
『アイドルアイ』(Genie TV・ENA)
チェ・ミンソ(客員エディター):連戦連勝の弁護士であり、アイドルオタクでもある「メン・セナ」(チェ・スヨン)のオタクとしての活動方針は明確だ。「ファンは遠くから応援するもの」。自らの正体が大好きな「ド・ライク」(キム・ジェヨン)にとって害になるかもしれないと考えるセナは、サイン会では深く帽子をかぶり、コンサート会場では人知れず転売屋を捕まえるという、密やかで模範的なファン生活を送ってきた。ところが、セナが守ってきたその一線は、思いもよらぬ形で破られることになる。ポリスラインの前にライクが立っている。ステージの上で輝く歌手ではなく、同僚の弁護士たちでさえ手を引いた厄介な殺人事件の容疑者として、そしてセナの新たな依頼人として。
「まったく、あの子たちは夢にも思わないだろうな」。ライクのファンたちを見ながらスタッフが言う。「あいつが、本物のトライ(イカれた奴)だってことを」。接見室で会ったライクの歯に衣着せぬ言動により、セナは「ド・ライク」ならぬ「トライク(イカれたライク)」というあだ名に納得する。我が子のことを金づるとしか思っていない母親、血も涙もない所属事務所の代表、心が離れてしまったメンバーたち、そしてファンの仮面をかぶったストーカー。ライクの周りは敵ばかりだ。しかし、ライクの無実を一切疑わない弁護士セナだけは、ライクの味方であり続ける。彼が広告モデルをしている商品しか使わず、彼の好みを不自然なほどよく知っている「メン弁護士」の姿にライクは戸惑いを覚えつつも、とりあえず彼女を信じることにする。二人は、ライクにかけられた殺人の濡れ衣を晴らすために力を合わせ、次第に距離を縮めていく。
「たった一度だって、自分が自分じゃなかったことなんてない」。ライクの歌は、どこか嘘めいても聞こえる。ライクは自分自身を商品だと考え、人々に見せる姿は本当の自分ではないと言う。だが、セナにとってライクは商品などではなく、つらい瞬間に自分を慰めてくれたかけがえのない存在だ。だからセナは、ライクがどんな姿であっても彼を守ろうと決める。「心から、大好きな歌手の幸せを願うこと」こそが、ファンの役割なのだから。

『あなたが映画をやめてはいけない30の理由』
ペ・ドンミ(映画専門誌『シネ21』記者):向かい合って座る女性が、意を決したように口を開く。「あのさ、私、映画やめようと思って。やっぱ、やめたほうがいいような気がするんだ」。それは悩み抜いた末に出した結論のように見える。しかし、それを聞いた男は問い返す。「30回考えたか? 映画の現場で血を吐いたことある? 撮影中に盲腸が破裂したことは? 映画撮ってたら信用不良になって、債権者が家に押しかけてきて大騒ぎになったことは? 短編映画祭で上映された自分の映画が、あまりにお粗末な出来で袋叩きにされたことは?」当然「ない」と答えるしかない極端な問いが、男の口から機関銃のように飛び出す。笑えて、妙に勇気づけられる問いの末、男はこう言う。「一つだけ教えてくれ。本気で歯を食いしばって、自分自身を信じたことはある?」映画を演出した経験はないが、ある韓国人監督のエッセイを読むと、投資会社から演出部の若手に至るまで、皆が皆、監督に「諦めろ」と言ってくるのだという。この監督は、映画を手放すな、勇敢さを失うなと応援されているのだ。
笑いがこみ上げつつも、不思議と応援したくなるこの短編映画は、チョン・ガヨン監督の『あなたが映画をやめてはいけない30の理由』だ。この作品を含む30本の短編映画が、同名のオムニバス映画としてまとめられ、1月14日に韓国で劇場公開された。「30回考えた?」というセリフが登場し、短編映画の本数がちょうど30本なのは、これが韓国芸術総合学校映像院の30周年を記念して制作されたオムニバス映画だからだ。実践中心のカリキュラムで芸術家を育成することを目的に設立されたこの芸術学校は、脚本家のチョン・ソギョン、ナ・ホンジン監督、チャン・ジェヒョン監督、プロデューサーのキム・ヒウォンらを輩出し、いまも多くの若き芸術家たちが未来に向けた準備の日々を送っている。今回の30周年記念プロジェクトには、チョン・ガヨン監督をはじめ、『ソンジェ背負って走れ』を手がけたプロデューサーのキム・テヨプ、『世界の主人(ジュイン)』のユン・ガウン監督、『告白ヒストリー』のナムグン・ソン監督らが参加し、きらめくような瞬間を生み出した。長編で彼らの作品に触れてきた観客であれば、本作にも期待してよいだろう。
Fred Again.. : Apple Music Live
ソ・ソンドク(ポピュラー音楽評論家):デジタルやストリーミングの全盛期に、果たして「アルバム」とは何であるかを問い直す事例をいくつか見てみよう。まずは2013年、ジャスティン・ビーバーは「Music Mondays」と銘打ち、毎週月曜日に新曲をリリースした。10週にわたってリリースされた楽曲は、後にアルバム『Journals』の核となった。2016年には、カニエ・ウェストがアルバム『The Life Of Pablo』を配信リリースした後、数か月にわたってミキシングや歌詞を変更し、トラック構成まで入れ替えた。それはまるで、ソフトウェアをアップデートするかのようだった。彼はこのアルバムを「生きて、呼吸し、変化しつづけるクリエイティブな表現(living breathing changing creative expression)」と呼んだ。
イギリス出身のプロデューサーでありDJのフレッド・アゲイン(Fred again..)は、こうした試みを一歩先に進めた。彼は2022年以降現在まで、「終わりのないアルバム(infinite album)」として知られる『USB』プロジェクトを進行中だ。フレッド・アゲインの連作フルアルバム『Actual Life』がナラティブ構造を持つ鑑賞用作品だとすれば、『USB』はさしずめ、クラブフロアやフェスティバルのステージのためのツールボックスであり「共有フォルダ」だ。かつてDJが重いレコードバッグを持ち歩いていたのとは違い、現在のDJたちはUSBポートに挿すメモリースティック1本に数千もの曲を収めている。フレッド・アゲインは、いつでも『USB』に新たな曲を追加し、削除することができる。そして彼は、それをファンと共有する。
フレッド・アゲインは2025年10月、『USB』をアップデートする「10-10-10」イベントをスタートさせた。10週にわたり、10曲の新曲を、10都市でのコンサートで初披露したのだ。公演都市は、開催のわずか1週間前に発表された。スコットランドのグラスゴーから始まったこの公演は、ヨーロッパと北アメリカを巡り、メキシコシティで幕を下ろした。その間、ダンスミュージック・コミュニティは毎週、新曲と新たな開催地のニュースに熱狂した。フランスのリヨン公演とカナダのトロント公演はApple Musicで生配信され、ライブアルバムとしても配信された。全ての公演終了後にリリースされた12月12日バージョンの『USB002』は、全34トラックで構成されている。これを記念し、12月31日にはApple Musicが、アイルランド・ダブリン公演の映像をいつでも楽しめるように公開した。昨年秋、世界中のクラブミュージック・ファンが「もしかしたら自分の街でも目撃できるかも」と期待していた、まさにその公演である。
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