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オ・ミンジ, ペ・ドンミ(映画専門誌『シネ21』記者), ペク・ソルヒ(作家、コラムニスト)
デザインMHTL
写真RIIZE X

『SHOTAROのデザート🍨』
オ・ミンジ:SHOTARO、デザート、子ども、そして犬。『SHOTAROのデザート』は、ある夏の日の「穏やかな言葉」が集まってできている。刺激とスピードの時代にもかかわらず、この番組は逆の方向に流れていく。1話につき、たった1つのデザートとその日の暮らしだけを収め、華やかな編集も字幕もない。画面に映るのは、料理のときの小さな物音と、SHOTAROと妹分のゴウンがやり取りする素朴な会話だけ。刺激的な音楽と効果音の代わりに流れるのは、静かな生活音と子どもの笑い声。ボタンひとつで何でも解決できる世界で、手間と時間がかかるお菓子作りのプロセス。マルチタスクが当たり前になった時代に、たったひとつのレシピに集中する態度。20分あまりの短い時間で『SHOTAROのデザート』が見せるのは、私たちが慣れ親しんだものとは対極にある。SHOTAROはゴウンと一緒に食べるデザートを作るために、果物を下ごしらえし、ミキサーに材料を入れ、ゼラチンを氷水に浸して取り出し、材料を一つずつ鍋に入れ、生地を焼き、層を重る。そうして少しずつ、手間を掛けて完成したデザートを仲良く食べた後、2人は花火で互いの名前を書いたり、相手に似合うヘアピンを選んでつけてあげたりしながら、一日を締めくくる。

とある夏の日、SHOTAROとゴウンが一緒にデザートを作って食べる。安心できる家の中でふざけ合いながら味わう桃とメロンのパフェ、眠れぬ夏の夜の熱気を冷ましてくれるホワイトトマトのかき氷、長旅から帰ってきた家で旅の緊張をほぐしてくれる抹茶ケーキに、大型連休を迎えぐっすり寝て起きてから食べるりんごのミルフィーユまで。『SHOTAROのデザート』に収められた、ひんやり甘くて美しい夏の味だ。

『シンプル・アクシデント』
ペ・ドンミ(映画専門誌『シネ21』記者):トラウマは、音や匂い、触感でよみがえる。整備工のヴァヒドは夜遅く、修理工場を訪れた義足の男の足音を聞いて、その男が刑務所で自分を拷問した情報員「片足のエクバル」であると直感する。ヴァヒドはかつて労働運動に身を投じ、イランの体制を揺るがしたとして体制の宣伝、扇動および共謀の容疑で収監されていた。そこで筆舌に尽くしがたい屈辱を味わい、愛する恋人まで失った。人生を滅茶苦茶にされたヴァヒドは、引きずるような足音を聞いただけで復讐心に呑み込まれる。男を拉致して人目のない場所に埋めてしまおうと瞬く間に決心してしまうほど。しかしヴァヒドが狙うこの男は、本当にエクバルなのだろうか。拉致された男は、自分の名はラシードで、最近事故で脚を怪我した、人違いだと叫ぶ。正確な復讐を望み、無実の命を奪いたくはないヴァヒドは、自分と同じ被害者のもとを訪ね、この男がエクバルに間違いないか確認してほしいと頼む。そうして出会った写真家シバは汗の匂いだけでエクバルの存在を感じ取り、別の被害者ハミディは義足の触感と健常な脚に残る傷跡を手で確かめ、確信に満ちて今すぐ殺すべきだと掴みかかる。しかし彼らは皆、刑務所で目隠しをされた状態で拷問を受けていたため、エクバルの顔をはっきりと知らない。なかなか決断できない間に、彼らは「暴力に暴力で報いてよいのか」と考えはじめる。

『シンプル・アクシデント』は、イラン社会を鋭い視線で捉えてきた巨匠ジャファル・パナヒ監督の新作だ。映画の登場人物たちさながらの波乱万丈な人生を経験してきたパナヒ監督は、2010年に反政府デモを支援し、体制に反対するプロパガンダを行ったとして逮捕され、懲役6年を言い渡された。スティーヴン・スピルバーグをはじめとする映画人たち、バラク・オバマといった政治家たちがイラン当局に彼の釈放を請願し、条件付き釈放処分を取りつけたものの、20年間の映画製作禁止、脚本執筆禁止、メディア取材禁止、イラン出国禁止が宣告された。それでも彼は、映画を作り続けている。『シンプル・アクシデント』も当局の許可を受けずに秘密裏に完成させ、今年のカンヌ国際映画祭で公開されてパルムドールを受賞した。イランの国家はパナヒ監督の創作活動を封じようとするが、逆説的にも世界は彼を通じてイラン社会を見る。ジャファル・パナヒ監督は、いついかなる時もイランの現在をテーマとするシネアスト(Cinéaste、映画人)であり、観客は彼の作品という窓から今のイランの風景を眺める。トラウマが不意に押し寄せて身震いしてしまう瞬間、それでも人としての営みを続けていこうと心に決めるまさにその瞬間、彼の手によってさりげなく編まれた今日的なユーモアがこぼれると、イランの空気が魔法のように私たちを包み込む。

『匿名メッセージは誰なのか: 高校ネットいじめスキャンダル』(Netflix)
※『匿名メッセージは誰なのか: 高校ネットいじめスキャンダル』のネタバレが含まれています。
ペク・ソルヒ(作家、コラムニスト):「この映像に登場するメッセージの文面は、すべて実際のものです」。ミシガン州のビールシティ。高校生カップルのオーウェンとローリンに、2020年の10月から毎日40~50件の罵倒やガスライティング、セクハラじみたメッセージが送られてくる。小さな町は瞬く間に疑念に包まれ、FBIの介入により、衝撃的な犯人の正体が明らかになる。Netflixドキュメンタリー『匿名メッセージは誰なのか: 高校ネットいじめスキャンダル』は、この事件の全貌と犯人にまつわる知られざる物語、そして被害者たちの現在を描いている。

監督スカイ・ボーグマンは、『白昼の誘拐劇』で注目を集めた後、閉ざされた空間における歪んだ家族関係とグルーミングに注目してきた。本作でもローリンの母ケンドラが犯人であることが明らかになり、彼女が娘に行ってきた支配とグルーミングが浮かび上がってくる。

事件の当事者本人を登場させるボーグマンの演出は、加害者の弁明を「ありのまま」に見せる。平凡な表情で自身を合理化する加害者の姿には身の毛がよだつが、それゆえカメラの前で淡々と証言する被害者の勇気がより鮮明に浮かび上がる。

ある者は被害者ローリンに苛立ちを表現し、またある者は加害者に物語を与えていると批判する。だが、ローリンは現にケンドラのもとで13年を過ごし、その間ケンドラは、家族全体を嘘で支配してきた。最後に「私たちは健全な関係を築けます。十分に親密です」と語るケンドラの顔の上に、彼女がローリンへ送っていた悪意のメッセージを重ねて見せる演出を思い起こしてほしい。コンテンツを見ながら、カメラのレンズが向けられているのは誰か、カメラの背後に隠れた者が本当に伝えようとしているメッセージは何なのかについて、時には深く考えてみる必要がある。

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