『Sound of Music pt.1』のタイトル曲「May the TENDERNESS be with you! (feat. KARINA of aespa)」の後半には、興味深いところが一つある。最後のサビに向かう途中、Choi Jung Hoonとかわいらしく歌声を合わせたKARINAが「愛の名で…」と口ずさむと、軽快な打鍵のピアノとキム・ドヒョンの演奏するエレキギターのソロが8節ずつ続いていく。この区間では、それぞれの楽器の音がABBAに似て軽やかで叙情的だという点と、ブライアン・メイに似て明確で古典的だという点で対比される。
もちろん、特徴的な音色を思わせる引用法は、JANNABIが過去の2作で熱心に実行したことでもある。振り返れば、2019年にリリースされた2ndアルバム『LEGEND』は1980~90年代の洗練された韓国歌謡を、2021年にリリースされた3rdアルバム『The Land of Fantasy』は1960~70年代の壮大な英米ロックを目指していた。両領域を束ねた上位には、百科事典としてのポップス、1世紀を優に超える期間の間、世界各地の数多くのリスナーを多様に魅了してきたあらゆる音響魔術の叢書がある。それの模範的な読者であるJANNABIが最も広く通用する2つの材料を選び出し、「May the TENDERNESS be with you!」の終盤に近づくところにきれいに施したわけだ。

『Sound of Music』は特定の音色で出来ている参照文献と引用句で溢れている。そのリストから前作と区分される特徴を見出すことができるが、まず参照および引用の範囲が20世紀下半期のポップス正伝全般へと広くなったという点が目立つ。『pt.1』を本格的に開く「FLASH」から(マキシマルな管弦楽編成中心の前作に比べて現代的であろう)1990年代式オルタナティブダンス風のビートとターンテーブルのスクラッチ、オーバードライブのかかったギターのトーンが突然加わり、「To the Rainbow, Juno!」という曲名にも使われたように、1980年代のポップサウンドにおいて大きな部分を占めるローランド社のJUNOシンセサイザーの音色をドラムマシンやエレキギターのトーンと合わせる。ジャック・ケルアックとニューヨーク・シティを青春と結びつけて呼名する『pt.2』に広げると、1950年代のボーカルグループとラウンジ音楽の甘く溌剌としたリズムが4thアルバム全般において流れていたりする。
『pt.1』の作業記で明らかにしたように、「ノスタルジア博物館、サウンドのコラージュ」といえるような『Sound of Music』の音響は、JANNABIが熱心に収集したビンテージ楽器と機材などを活用した実物サンプリングの現場といえる。そうして完成したアルバムは、彼らが忠実に愛好する物を丁寧に組み合わせ、ポップスの半世紀もの過去が一度に鳴り響く人工物でぎっしり埋め尽くされた博物館であり百科事典のように聴こえる。そのため、ここでまさに興味深いのは、時々刻々と、そしてあちこちから引っ張ってきた参照と引用の対象がどんなふうに一つの音響にまとまるのかにある。

ここで、「May the TENDERNESS be with you!」のソロ区間に戻ろう。同区間で各小節はただ流れていくのではなく、電子音と管弦楽器でひとかたまりになった音が押し寄せては消える形で移行する。例えるならば、「夏の夜の力自慢ショーのためのテレビ広告(「The Summer-Night Strongman TV Ad」の原題)」を流したというよりは、まるで夢でも見ているような、はたまた、そんな夢を走馬灯のごとく演出したような形だ。改めてそう聴くと、『Sound of Music』はJANNABIが収集した材料の分だけ、それらを一つの塊につなぎ合わせた接着剤のような音でも溢れている。
主要構成要素に確かに含まれずとも音響全般に積もるこの手の残余物こそが、JANNABIが耳で読みふけってきた古典をどんなふうに引っ張って使うのか、彼らが「ポップス」をどんなふうに自習書かつ参考書とし、どんなふうに勉強してきたのかを聴かせてくれる。彼らにとって1980~90年代の韓国歌謡とは、ただ噂として取り沙汰されてきただけの「伝説(『LEGEND』)」で、1960~70年代の英米ロックとは、訪問なんてできず、ただ想像しかできない「幻の国(『The Land of Fantasy』)」に近いように、JANNABIが直接取り寄せた昔の収集品を活用して具現化するポップスとは、彼らが魅了された数々の細部事項を人工的に組み合わせた夢のようなものだ。「たくさんの機材に囲まれて、ロマン主義時代に着ていそうな服装をしている」魅力的な時代錯誤をいくらでも信じてついていくことができ、それぞれちがう時間帯がいくらでも理想的な形で一つになれる、夢と伝説と幻の世界。

『pt.1』の「漫画的な宇宙」に対して「実写の地」に例えられる『pt.2』でもなお浮遊感が覚えられるのはそのためだ。その実、『Sound of Music』で最も意味深なところがここにある。アコースティックなフォーク系の編成と自伝的な日常からインスピレーションを受けた歌詞などを通じて「現実的な」主題を目指しているにもかかわらず、前作で動員した夢の中のようなコーラスと管弦楽が後景をさりげなく流れながら威力を発揮するからだ。『pt.2』を開く「Earth」は、直前までの白昼夢から目覚めるかのように「起きて」という最初の一言とあくびの音で始まるが、2番に進むと実在感を覚えさせるアンビエンスを消し、再び夢の世界に入る。トラック後半では「FLASH」で聴こえていた多様な音の収集品の連鎖がより一層走馬灯のように繰り返されたりする。それではこれを、いくら現実に足をつけようとしても地上でまで色濃く流れる夢と伝説と幻の音、そしていくら現在にとどまろうとしても絶えず力を発揮する過去の音として聴くこともできるのではないだろうか。
地球表面の地も結局、星の輝く宇宙に覆われているように、JANNABIの経験する現実には彼らの追求し、制作した夢と伝説と幻がにじんでいる。そこで時間は、Yang Hee Eunが青春の声を、LEE SUHYUNが母の声を歌ったように、線形的というよりは依然として入り乱れている。『pt.1』にはなかった副題が意味するように、『pt.2』の目指す現世の「人生」は今の経験よりも、むしろ青少年期の思い出と年老いたと仮定される回顧、それによっていつでも再び呼び起こせる私的な過去で溢れている。それもまた、JANNABIが前作で入念に制作した公的な過去ときれいに切り分けられない形、すなわち華麗な編成と装飾音と音響効果として入り混じっているのだ。

このような私的な記憶に次いで『Sound of Music pt.2』で目立つ参照と引用の対象は、過去のポップサウンドよりは現在のJANNABIそのものでもある。そもそもスキットが「自己ブランド化したJANNABI流の夏と幻に対するセルフ・パロディ」と説明されていたり、「一瀉千里大作戦」と呼ばれるほど生産的に新曲を作る中でも古い未発表曲が収録されたりしたところがそうだ。改めて『pt.1』まで広げて聴くと、前作の名残は「All the Boys and Girls, Pt.1 : Birdman」と同様に、歌詞の所々に参照文献と引用句の形をして隠れている。このような自己反映性は、JANNABIが20世紀下半期のポップスに対してそうしたように、まるで自分たちの歴史を記念するコラージュ博物館を同じやり方で建てたように聴こえる。ここでは、古いポップスという公的な過去と、それを思い出し、称えるJANNABIの私的な過去は互いに入り混じっている。
『pt.2』の作業記で4thアルバムを「終わりであり始まり」と述べたように、『Sound of Music』はJANNABIがこれまで作ってきたすべての時間を総合決算する現場だ。復刻の対象がわりと明確だった前作とはちがい、今回のアルバムではこれまでのJANNABIを構成した各種音響と時代が均質的ではない形で混在することから、彼らの経歴においてもずいぶんおもしろい位置づけになる。長い間集めてきたたくさんの過去の欠片の真ん中で、彼らは自分たちが、夢の世界を彩った音楽の音、「Sound of Music」にいまだに魅了されていると話す。もしJANNABIがこれほど愛好するポップ音楽と、それで出来ている自分自身をただ「愛の名で(「May the TENDERNESS be with you!」の原題)」具体化することに成功したのならば、宇宙のような夢から現実の地に舞い降りようとする今では、その旺盛な収集欲がいつ、どこへ、そしてどんなふうに向かうのだろうか。

だからこそ、最後に「May the TENDERNESS be with you!」に戻ることができる。ソロ区間が終わった後の最後のサビの間に、盛り上がる1950年代のポップス風のリズムと微かに響くコーラスに乗せられ、「この時代を覚えて! そう長くは続かないはず!」という語句が挿入される。甘い愛の歌に招かれざる客のように割り込んだこのくだりは、「この時代は僕にはまだめまいがする」という歌詞も含めると、かなり恐ろしくも感じられる。めまいがする現実で錨を上げさせるこの「ロマンチックな」時代は、良いポップスが1世紀を超えて提供してきた魅惑的な夢の世界で、果たしてどれだけ続くことができるだろうか。もはや地上に立って遥か遠くの宇宙を眺めながら、今のJANNABIはこれを数えているのかもしれない。
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