
NoW
[NoW]『ミナリ』が育った場所
境界を崩す「私たち」の生き方
2021.03.19
*この文章には映画『ミナリ』のネタバレとなる内容が含まれています。
去る3日韓国で公開された『ミナリ』は、現在世界中で最も注目されている映画の一つだ。ゴールデングローブ賞、サンダンス映画祭など、全世界の映画祭で72の賞(11日現在)で受賞しており、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとした海外のニュース・メディアは、『ミナリ』が、来る4月に開催予定の第93回アカデミー賞授賞式で、作品賞をはじめ、6部門にノミネートされたことを大きく取り上げた。食卓のナムルとしておなじみの名前が、全世界から好評を得る「Minari」と呼ばれるように、よく知っているようで、なじみがないこの映画は、移民になることを選択した家族の話だ。ジェイコブ(スティーヴン・ユァン)とモニカ(ハン・イェリ)は、韓国からアメリカへ、そしてカリフォルニアからアーカンソー州の荒れ地へと居を移す。二人が共働きで、二人の子どもアン(ノエル・ケイト・チョー)とデビッド(アラン・キム)の面倒をみることが難しくなると、韓国で生活していたモニカの母スンジャ(ユン・ヨジョン)がともに暮らすことに。映画は、より良い未来のために各自の立場で各自の方法で、人生を耕し築き上げていく人々を描く。登場人物たちは泣き、笑い、時には突き放し傷つけるが、やがては互いに抱きしめ合いながら、日々訪れる、「手強い」今日を耐える。そうして過ごした一日一日は、激しい波風にものまれないようにしっかり掴んでいてくれる心の根となり、一つの社会を形成する歴史の一部となる。話はさらに映画『ミナリ』についてのことに続く。
『ミナリ』は、アメリカ人の監督がアメリカの制作会社とともにアメリカで撮影した、アメリカ市民の人生を題材にした映画であるにもかかわらず、台詞の半分以上が非英語という規定を理由に、去る12月のゴールデングローブ賞で「外国語映画」に分類された。すると映画界内部から糾弾の声が噴出した。俳優ダニエル・デイ・キム(Daniel Dae Kim)はTwitterを通じて、「実際の国籍がアメリカにもかかわらず、自分の国に帰れと言われているのと同じ(The film equivalent of being told to go back to your country when that country is actually America)」だと批判した。映画製作者、フランクリン・レナード(Franklin Leonard)は、「『イングロリアス・バスターズ』も台詞のほとんどが英語ではなかったが、このような分類はされなかったということを忘れてはいけない」と語っており、監督兼製作者のフィル・ロード(Phil Lord)もまたこれについて、「問題はこれが、見過ごしではなく選択だという点(The thing is, on Minari and the Globes, this isn’t an oversight. It’s a choice)。たいへん慎重に考慮され、意図された有害な決定(This is a carefully considered, deliberate, harmful decision)」だと主張した。
『ミナリ』は現在の差別だけでなく、そのような現在を変えるために努力する人々もまた存在するということを提示する。彼らは今日より少しは幸せであろう明日のために、絶え間なく努力する。『ミナリ』が「外国語映画」に分類され、作品賞部門にノミネートできないことについての指摘は、ゴールデングローブ賞を主催し審査しているハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の積年の弊害と悪習に対する問題提起につながった。結局HFPAは、去る7日、「組織の透明性を高め、より包括的なコミュニティを構築するために最善を尽くす」という骨子の声明文を発表し、内部規定と会員資格要件の検討、人種及び性差別の防止のための教育の義務化などを約束した。「映画は、単純に国家的な話を語るだけでなく、私たち皆が共有する、人間の資質について語ることもできると信じている」。リー・アイザック・チョン監督が『CINE21』誌とのインタビューで話したように、個人的な、また同時に普遍的な人間の生き方を語る映画において、言語や国籍のような境界は無意味だ。『ミナリ』の公開以降、映画の内外で繰り広げられた話は、そのような事実を証明してのけた。「その人たちだけの経験」ではない、「私たちの人生」がそこにあるだけだということを。
去る3日韓国で公開された『ミナリ』は、現在世界中で最も注目されている映画の一つだ。ゴールデングローブ賞、サンダンス映画祭など、全世界の映画祭で72の賞(11日現在)で受賞しており、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとした海外のニュース・メディアは、『ミナリ』が、来る4月に開催予定の第93回アカデミー賞授賞式で、作品賞をはじめ、6部門にノミネートされたことを大きく取り上げた。食卓のナムルとしておなじみの名前が、全世界から好評を得る「Minari」と呼ばれるように、よく知っているようで、なじみがないこの映画は、移民になることを選択した家族の話だ。ジェイコブ(スティーヴン・ユァン)とモニカ(ハン・イェリ)は、韓国からアメリカへ、そしてカリフォルニアからアーカンソー州の荒れ地へと居を移す。二人が共働きで、二人の子どもアン(ノエル・ケイト・チョー)とデビッド(アラン・キム)の面倒をみることが難しくなると、韓国で生活していたモニカの母スンジャ(ユン・ヨジョン)がともに暮らすことに。映画は、より良い未来のために各自の立場で各自の方法で、人生を耕し築き上げていく人々を描く。登場人物たちは泣き、笑い、時には突き放し傷つけるが、やがては互いに抱きしめ合いながら、日々訪れる、「手強い」今日を耐える。そうして過ごした一日一日は、激しい波風にものまれないようにしっかり掴んでいてくれる心の根となり、一つの社会を形成する歴史の一部となる。話はさらに映画『ミナリ』についてのことに続く。
『ミナリ』は、アメリカ人の監督がアメリカの制作会社とともにアメリカで撮影した、アメリカ市民の人生を題材にした映画であるにもかかわらず、台詞の半分以上が非英語という規定を理由に、去る12月のゴールデングローブ賞で「外国語映画」に分類された。すると映画界内部から糾弾の声が噴出した。俳優ダニエル・デイ・キム(Daniel Dae Kim)はTwitterを通じて、「実際の国籍がアメリカにもかかわらず、自分の国に帰れと言われているのと同じ(The film equivalent of being told to go back to your country when that country is actually America)」だと批判した。映画製作者、フランクリン・レナード(Franklin Leonard)は、「『イングロリアス・バスターズ』も台詞のほとんどが英語ではなかったが、このような分類はされなかったということを忘れてはいけない」と語っており、監督兼製作者のフィル・ロード(Phil Lord)もまたこれについて、「問題はこれが、見過ごしではなく選択だという点(The thing is, on Minari and the Globes, this isn’t an oversight. It’s a choice)。たいへん慎重に考慮され、意図された有害な決定(This is a carefully considered, deliberate, harmful decision)」だと主張した。
『ミナリ』は現在の差別だけでなく、そのような現在を変えるために努力する人々もまた存在するということを提示する。彼らは今日より少しは幸せであろう明日のために、絶え間なく努力する。『ミナリ』が「外国語映画」に分類され、作品賞部門にノミネートできないことについての指摘は、ゴールデングローブ賞を主催し審査しているハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)の積年の弊害と悪習に対する問題提起につながった。結局HFPAは、去る7日、「組織の透明性を高め、より包括的なコミュニティを構築するために最善を尽くす」という骨子の声明文を発表し、内部規定と会員資格要件の検討、人種及び性差別の防止のための教育の義務化などを約束した。「映画は、単純に国家的な話を語るだけでなく、私たち皆が共有する、人間の資質について語ることもできると信じている」。リー・アイザック・チョン監督が『CINE21』誌とのインタビューで話したように、個人的な、また同時に普遍的な人間の生き方を語る映画において、言語や国籍のような境界は無意味だ。『ミナリ』の公開以降、映画の内外で繰り広げられた話は、そのような事実を証明してのけた。「その人たちだけの経験」ではない、「私たちの人生」がそこにあるだけだということを。
トリビア
ゴールデングローブ賞外国語映画賞(Golden Globe Award for Best Foreign Language Film)
ゴールデングローブ賞授賞式で台詞の半分以上が非英語の言語で制作された映画を、本賞(作品賞)と別途に賞する部門だ。1986年までは「外国映画賞(Best Foreign Film)」だったが、1987年「外国語映画賞」に変更され、イギリスをはじめとする非アメリカ英語使用の映画は当該部門から除外され、作品賞候補対象となった。アメリカ映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が主管するアカデミー授賞式の場合、1945年から「外国語映画賞」部門があったが、2020年に「国際映画賞」に名称を変更した。アメリカ以外の国・地域で制作された、台詞の過半数が非英語からなる長編映画を対象にしており、作品賞のような本賞の候補にも同時になることができる。
ゴールデングローブ賞外国語映画賞(Golden Globe Award for Best Foreign Language Film)
ゴールデングローブ賞授賞式で台詞の半分以上が非英語の言語で制作された映画を、本賞(作品賞)と別途に賞する部門だ。1986年までは「外国映画賞(Best Foreign Film)」だったが、1987年「外国語映画賞」に変更され、イギリスをはじめとする非アメリカ英語使用の映画は当該部門から除外され、作品賞候補対象となった。アメリカ映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が主管するアカデミー授賞式の場合、1945年から「外国語映画賞」部門があったが、2020年に「国際映画賞」に名称を変更した。アメリカ以外の国・地域で制作された、台詞の過半数が非英語からなる長編映画を対象にしており、作品賞のような本賞の候補にも同時になることができる。
文. イム・ヒョンギョン
デザイン. チョン・ユリム
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無断転載及び再配布禁止
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