『ホットスポット』(日本テレビ)
チェ・ミンソ:「空を見ろ!鳥か?飛行機か?いや、うちの同僚だ」。日本テレビドラマ『ホットスポット』は、私たちが知っているあらゆる宇宙人のステレオタイプな話を覆す。日本の創作物の中の宇宙人が大抵神秘的で威圧的だったり、時には敵対的な存在として描かれているのに対し、この作品の高橋は田舎の観光地のホテルの従業員として働く、UFOより近所のスーパーの方が似合うメガネをかけたおじさんだ。同僚の清美に正体がバレて以来、彼の平和な日常にはいろいろな問題が起きる。ホテルの影の実力者でシングルマザーの清美は、高橋の気弱な性格を見抜き、彼を自分の地元の友人の集まりに引っ張り込んで、彼の宇宙人の超能力を利用する代わりに、支配人に隠れて温泉を使わせるというずる賢い取引まで成立させる。高橋が宇宙人なら、清美は宇宙人使いだ。
しかし同時に高橋は、「宇宙人」に視聴者が期待するスーパーヒーローとしての役割もしっかり果たす。富士山が屏風のように取り囲む山梨県の美しい温泉街にも、いつ噴火するかわからない火山のような緊張感が漂う。第2話で高橋が不良たちと相対した時、彼は非現実的なほど巨大な満月をバックに屋根の上に飛び上がり、まるで満月を投げるようにバレーボールを飛ばす。そのような演出の中で、平凡な日常は一瞬で脅威的なスペクタクルに変貌する。脚本家バカリズムが前作『ブラッシュアップライフ』で見せた、素朴な日常とファンタジー的要素のマリアージュをここでも見ることができる。
我らがスーパーヒーローの主人公がすばらしい能力を見せても、清美やその友人たちの反応は平然としている。宇宙人の身体構造は人間と異なり背中が丸くなっていて、冷たいものを食べると歯がしみるという告白にも、返ってくるのは「普通に猫背ですね」という淡々としたリアクションだけだ。そのように未知の存在を恐れたり警戒するのではなく、ありのままに受け入れる見方こそ、この時代が必要とする共存の姿勢ではないだろうか。富士山麓の小さな町で繰り広げられる特別なおもてなしの物語を、冬の夜の温泉のようにゆっくりと味わってみてほしい。

『ブルータリスト』
ペ・ドンミ(『シネ21』記者):「何の期待もなかった」と口癖のようにつぶやく男がいる。有名芸術大学バウハウスで建築を学んだ天才建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)という男だ。ユダヤ人の彼はナチスを逃れてハンガリーからアメリカに渡った。新たな土地に大きな期待を抱いていたわけではなかった。生きることが優先だったラースローは、倉庫に住まいを用意してくれた従兄弟に「何の期待もなかった」と言い、倉庫暮らしにも満足している。建築家としての審美眼と技量を持ちながらも、工事現場の作業員生活を送らざるを得ないラースローは、ある日再起のチャンスを掴む。アメリカ人の実業家ハリソン・ベン・ビューラン(ガイ・ピアース)の目に留まったことがきっかけだ。成金のハリソンはワイン収集に飽きて建築に目を向けると、母親を称える文化センターを建てると言い、ラースローを雇う。するとラースローは情熱が蘇るのを感じる。彼は今やハリソンを、いや、自分自信を満足させる美しい建築物を建てさえすればいい。だが、それは簡単ではなかった。「何の期待もなかった」というラースローのつぶやきのように、『ブルータリスト』は最初からアメリカンドリームを楽観する映画ではないからだ。物事が進むにつれ、ラースローは神経を尖らせていく。麻薬に再び手を出し、妻のエルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)ともうまくいかない。そして金さえあれば何でもできるかの如く搾取し、ぞんざいに扱うハリソンとも衝突する。
『ブルータリスト』はコンクリートを使った、荒々しくワイルドな当時の建築様式の「ブルータリズム」に由来したタイトルだ。第二次世界大戦後に流行したこの様式のように、荒々しく頑固な主人公は、ヨーロッパ内のナチズムとアメリカの人種差別にも粘り強く生き延び、自分だけの芸術作品を世に残そうとする。ラースローが信じるのは、時間に耐え生き残る芸術、特に建築だからだ。215分に及ぶ長い上映時間の間、とても細かに丁寧に描かれた人生を覗いてみると、ラースローが生身の存在のように身近に感じられる。しかし、実在の人物を映画化したわけではなく、この作品のために創り出されたキャラクターだということに驚く。被写体に密着するカメラと重厚で現代的な音楽の力は大きいのだろうが、俳優エイドリアン・ブロディが深みと重みを加えているからこそ、スクリーンの中の芸術家が鮮明に迫ってくる。ブロディはアカデミー主演男優勝の最年少受賞者というタイトルをすでに持っている俳優だ。『ブルータリスト』での演技で彼のオスカー像のトロフィーがもう一つ加わりそうだ。ブロディの気難しくも繊細な演技で誕生したラースロー、彼の旅路が終わって劇場に照明が点くと、映画は観客に簡単に答えられない問いを残す。人生は苦しくても、芸術は美しくあれるのか。それでも良いのか。もしかしたら困難な状況で芸術のような永遠性を夢見ることこそ、人間の本質に近いのではないだろうか。この映画、さまざまな意味で観客を長いこと掴んで放さない。

ケンドリック・ラマーのスーパーボウルLIXハーフタイムショー
キム・ドホン(ポピュラー音楽評論家):アメリカの国技アメリカンフットボールの最強チームを決めるスーパーボウル決勝戦。2月9日に開催された第59回スーパーボウルにはハーフタイムが許されなかった。プレイステーションのコントローラーの形の四角形のステージを眺めながら、アンクル・サム(アメリカを擬人化したキャラクター)に扮したサミュエル・L・ジャクソンが叫ぶ。「これはグレートアメリカのゲームだ!」 1) 国家の叱責に合わせて登場した主人公はケンドリック・ラマーだ。昨年文化界を騒がせたラップゲームの優勝者、ディス・ソングでビルボードチャートとグラミー賞を征服したラッパーだ。ビュイックGNXの上に乗って登場したケンドリックは、詩人でミュージシャンのギル・スコット・ヘロンの言葉を引用して、革命はテレビに出ない、良い場所にとんでもない人を選んだと宣言する。「とてもうるさくて、無謀で、ゲットーみたいだ」。2) アンクル・サムの皮肉に、ケンドリックはアメリカの国旗を象徴する青、白、赤の衣装を着たダンサーたちとともにアルバム『DAMN.』のヒット曲「HUMBLE.」と「DNA.」で応じる。アメリカの反応は渋い。6分を超えるディス・ソング「euphoria」では、「卑怯にも故郷の友だちを連れてきた」 3) と眉をひそめる。ケンドリックがシザー(SZA)とともに披露した最も典型的な祝賀公演のステージでようやく大いに感動する。「台無しにするな!」。4)
誰がゲームを台無しにするものか。絶え間ない開拓で切り開いたアメリカで、相手の領土を奪わなければならないアメリカンフットボールの決勝戦で、ケンドリックは自分のラップゲームを後に引けないスポーツゲームに投影する。「彼らはゲームを操作しようとした。だが影響力をごまかすことはできない」。5) 血の沸くようなスポーツの本領に忠実なラップの剣闘士は悠々とステップを踏みながら「Not Like Us」を歌い始める。音楽の領域を超え、国家主義と民族主義の排他性で重武装した前代未聞のヒットディス・ソングだ。YouTube最多30万「いいね」を獲得したコメントのように、「今まで見たことのない最長期間の葬式」 6) に終止符を打つ瞬間だ。アンクル・サムの表情が歪む。ケンドリックはアメリカが望まないルールで、アメリカ人が最も愛するゲームで、最もアメリカ的なゲームのエンディングを披露する。適者生存の渦に巻き込まれた世界は、ケンドリックのゲームに史上最高テレビ視聴者1億3,350万回で応えた。
1)It’s the great American game!
2)Too loud. Too reckless. Too... ghetto.
3)"I see you brought your homeboys with you,” “The old culture cheat code. Scorekeeper, deduct one life."
4) Don't mess this up!
5) Yeah, they tried to rig the game, but you can’t fake influence.
6) Considering the beef with Drake started in March 2024, this is the longest funeral I’ve ever seen.
- 『最強! 野球団』が見せたロマン2025.02.14
- 『トラウマコード』、ともに守る命について2025.02.07
- 「BYOB」、ENHYPEN JAKEの初の単独バラエティ出演2025.01.24