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ソ・ソンドク(ポピュラー音楽評論家)
写真Getty Images, Spotify

Spotifyに最初に登録した時のことを覚えているだろうか。ユーザーは好きなアーティストを3人以上選択しなければならない。Spotifyはあなたのすばらしい好みを称賛した後、人気チャートや新曲コレクションではなく、あなたの好きそうな音楽を最初の画面に表示する。最初の選択と似たアーティストが含まれたプレイリストとアルバムを推薦し、同じ基準で「Daily Mix」や「ステーション」を作る。そして最初の鑑賞の記録が蓄積され、数時間経つと「あなただけの音楽」のメニューで「Daylist」を見ることができる。Daylistは、多くの人が称賛するSpotifyの音楽推薦、あるいはキュレーションの最新バージョンだ。

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Daylistはユーザーの視聴習慣や気分に合わせて、一日最大12回までプレイリストを自動再生する。各プレイリストには、ジャンル、ムード、曜日や時間帯を反映したタイトルが付く。実際に再生したタイトルの一部は次の通りだ。「サッド ガール パワー バラード 土曜の午後(sad girl power ballad saturday afternoon)」、「ドーパミン 未来志向 月曜日(dopamine futuristic monday)」、「コスミック K-POP 日曜の夜(cosmic k-pop sunday night)」。毎回新しく作られるプレイリストは、保存しなければ消えてしまう1回限りのものだ。そこにはユーザーが好きな曲、似たようなおすすめの曲、新曲などがバランスよく混ざっている。

それは、Spotifyがこれまで提供していたさまざまなパーソナライズされたプレイリストの特徴を一つにまとめたように見える。例えば「Discover Weekly」は、リスナーの好みをもとに新たな音楽を提示する。「Release Radar」は、好きなアーティストやジャンルの新曲に重点を置いている。「Daily Mix」は、ジャンルやスタイルによって最大6つのプレイリストを作る。英語とスペイン語でのみ提供される「DJ」は、パーソナライズするためのAIの存在を前面に押し出している。あなただけのためのDJが、簡単なコメントとともにさまざまなジャンル、ムード、時代の音楽を絶えず流してくれる。だが、あまりに多様なテーマが4〜5曲ごとに変わり、プレイリストを前もって確認できないという短所もある。

Daylistは、キュレーションサービスの種類までもがあまりに増えた状況で、選択の苦痛を最小限にし、ひたすらあなただけのためのサービスだというアピールも確実だ。昨年9月、北米、イギリス、オーストラリアなど一部の地域で始めたサービスを、わずか1年後の今年の9月、グローバル全域で多様な言語に拡大提供できた背景だ。Daylistはすでに広く愛されている。Spotifyによると、Daylistのユーザーの70%は毎週、数百万人は毎日、自分だけのプレイリストを鑑賞しながら、発見の喜びを味わっている。

現在キュレーションとパーソナライズは切っても切れない関係のように見える。Apple Musicも「New Music」、「Heavy Rotation」など5つのパーソナライズされたミックスを提供している。だが、ストリーミングサービスの初期を考えてみると、キュレーションとは編集者の存在と、時にはその人の好みや目利きが表れる静的なサービスだった。ジャンル、ムード、アクティビティに区分される音楽消費の基準は、すでにずいぶん前から定着していた概念だ。そのため「楽しい ポップ ディナー」、「平和な ジャズ プール」のような組み合わせは古典的なプレイリストのテーマになっている。だがそのようなアプローチは、ストリーミングをレコードやラジオという伝統的な媒体の延長線上に見る、古い考え方だということが判明した。デジタルネイティブ世代にとって、ストリーミングは彼らが知っている唯一の媒体だ。すべての音楽はすでにそこにある。重要なのは他の人が聴くことではなく自分が聴くことで、それが自分を反映していると信じていることが必要だ。現在の自分の感情や人生の段階に合った音楽やプレイリストを積極的に望む欲求は自然なことだ。

アルゴリズムやAIがある日突然登場し、魔法のように新たな欲求を満たしたわけではない。Spotifyはこの10年以上、他のストリーミングサービスとは異なるキュレーション哲学をベースに、自社の音楽推薦サービスを改善してきた。Apple Musicの前身であるBeats Musicを作ったジミー・アイオヴィンは、2015年Apple Musicを立ち上げ、キュレーションに対する立場を次のように語っている。「私たちが自ら選んだ最高の音楽専門家たちが厳選した、革新的な音楽サービス」を約束し、「アルゴリズムだけではそのような感情的な作業はできません。人間的な手が必要です」。音楽ストリーミングと推薦サービスの先駆的企業であるPandoraの考えはどうだったのだろうか。同じ時期、Pandoraのプレイリスト責任者エリック・ビエシュケはこう話している。「あなたが好きな曲を2曲、嫌いな曲を1曲提供したとしたら、私たちは失敗だ」。これもまた、完全にアルゴリズムに依存する音楽推薦の危険性を警告する発言だ。

Spotifyの方向はちがった。彼らは2015年、完全にアルゴリズムで作動するパーソナライズされたプレイリスト「Discover Weekly」を紹介した。ここでは当時引き受けた3,000万曲以上の曲についてのデータが活用された。それ以降にも、Spotifyはあなたが何を聴いて、何が好きかを記録し、それを他の人と比較し、サウンドと歌詞のムードを分析する技術を磨き、数千マイクロジャンルを区分する作業を経て、アルゴリズムを基盤としたキュレーティングという未来を準備してきた。Spotifyのデータ錬金術師と呼ばれたグレン・マクドナルドののタイトルのように、「あなたはまだあなたの大好きな曲を聴いていない」という信念はDaylistまで続く。

過去の音楽の発見とは、ジャンルやスタイルにより好みを具体化し、それを指標として拡張する概念だった。ストリーミングサービスがあなただけの音楽ライブラリーの代わりに、世の中のすべての音楽をポケットに入れてくれた時、プレイリストとキュレーションはこれまで以上に重要になった。10年前のSpotifyの方向設定は成功したのだろうか。Spotifyは、現在全世界のストリーミング市場の30%を占める、1位の企業だ。絶えず変化するキュレーションは、SNSとしてのストリーミングサービスにとって最も強力な競争力となった。すべてのSNSは、ユーザーがプラットフォームを離れることなく、できる限り長く留まることを望む。スウェーデンから来たSpotifyが、すべてのグローバル競合他社を抑えて、あなたのためだけの再生ボタンを作り、成し遂げたことだ。

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