Credit
文. ユン・ヘイン
写真. BLACKPINK YouTube

JISOOは今世界的に最も大きな影響力を持つアーティストの一人だ。彼女は世界で最も有名なガールズグループBLACKPINKのメンバーで、Instagramのフォロワーは7,135万人、ディオールとカルティエのアンバサダーでもある。今全世界ですべての行動が注目されるアーティストであり、セレブリティの一人だという意味だ。だがJISOOにはそのように注目される立場とは相反する、穏やかで親しみやすい世界も存在する。JISOOは自分が好きなキャラクターやゲームを、流行とは関係なくずっと変わらず好きで楽しむという意外な信念を見せ、Vlogの中の日常で見せる率直さと穏やかさにより、親しみの持てる人だと感じさせる。また自らを「ウサギだけど影は虎」と説明するようにJISOOを知っていくうちに、彼女の中には生真面目ながらも芯の強い内面が宿っている。そんなJISOOをもっとさまざまに理解するための5つのキーワード。

​JISOOの影響力
JISOOは7,135万人(2023年4月11日現在)という圧倒的なInstagramのフォロワー、それに相応する「いいね」とコメントの数を基盤にしたセレブリティだ。去る2月、アジアの女性で初めて『VOGUE』FRANCEの表紙を飾った写真が公開された時は、アクセスが集中してウェブページがダウンした。ファッション・マガジン『WWD』は、去る3月パリ・ファッションウィークで最も高いMIV(Media Impact Value、メディア影響価値)を獲得したブランドはディオールで、そのうち23%はJISOOの影響力に起因すると直接指摘している。当時JISOOがアップしたInstagramの投稿の「いいね」の数は約836万(4月11日現在)、MIVは180万ドルだ。またディオールは、クリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)がJISOOから2021年秋冬コレクションのインスピレーションを得たと明かすほど、ディオールに愛される存在でもある。JISOOがBLACKPINK「BORN PINK」ツアーのパリ公演の中で披露したソロステージでは、ディオールが衣装を製作しており、今年1月ディオール・ビューティーでは、JISOOの誕生日を記念したカラーのリップ製品を発売した。カルティエのアンバサダーに選ばれた当時、ディオールとカルティエという大手ブランド2社がJISOOの獲得のために、一種の契約金競争を繰り広げたという噂まで記事になったほどだ。世界で最も有名なガールズグループのメンバーであり話題性を持つ、最高の「インフルエンサー」の一人だという意味だ。

JISOOのVlog

JISOOは、BLACKPINKのメンバーのうち最後に個人YouTubeチャンネル『幸福JISOO 103%』を開設した。彼女のチャンネルは、最初の映像「LONDON vlog」アップ後15分で登録者数10万人、約10時間で100万人を突破し、最初の映像の再生回数は1,317万を超えた。現在登録者は403万人に達する(4月11日現在)。今までアップされた『幸福JISOO 103%』の映像には、BLACKPINKがツアーを行ったこの冬のヨーロッパを背景に、公演直後の休憩時間の日常が収められている。今日はロンドン、明日はバルセロナ、そしてケルンと続く、息の切れるような忙しいアーティストの生活が繰り広げられる。ツアーのために国を移動する時専用機に乗り、人の多い観光地でSPと同行しなければならない有名人の生活もある。ただJISOOはそんな日常を、意図された演出やきれいにまとめられた編集なしに、一人称の視点でありのままを収める。だからこそ、時に初歩のブイロガーらしい不慣れなアングルや手ぶれが見える、拙く、親しみやすい瞬間がある。美しいヨーロッパのクリスマス風景もあるが、JISOOが毎回韓国料理店や火鍋の店ばかり訪れるため、食事だけではどの国にいるのか絶対にわからない場面も共存する。ベルリンのマーケットでJENNIEとイチゴのフルーツ飴を探すために歩き回ったり、フォトスポットで写真を撮ろうと並び、チケットが売り切れで美術館に入館できないまま帰る、いかにも観光客らしい姿も発見できる。そこに毎回静かに丁寧に説明を続けていくJISOOの優しさと明るいエネルギーは、穏やかだが視聴者を吸い寄せる独特な魅力になっている。JISOOは「見る人の幸福指数が上昇したら」と思い、チャンネル名を「幸福JISOO(指数)103%」とつけたと言う。彼女の願い通り、Vlogを鑑賞していると、ある瞬間知らず知らず微笑みを浮かべている自分を発見するだろう。

​JISOOのゲーム生活
JISOOにとってゲームはずいぶん前からの趣味だ。家にPCゲームを楽しむためのゲーム部屋があるほどだ。ゲームの特性からして忍耐力養成に近いモバイルゲーム『ベガーそだち』を3年間プレイしていたことを認め、その粘り強さが話題になったりもした。そこにJISOOの波及力が結びついて、『PUBGM BATTLEGROUNDS MOBILE』とのコラボを通して、K-POPアーティストでは初めてのインゲームコンサートを行い、『KartRider Rush+』とは自身に似たキャラクターとアイテムのデザイン、アフレコまで行った経験もある。その中でもJISOOは、2022年からアンバサダーを務めるゲーム『メイプルストーリー』を「『昔からの友だち』であり『大切な思い出』」と表現するほど、熱烈なファンとして知られている。特にキャラクターの外見を飾る「コーデ」に真剣で、ゲームの中で「いつもきれいにキャラクターを飾って、素敵な椅子に座って」自慢したり、コーデ・アイテムを誕生日プレゼントにもらうほどだ。しかしJISOOはコーデにばかり真剣なわけではなく、彼女の表現通り「外見だけでなく中まで完璧な人」になるためにスペックの強化も一生懸命する。すでに並外れたレベルであるにもかかわらず、自らギルドに入って練習するほど積極的で真面目なユーザーだという点は、現実のJISOOがゲームのやり方を反映しているようだ。流行っているゲームでもそうでなくても、本人がおもしろいと感じたものは、周りに振り回されることなく長い間プレイする。そのためJISOOがゲームについて話したりコラボを行う時は、好きなものを長い間しっかり噛みしめた人の本気さと楽しさがある。「勝つためのゲームよりは楽しむことが重要だ」と言うJISOOの言葉のように。
​JISOOの外柔内剛
「JISOOの穏やかさだけを見て、内面の力を過小評価する人もいるかもしれないが、本当に強い力を持った人だ」(『COSMOPOLITAN』KOREA)。ドキュメンタリー『BLACKPINK〜ライトアップ・ザ・スカイ〜』を演出したキャロライン・スー監督がJISOOを表現した言葉だ。彼女が話すように、いつも笑顔でいっぱいのJISOOは、強い内面を持った「外柔内剛」キャラとして知られている。ドキュメンタリーの中のJISOOは、2019年コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル当時、激しい腰痛を抱えた状態でステージに上がった。しかし「どうしたらステージで楽しく公演ができるかわかった。自分自身に集中しないで、この熱気を感じてこなきゃ」と自分のつらさを成長のための踏み台に昇華させる姿勢を見せる。JISOOが瞬間を楽しむということは、「過ぎたことを後悔したり繰り返し考えないこと」(『Marie Claire』Korea)であり、今すべきことに完全に集中することで、それはJISOOがインタビューで自らを「生まれつきの努力家」(『Marie Claire』Korea)と説明し、「諦めず、挫折せず、笑いながら一生懸命努力することが、私の最大の強み」(『Harper's BAZAAR』Korea)だと話す彼女の心構えと繋がる。自分の仕事に常に一生懸命で、その努力をありのままに肯定すること。それは自らを中心に置いた人だけが、自信を持って言える言葉でもある。ついには、「みんな自分の中で自分だけのロールモデルを作ったら良いと思います」(『ELLE』KOREA)というJISOOの言葉のように、真の自己肯定とは何なのかを他者に提示して出る。JISOOの外柔内剛は、地道に情熱を注ぎ、自分の内面をじっくり覗いた人だけが持つことのできる、最も美しく強靱な武器だ。
​JISOOの「FLOWER」
3月31日JISOOはソロアルバム『ME』を発売した。アルバム発売前から複数のバージョンのアルバム・ジャケットとコンセプト・ポスター、ビジュアル・フィルムが公開された。各コンセプトが持つ古典的だったり強烈な雰囲気、それをJISOOがこなす力は、それぞれに対する期待感を高め、大きな反響を得て、アルバムの成績に繋がった。タイトル曲「FLOWER」は発売直後、iTunes「トップソングチャート」ではアメリカを含む64か国で1位を獲得し、「Melonトップ100チャート」では最上位圏の2位まで、3月31日付けSpotify「デイリー・トップソング・グローバルチャート」6位、収録曲「All Eyes On Me」は16位に入った。発売初日フィジカルアルバムのセールス量は87万枚、一週間のセールス量である初動は117万枚以上で、K-POP女性ソロの中で最高記録を更新した。また、『ME』は4月15日付けのビルボード「グローバル200チャート」で2位を記録した。そして多くの人々が歌と同じくらい期待し注目したのは、JISOOが表現するビジュアルだろう。「FLOWER」のミュージック・ビデオは、まるで動く写真集を彷彿とさせるスケールを見せる。ホテルのような空間で、恋人から去った姿を「花の香りだけ残して去っていった」と表現するように、JISOOは自ら花になる。歌詞の中に「ライラック」が登場すると紫色のJISOOが、「白い花びら」が出てくるとそのまま真っ白なJISOOが登場する。大衆が「JISOO」と言えばすぐ思い浮かべる古典的なイメージのドレスから、強烈なレッドとブラックの組み合わせを見せるコンセプチュアルな衣装まで、予想内・外の衣装が併置される。衣装の多彩さに見合うように、目元の独特なアイラインから色鮮やかなスモーキー・メイク、そしてそれらすべてに合わせて繊細に作られたネイルアートなどが、画面が転換するたびにショーのように展開される。JISOOは相異なるコンセプトを異質感なくまとめてバランスを取り、そこに花と蝶を形象化したラインの動きとダンサーたちとの呼吸を際立たせる振り付け、重低音の魅力的な歌声で韓国語メインの歌詞を活かしたJISOOのボーカルが、見て聴く楽しみを加える。「自分を保ちながら、新しくて多様な姿を見せたかった」というJISOOの説明の通り、JISOOの「FLOWER」は、弱々しいだけの花ではなく、自身のように多彩なスペクトルを持った存在として生まれ変わる。「FLOWER」という歌とミュージック・ビデオ、そしてアルバムに注がれる関心と記録の行列まで。アルバムのタイトルがJISOO自身を意味する『ME』である理由だ。