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ファン・ソノプ(ポピュラー音楽評論家)
写真Instagram @koresawa519

「すべての元カレに捧げます。聞いてください。『シンガーソングライター』/…(中略)そんなあたしはシンガーソングライター/君にフラれたくらいで生きる意味なくしたりしないよ/全部ネタにするから」
- 「SSW」より

メジャーデビュー作『コレカラー』(2017)の収録曲「SSW」の歌詞ほど、コレサワというアーティストを説明するのに適した資料はないと思う。失恋の経験をすべて作品にするという覚悟。それは「ネタ」の次元を超えて、歌と人生がリンクして生まれる、クリアな響きが自分の武器であることを告げる宣言文のように感じられた。そのように「リアリティ」を中心にしたポップロックサウンドで常に大衆と交流してきた彼女は、昨年1年、SNSを中心に大きな反響を呼んだ「元彼女のみなさまへ」(2024)のヒットにより、再び跳躍する準備が整った状態だ。

子どもの頃、彼女にとって歌手という職業は、漠然とではあるが当たり前のことのように抱いていた夢だった。2〜3歳の頃からピアノを習い、人前で歌って褒められた記憶が、自然と音楽への愛情につながったからだ。シンガーソングライターになりたいと思った決定的なきっかけは、aikoの名バラード「カブトムシ」(1999)を歌って拍手を浴びたことだったという。そのためか、彼女の作品の中枢を成す「細かな生活感」は、かなりの部分が大先輩の系譜を受け継いでいるような印象を受ける。たばこという媒介を通して、去って行った人への恋しさと恨みを盛り込んだ「たばこ」(2017)の歌詞を見ると、その痕跡がより鮮明に残っているのが発見できる。

「君が置いていったタバコ/僕の大嫌いなものなのに/どうして火をつけてしまった/君の匂いがしたのさ/君の匂い」

- 「たばこ」より

その後多くのアコースティックギター・キッズを生んだyuiの登場も、夢を具体化するのに大きな影響を与えた。そうして中学3年生の時、父親がプレゼントしてくれたアコースティックギターを抱えて、本格的に音楽活動を始めた。高校生になると軽音部に入り、yuiをはじめ既存のアーティストのカバー曲を中心に、趣味のように軽くウォーミングアップを始めた。それでもまだ作詞、作曲までは考えていなかったその時、彼女の目を覚まさせたのは、10代だからこそ抱ける若々しい嫉妬心と競争心だった。

同じ部活で活動していた友人が曲を作ってくると、先を越されたような気になった彼女は、このままではいけないと思い、一刻も早く行動してその焦りを乗り越えようと決意する。そうした中、目に留まったのがオリジナル曲コンテストのチラシだった。驚くのは、初挑戦ですぐに全国大会に進出し、自身の可能性を証明したことだ。喜びも束の間、ライブ経験が皆無だった彼女は、全国大会でまともに実力を発揮することができず、それをきっかけにもっと真剣に夢に向かわなければならないという決意に至った。

彼女は高校卒業と同時に大阪から東京に上京し、音楽活動を広げていった。翌年には音楽フェスティバル「サマー・ソニック」の新人発掘コーナー「出れんの!?サマソニ」で、多くの人の前で自分のステージを披露しており、事実上のデビュー作と言える自主制作版「憂鬱も愛して」(2014)や初の全国流通アルバムである1st EP『君のバンド』(2015)まで、一段ずつ着実にステップを踏んでいくことになる。そうした中、一気に数段飛躍するできごとに遭遇するのだが、それがまさに先に述べた「たばこ」のヒットだ。自分の恋愛経験をもとに書き下ろしたこの曲は、皆が共感を抱けるように描かれた別れの感情とその情緒を最大限に表現するミュージックビデオが相まって話題を呼んだ。現在までYouTube再生回数約6,800万回を記録しているほど、彼女の代表曲と言っても過言ではない。そうして最後の自己証明を終え、『コレカラー』でメジャーデビューを果たすことになる。

ここでもう一つ外せないのがビジュアルについての話だ。メディアに出る時、彼女はくまモンとコントロールベアをモチーフにしたキャラクター「れ子ちゃん」を、自身の顔として掲げている。インディーズ活動当時イラストレーターのウチボリシンペと意気投合して作られた、アーティストとしてのアイデンティティを表現するペルソナというわけだ。ただれ子ちゃんを掲げるのは、メディアを通して自分を見せる時だけだ。公演の時は顔を公開し、観客と向き合っている。それは、コレサワが大衆にどんな方法でアプローチするかについて、疎かにせず考えていることを示している部分だ。他者の手を経る時は少しでも歪曲が生じるかもしれないため、固定された印象を持つ仮面で、そして公演の時はありのままの自分を見せられるため、特に加工のない本来の姿で活動するという戦略ではないかと慎重に予測してみる。

コレサワの曲は「歌詞中心」の作品だ。彼女は「女性たちが表に出せない気持ちを明るく歌うこと」を核心のコンセプトに据えていると語っている。誰もが一度くらいは経験したことがあるだろうが、普段はあまり表現できずにいる感情を、自分の経験に基づきストレートに表現する。例えば別れと言っても、ただ「別れた」、「終わった」では片付けられない複雑な気持ちを、もう一度掘り下げて易しい言葉で解きほぐす、という表現が適切だろう。繊細でありながらもしっかりとした力強いボーカルスタイルは、そんな日常性に特化されている。まるで古い郵便受けに差し込まれていた手紙のようにだ。

さらに、強い「自己肯定感」もコレサワの音楽の核心だ。どんな傷や痛み、試練も結局自分がさらに成長するための過程であり、それが過ぎ去った後にはもっと幸せになるだろうという信念が、彼女の曲のそこここに染み渡っている。メジャーデビューアルバム『コレカラー』の収録曲「SSW」の「君にフラれたくらいで生きる意味なくしたりしないよ」という部分や、SNSで大いに人気を集めた「元彼女のみなさまへ」で、何度かの出会いと別れを経験したからこそ今の理想的な恋人に出会えたと表現している部分は、そのようなポジティブなマインドをよく表している。

興味深いことに、そのような「自己愛」と「肯定」は、最近のZ世代を中心としたトレンドとも通じている。HoneyWorksの「可愛くてごめん」(2022)から始まったこの傾向は、FRUITS ZIPPERやCUTIE STREETのような人気グループが共通して追求する方向でもある。ある意味コレサワは、そんな時代感覚をいち早く捉えていたわけだ。超ときめき♡宣伝部に提供した「最上級にかわいいの!」がTikTokで大ヒットしたのも、決して偶然ではないだろう。「君に振られて、むしろ今が一番可愛い」というメッセージは、そのような「自己愛」の神髄を表しており、それは彼女が自分の音楽的世界観を通してずっと表現してきたことでもある。

最近公開した4枚目のフルアルバム『あたしを選んだ君とあたしを選ばなかった君へ』(2025)は、これまでの性格を維持すると同時に、言語により多様な視点でアプローチしようとしている。大阪弁を使って親しみやすさと躍動感を活かした「浮気したらあかんで」、猫の鳴き声を歌詞に絶妙に溶け込ませ、聴くおもしろさを活かした「にゃんにゃんにゃん」、ラップを書くようにライムを構成し、リズム感を強調した「♡人生♡」、結婚後のささやかな日常の幸せを絵を描くように生き生きと描写した「お嫁さんになるの」などの曲が、その試みを象徴する代表的なトラックだ。さらに丁寧に歌詞を吟味してみると、そのようなキラキラとした感情が、実はあまりにも近くに存在しているということに改めて気づく。考えてみれば、あまりに当たり前なことのため、疎かにしてしまいがちな人生の要素だ。そのようなことを見逃さず、きれいにラッピングして手渡すプレゼント、それがまさにこの新譜が目指そうとした本質ではないかと思う。

今年9月、コレサワにはデビュー当初から夢見てきた特別なステージが待っている。日本のミュージシャンの聖地と呼ばれる武道館公演だ。そんなに立ちたかったステージにもかかわらず、彼女はまだ喜びより不安の方が大きいと話す。これまで音楽を媒介にファンとかなり近い距離で互いの傷を慰め、癒やしの共同体を形成してきた彼女。さらに規模が大きくなっていく会場を眺めながら、それでも今の関係性を維持しようとする彼女の苦悩は、今コレサワとしての活動が新たなチャプターに入ったことを実感させる。

コレサワの音楽にはJ-POPの大衆性とインディーミュージックの真摯さが絶妙に共存している。明るく軽快なメロディは大衆的な親しみやすさを確保しつつ、歌詞や音楽的ディテールではインディーシーンの実験性と率直さを維持している。そんなバランス感覚は、最近の日本の音楽界で次第により重要視されている「大衆性と芸術性の調和」を見せる代表的な例と言えるだろう。そのように普遍的な言語で、旋律で、特別な感受性を醸し出す彼女の存在感は、「自己愛」の時代と相まって、より急速に大衆音楽シーンに根づいている。普通の日々の中の細かな感性を捉え、聴く人に日常について気づかせる「生活密着型ポップス」の活躍は、これからが本番だ。

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