
『チェ・ミンホ MINHO』(YouTube)
イェ・シヨン:「SHINee、歌手、俳優、YouTuberのMINHOです」。ところが、こんなに多様なタイトルに加え、SHINeeのMINHOにはもう1つの抱負がある。「目標はポディウム」。そして彼は、本名「チェ・ミンホ」を掲げて走り、泳ぎ、汗を流す日常を見せている。10数年前、MBC『アイドルスター陸上選手権大会』とKBS『出発! ドリームチーム2』の看板スターとして大衆に「運動神経のいいアイドル」と印象づけた「ベテラン」らしく、彼の取り組んでいる種目はHYROXやランニングクルーなど多岐にわたる。<SMTOWN LIVE 2025 in LONDON>の出演者の多数が参加した「SMロンドンラン」で、MINHOはクルーリーダー兼コーチを買って出た。「KUNさんとXIAOJUNさん、走るの上手いね」と褒めながら新しく合流したクルーの士気を高め、「逃がさないよ。引っかかったね、SIONさん」と後輩に目を付ける場面で笑いを誘った。しかし、競争が美徳と思われがちの運動でMINHOが見出すものは、物理的な距離やペースの記録更新ではなく、共にすることの価値だ。体調不良のためNCTのJOHNNYとその他クルー間の距離が広がると、MINHOは彼を気遣って一緒に歩いていくことを提案する。それを聞いて「5km失敗!」と笑いながら話すJOHNNYに対し、「いやいや、失敗だなんて! 歩いてでも最後まで行けば成功だよ」と返したMINHOの言葉からは、なぜ彼のニックネームが「チェ・ダジョン(韓国語で優しいという意味)」なのか実感できる。
誰かのペースに合わせ、引っ張ってくれるMINHOも、時には周りの応援と励ましからエネルギーをチャージする。クロスフィットとランニングを組み合わせた室内フィットネス大会「HYROX」にシェフのオースティン・カンと2人1組で参加したとき、2人は疲れていてもお互いの背中をポンとたたいたり、親指を立てたり、くたびれた相手の分の運動を代わったりするなど、強い仲間意識を見せる。さらに、何よりも彼にとって強力なエネルギー源になる存在は、まさにファンの応援だった。大会の間ずっと真剣な顔で臨んでいたMINHOは、応援の声が聞こえると、満面の笑みでローイングマシンをより情熱的に引っ張り、その後「応援してもらえて、力が湧いてきた」という感想を述べた。応援の力はステージの上でも間違いなく効力を発揮するもので、大勢のSHINee WORLDからの応援が聞こえる単独コンサートは、彼にとって「プレーオフ第7戦」という彼の表現どおり、情熱がマックスに達する運動プログラムに生まれ変わる。3日間ずっと公演会場の花道を全力で走り、「みんなに運動してもらえる区間」と説明した「SAVIOR」のステージでは、一人ひとり目を合わせる。これについてMINHOは、「僕はコンサートも運動だと思います」と比喩したが、いざ彼はコンサートで、どんな高強度運動をする時よりも明るい表情をしているように見えた。そうしてYouTubeチャンネル『チェ・ミンホ MINHO』は、視聴者に「運動意欲への刺激」を与えることを超えて「共に」走り、「共に」応援し、「共に」成長する「人間チェ・ミンホ」の人生で埋まっていく。

『Extraordinary』 - LIM Hyunjung
キム・ドホン(ポピュラー音楽評論家):鮮明な音楽の感動がある。15秒以内の短尺動画と2分以内のすぐ終わる楽曲が業界標準として定着した昨今の音楽市場においても、プロデューサーとオーディオエンジニアの担う役割はかなり大きい。高い解像度とスムーズな動きの高画質映像に慣れた目が前に戻ることを拒むように、耳もより良い音を絶えず渇望する。最近では韓国の音楽においても、セルバン・ゲニア、クリス・ゲーリンジャーといった世界的なマスタリングエンジニアの名前をクレジットで確認できる。だが、良い音と良い音楽はちがう。体系的なシステムと公式から始まり、創作者と技術者の呼吸がぴったり合ったとき、ようやく目と耳と心が開かれる。
シンガーソングライターLIM Hyunjungの6thアルバム『Extraordinary』がそんな作品だ。2006年から19年という長い間、良い音に関する学びと気づき、さらには良い音楽を作りたいという深い悩みの末に日の目を見た作品だ。1994年、Lee Juckと共にバンドを組んで音楽界に入った瞬間から自ら作詞、作曲、プロデューシングをこなし、シン・ユンチョル、パン・ジュンソク、キム・ミンギといった音楽家たちと共に持続的に音の美学を探求してきたLIM Hyunjungが、長い間頭の中に描いていた音楽的理想を実現するためにロンドンに渡り、ついに結んだ実だ。
統括プロデューサーのジェフ・フォスターと編曲者のマット・ダンクリー、ロンドン交響楽団との協演は、ライブアルバムを連想させるリアルな臨場感と繊細な演奏の楽しみを込めた。漠然とした挑戦を現実にしていく苦難と挑戦、達成の喜びが愛というテーマのもと、深みの増した声に乗って流れる。制作過程は難しいものだったとしても、パワー・ポップとワグネリアン・ロック、ロック・オペラを思わせる楽曲は、「First Love」、「Love like a soft spring rain, farewell like a cold winter rain」といった過去のヒット曲を記憶する歌謡ファンと機器交換の喜びを追求するオーディオファイルの心にそのまま伝わる。
ニール・ドーフスマンを起用したLEE SEUNGCHULの『The Secret of Color』とデヴィッド・キャンベルにプロデューシングと編曲を依頼したLEE SEUNG HWANの『Human』の系譜を継ぐ『Extraordinary』は、良い音、そして良い音楽の必要を改めて思い知らせる。明澄な響き!
『タクシードライバーとの宇宙談義』 - チャールズ・S・コケル
キム・ボクスン(作家):あなたはどうかわからないが、私の場合は、タクシーでドライバーの方から先に話しかけられると、たいてい彼の仕事に関する話になりがちだ。主に交通状況や天気、そしてそれらが道路に与える影響といった話に(ドバイがソウルよりどれだけ暑いかを長々と説明してくださった方は例外だったが)。しかし、今日紹介する本『タクシードライバーとの宇宙談義』では、著者であり、科学者、そして教授のチャールズ・S・コケルが後部座席から「私たちの仕事」について話しかけてくる。
コケルは宇宙生物学者だ。普通の生物学者とはちがい、彼は「宇宙の余白」に存在する生命体を研究する。そして、まだそのような生命体が実際に発見されていないため、自ずと多少哲学的な方向に思考が拡張された模様だ。この本の各章は、タクシードライバーとの宇宙に関する会話から始まり、その後新しいテーマに関する深い探求につながる。なぜ私たちは宇宙を探査するのか。私たちが会えるかもしれないその存在は、どんな姿をしているのだろうか。火星のような惑星に移住することになるのだろうか。彼は夢想家のような態度で話を進めていくが、同時に科学者としての極めて現実的な視線も失わない。地球温暖化を解決できなければ、地球が燃える金星のような運命を迎えるかもしれないと警告し、自身も宇宙に行きたいものだが、世代をまたいで長期宇宙任務を果たす宇宙船は結局「浮遊する監獄」になりうると話す。
コケルの話は情報に満ちていながらもSFスリラーのようでもあり、時には「他の惑星にもタクシーがあるんでしょうか」と聞くドライバーとの突拍子もない会話から笑いを誘う。世界のいろんなドライバーとの会話を通じて短くも深い講義を愉快に展開させる彼は、れっきとした教育者としての一面を覗かせる。だからシートベルトを締め、この世界の向こうを目指すちょっとした読書旅行に一緒に出かけてみよう。
- 『ジュラシック・ワールド』が戻ってきた2025.07.11
- 『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』、弱点が私をもっと強くする2025.07.04
- 『F1アカデミー: 新たなる風となる者に』、夢を追う女性たちの最も熱い疾走2025.06.27