
NoW
[NoW] バンクシーの自由、平和、正義
『THE ART OF BANKSY展』プレビュー
2021.07.30
世界中で話題を集めてきたグラフィティ・アーティスト、バンクシー(BANKSY)の足跡を体験できる展示『THE ART OF BANKSY』が、11か国のワールドツアーを終え、ソウルをはじめとしたアジアツアーに出るが、コロナの余波により開幕が延期され、期待していた人々をがっかりさせた。会場での鑑賞は予定より延びたが、展示に先立ち、彼の作品世界を紹介し、より意味のある展示鑑賞の準備の時間を持とうと思う。
イギリスで初期の活動を始めたバンクシーは、グラフィティ・アーティストであり、芸術映画監督として世界各地で身元を明かさず活動しているが、型破りな行動と現代社会に対するメッセージを込めた作品で、多くのファンを持つ芸術家だ。社会全般にわたる権力と権威に対する批判的な視点と、アナーキスト的な姿勢を見せており、2018年10月、自身の作品「風船と少女」がオークションで落札されるや、予め額の中に仕込んでおいたシュレッダーを作動させるパフォーマンスを行い、再び世界中の話題を集めた。彼はそのような行為を通して、値段で絵の価値を決めてしまう美術品オークションのシステムを警戒しようという姿勢を示した。しかし当時15億ウォンで落札された作品は、断裁された状態そのままで落札者が所有することになり、バンクシーの代理人を通して「愛はごみ箱の中に」というタイトルに変更された後に、より高い価値を持つことになる今の美術界の皮肉な現状を、世間に示してもいた。
このようにバンクシーのメッセージを込めたパフォーマンスは、予期せぬ場所でいきなり行われてきたのだが、都会のあちこちに作品を残すこと以外にも、紛争地域で反戦と平和のメッセージを込めたイメージのグラフィティを残したり、美術館に本人が制作した作品を無断で設置し、制度化された美術館権力に抵抗する姿勢を見せるなど、活動全般に制度批判的な姿勢と戦争など人間の行為の残酷さに対する告発が込められている。作品の制作過程は、永久に保存することが難しいため、バンクシーは個人のホームページに自身の作業過程が確認できる映像や資料を載せ、本人が原作者であることを明らかにしている。その制作方法により、ヴァンダリズムだという論争がつきもののバンクシーだが、彼のイメージに見られるパロディやパスティーシュ的な特性により、大衆の心により強烈に刻み込まれ、名声を博してきた。
火炎瓶の代わりに花を投げるデモ隊、路上で放尿する近衛兵、ロケットランチャーを構えたモナ・リザのように、現実において普遍的ではない、相反するイメージの組み合わせは、バンクシーが見ている現実と望んでいる価値を物語り、新たな意味を創り出す。現実を風刺するための彼の行動は、そこにとどまらず、テーマパーク形式のディズマランドのプロデュースで再び大きな話題となった。「陰鬱な(Dismal)」という名前がついた場所らしく、入場する時も、セキュリティスタッフの扮装をしている人たちと偽物のボディスキャナーの厳しい検査を受ける。入場すると、迎えるスタッフたちは、「私はバカだ」と書かれた黒い風船を持って憂鬱な歓迎の挨拶をして寄こし、廃墟と化したような城と歪んだ人魚姫の像は、最初から多くの人々を戸惑わせた。ひっくり返ったシンデレラのカボチャの馬車を露骨に撮影しているパパラッチ、回転木馬に座っている屠殺業者、水辺に漂う難民ボートなど、私たちが期待するテーマパークとは全く異なる、社会の暗い面にスポットを当てている。ディズマランドが人々によりショックを与えるポイントは、あえて目を向けてこなかった現実の暗鬱な姿に、ありのままに向き合わなければならないという事実であり、ここで生成される記憶は、再び新たな意味と行動を生み出す。
バンクシーがインタビューで、「私はこの民主主義の社会で、もはや誰もが信じていない自由、平和、正義のようなものを、匿名で語る程度の度胸は持っている」という言葉を残しているように、彼の行跡は、行動する芸術の集合体を見せてくれる。芸術のための芸術が尊重され、重要とされてきただけに、そのような多くの人たちのために、現実と結びついた芸術もまた持続され得るとすれば、芸術は私たちにとってより明るい時代を開いてくれるだろう。
イギリスで初期の活動を始めたバンクシーは、グラフィティ・アーティストであり、芸術映画監督として世界各地で身元を明かさず活動しているが、型破りな行動と現代社会に対するメッセージを込めた作品で、多くのファンを持つ芸術家だ。社会全般にわたる権力と権威に対する批判的な視点と、アナーキスト的な姿勢を見せており、2018年10月、自身の作品「風船と少女」がオークションで落札されるや、予め額の中に仕込んでおいたシュレッダーを作動させるパフォーマンスを行い、再び世界中の話題を集めた。彼はそのような行為を通して、値段で絵の価値を決めてしまう美術品オークションのシステムを警戒しようという姿勢を示した。しかし当時15億ウォンで落札された作品は、断裁された状態そのままで落札者が所有することになり、バンクシーの代理人を通して「愛はごみ箱の中に」というタイトルに変更された後に、より高い価値を持つことになる今の美術界の皮肉な現状を、世間に示してもいた。
このようにバンクシーのメッセージを込めたパフォーマンスは、予期せぬ場所でいきなり行われてきたのだが、都会のあちこちに作品を残すこと以外にも、紛争地域で反戦と平和のメッセージを込めたイメージのグラフィティを残したり、美術館に本人が制作した作品を無断で設置し、制度化された美術館権力に抵抗する姿勢を見せるなど、活動全般に制度批判的な姿勢と戦争など人間の行為の残酷さに対する告発が込められている。作品の制作過程は、永久に保存することが難しいため、バンクシーは個人のホームページに自身の作業過程が確認できる映像や資料を載せ、本人が原作者であることを明らかにしている。その制作方法により、ヴァンダリズムだという論争がつきもののバンクシーだが、彼のイメージに見られるパロディやパスティーシュ的な特性により、大衆の心により強烈に刻み込まれ、名声を博してきた。
火炎瓶の代わりに花を投げるデモ隊、路上で放尿する近衛兵、ロケットランチャーを構えたモナ・リザのように、現実において普遍的ではない、相反するイメージの組み合わせは、バンクシーが見ている現実と望んでいる価値を物語り、新たな意味を創り出す。現実を風刺するための彼の行動は、そこにとどまらず、テーマパーク形式のディズマランドのプロデュースで再び大きな話題となった。「陰鬱な(Dismal)」という名前がついた場所らしく、入場する時も、セキュリティスタッフの扮装をしている人たちと偽物のボディスキャナーの厳しい検査を受ける。入場すると、迎えるスタッフたちは、「私はバカだ」と書かれた黒い風船を持って憂鬱な歓迎の挨拶をして寄こし、廃墟と化したような城と歪んだ人魚姫の像は、最初から多くの人々を戸惑わせた。ひっくり返ったシンデレラのカボチャの馬車を露骨に撮影しているパパラッチ、回転木馬に座っている屠殺業者、水辺に漂う難民ボートなど、私たちが期待するテーマパークとは全く異なる、社会の暗い面にスポットを当てている。ディズマランドが人々によりショックを与えるポイントは、あえて目を向けてこなかった現実の暗鬱な姿に、ありのままに向き合わなければならないという事実であり、ここで生成される記憶は、再び新たな意味と行動を生み出す。
バンクシーがインタビューで、「私はこの民主主義の社会で、もはや誰もが信じていない自由、平和、正義のようなものを、匿名で語る程度の度胸は持っている」という言葉を残しているように、彼の行跡は、行動する芸術の集合体を見せてくれる。芸術のための芸術が尊重され、重要とされてきただけに、そのような多くの人たちのために、現実と結びついた芸術もまた持続され得るとすれば、芸術は私たちにとってより明るい時代を開いてくれるだろう。
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©️ The Art of Banksy
トリビア
パスティーシュ
18世紀初頭フランス文学に現れた、文体を模倣する方式から始まった用語で、ポストモダン時代以降美術作品に使用され、混成模倣の作品を指すようになった。原作の一部を借用し風刺するパロディとは異なり、ほぼ変形せず借用する特徴がある。
パスティーシュ
18世紀初頭フランス文学に現れた、文体を模倣する方式から始まった用語で、ポストモダン時代以降美術作品に使用され、混成模倣の作品を指すようになった。原作の一部を借用し風刺するパロディとは異なり、ほぼ変形せず借用する特徴がある。
文. イ・ジャンロ(美術評論家)
デザイン. チョン・ユリム
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