレをしていると、TOMORROW X TOGETHERのメンバーがスケジュールを終えてジムに来る。最初はただ見ていたが、筋トレの姿勢をアドバイスするようになり、インストラクターのように教えていたことがある」とし、運動を一緒にしたというきっかけがあったからだ。BTS担当のマネージャーチームを体験することになった背景には、「以前、BTSと同じ時期に日本でコンサートをしたことがあったが、当時ホテルでお互い『スタッフへの感謝の気持ちを持たなければならない』という話ばかりずっとしていた」という経験から始まった。LEE HYUNは「BIGHITの第1号」らしく、BIGHIT MUSICのアーティストやスタッフとの関係を活かして自身のコンテンツを作り、その過程で他のYouTubeチャンネルならなかなか迫れないアーティストとスタッフの働く現場を視聴者に届けることができる。
LEE HYUNがBTS担当のマネージャーチームを体験する2本のコンテンツは、8月31日を基準に第1弾が約226万回、第2弾が約255万回の再生回数を記録し、それぞれ7,000~9,000件以上のコメントがつけられた。動画のコメント欄には世界各国の言語で書き込まれたコメントがつけられ、彼がYouTubeライブ配信をする時も海外のファンからのコメントが多くなっている。このように関心が集まった結果、彼は今年7月13日にYouTubeから貰った銀の盾を撮った動画を投稿し、8月31日現在35万6,000人以上のチャンネル登録者を集めることができた。そして、彼がユーチューバーとして、またはHYBEのアーティストに関するバラエティ・コンテンツ・クリエイターとしての活動から得た関心を徐々に歌手LEE HYUNを知らせることに活用していく。彼は『Hyunie Combo TV』に、「最近、固定された状態で音楽を聴くことが多く、実際のライブを聴ける場合がほとんどない」現実の中、ストリーミングライブ「作業室『Honey』ライブ」やハイライト動画「Hyunie歌う?」、7月のカムバックに合わせて公開した「Live Clip」などのコンテンツを着実に投稿している。LEE HYUNは『Hyunie Combo TV』で、「LEE HYUNの音楽を聴けるハブを作りたかったので、(YouTubeを通して)自分の音楽をより気軽に聴かせられたら嬉しい」とし、YouTubeチャンネルを開設したきっかけを明かした。彼は、新しいメディア環境の中で自身を知らせる方法を見つけ、そこから得られた関心を彼の音楽を聴いてもらうきっかけにしている。楽曲の興行において、テレビのバラエティ番組による宣伝、ソーシャルメディアによる話題性、そして「本キャラ」や「副キャラ」といったアーティストのキャラ作りなどが複合的に働く時代に、LEE HYUNは自身の拠り所であるHYBEを活かし、YouTube上で彼なりのMBC『撮るなら何する?』、JTBC『TWO YOOプロジェクト – SUGAR MAN』、そしてKBS『ユ・ヒヨルのスケッチブック』を全て届けているようなものだ。
LEE HYUNが『Hyunie Combo TV』に投稿した「You are the best of my life」や「Goodbye My Love」、「Still Eating Well」などは、以前とは全く違う雰囲気だ。彼が過去に立っていた音楽番組やコンサートのステージとは違い、ロウソクでほんのりと光を灯した寝室や、ソファーと様々な植物で飾られたスタジオで撮影した。2000年代から2010年代前半に流行っていた濃いアイメイクとワックスで固定したヘア、体のラインの出るジャケットやジーンズは、自然なヘアとメイク、ルーズフィットのシャツとコットンパンツに替わり、全く違う雰囲気を演出する。ボーカルのスタイルも変わった。LEE HYUNは、「シヒョクさんが練習曲として歌わせた曲がどれも非常に繊細な曲だった。今時のバラードに合うような曲が多く、当時の曲をディテールに練習した」とし、練習生時代とデビュー当初に歌った曲を2020年に改めて歌い、今時のスタイルを練習したと明かした。MBC Radio『正午の希望曲キム・シニョンです』では、新曲「Moon in the Ocean」の「海がただただ怖かった僕」という歌詞を本来のトーンと変えたトーンで歌ってみせ、「JUNG KOOKさんをすごく真似しました。JUNG KOOKさんを参考にしました」とも話した。「時代の流れに沿った音楽」をしたいと思うからだ。「BTSやTOMORROW X TOGETHERの音楽を聴いた時、ボーカル的に耳を澄ますようになるところは、ただ純粋に歌を歌う人として真似してみたくなります。音楽の性質や方向性が僕の好きなスタイルでもありますし、そのような楽曲が愛されているじゃないですか。あと、後輩をたくさん真似してみると、表現する際に昔は正解だと思っていたことが正解ではないかもしれないなとか、こういうのもあるんだと気付かされるところもあって、むしろもっと良いですね」。例えば、「You are the best of my life」のLive Clipで彼は、別れを経験したばかりの人の極度の悲しみの感情が伝わっていた2011年の原曲とは違い、2021年のライブでは歌の最後の音節や高音をなだらかに発展させ、まるで時間が経った後、その感情を思い返すような感覚へと変化を与えた。『Hyunie Combo TV』によるユーチューバーLEE HYUNの登場は、歌手LEE HYUNが時代に合わせた変化を選んだ結果でもある。
LEE HYUNは「Moon in the Ocean」について、「誰もが恋したい、成功したい、いいことが起きてほしいと思うけれど、それを努力も傷もなく得ることはできない。もし恋であれば、犠牲もなく得ることは不可能だという思いから始めた歌」だと説明する。これは、彼が現在、歌い続けるためにやっていることについて話しているようにも聞こえる。彼は、「『自分に何かもう少し新しいことができるだろうか。できないなら、やってもやらなくても同じではないか』という恐れ」を克服し、新しいやり方で自身を知らせるようになり、「生まれつきのボーカリストではなく、歌の習得に長い時間を要する従来の自分との異質感があり緊張する」瞬間を乗り超え、今の時代の人々に好きになってもらえる歌を歌うために努力する。2007年の歌手が2021年にもずっと新曲を歌うための働き方だ。
文. オ・ミンジ
写真. BIGHIT MUSIC